ニュースレター(2月24日)1253.65ドル:米国の早期利上げ観測後退とトランプ大統領の議会演説前に政策への期待後退で4週連続高
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1253.65ドルと前週同価格から0.9%上昇し、週間で4週連続高となっています。
週明け月曜日は、米国市場が大統領の日の祝日で休場であることから、金相場は緩やかに上げながらも、トロイオンス6ドル以内の狭いレンジでの取引となりました。
火曜日金相場は、前日からの下げ基調を受け継ぎ、株が上げドルが強含む中、ロンドン午前中にトロイオンスあたり1230ドルを割ったものの、その後反発してその下げ幅を取り戻すこととなりました。
同日は、ロンドン午後にハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の「今年3回の利上げは適切になる」というコメントが伝えられていましたが、ロンドン時間昼過ぎに発表された米国製造業PMIが予想と前回を下回ったこと、また米国の実質平均賃金が昨年は全く上昇していなかったことも伝わったこと等からも、金相場が押し戻されることとなりました。
水曜日ドル建て金相場はトロイオンスあたり1240ドルへ上昇した後に、FOMC議事録の発表を待つ中、同日午後に発表された米国中古住宅販売件数が予想を上回り、議事録でのタカ派的コメントへの警戒感からも下落したものの、議事録の発表で予想以上のタカ派的コメントはなく、その下げ幅を取り戻すこととなりました。
FOMC議事録では、「(インフレが予想通りに推移すれば)比較的すぐの利上げが適切」としたものの、投票権を持つメンバーの多くは「インフレ圧力が顕著に高まるというシナリオが現実化するリスクは低いものにとどまる」と予想したことや、FRBのバランスシートをめぐる計画は進めず、今後の会合で対応するとしたことからも、予想よりもタカ派的内容でないと判断した模様です。
なお同日は、ユーロ建て金相場がトランプ氏が大統領に選出され市場が混乱した11月9日以来の高い水準へ上昇することとなりました。これは、フランスの大統領候補の右翼政党のマリーヌ・ル・ペン党首の支持率が上昇していることからの懸念で、ドイツ国債とフランス国債の利回りの差が広がるなど、ユーロが対ドル大きく下げていたことからでした。
しかし、ロンドン時間午後に大統領候補のバイロウ氏が同じく大統領候補のマカロン氏を支持したことが伝えられ、ユーロが買われてユーロ建て金相場は下落することとなりました。
木曜日金相場は、トロイオンスあたり1250ドルを超えるなど、米国株式が史上最高値を10日連続で付ける中、昨年11月11日以来の高水準となりました。
これは、前夜発表のFOMC議事録が予想よりもタカ派的でなかったことから、3月利上げ観測が後退しドルが弱含んだことに加え、ムニューチン財務長官が、「低金利は長期間続く可能性がある」、「ドル高には一定の問題がある」と、ウォール・ストリート・ジャーナルやCNBCなどで発言したことが要因となりました。
本日金曜日は、トランプ政権発足以来の高値のトロイオンスあたり1260ドルを付ける等上昇することとなりました。
これは、来週火曜日に行われるトランプ大統領の議会での演説を前に、トランプ氏が約束している近々発表される「驚くべき税制改革」が、先延ばしになる可能性など疑問が高まる中、本日は株式市場が下げており、トランプ大統領の政策への期待から上昇していた株式市場の勢いが無くなり、昨日のムニューチン財務長官のコメントからドルも下げる中、リスクヘッジの意味でも金が買われている模様です。
その他の市場のニュース
- 昨年12月にイスラム金融機関会計監査機構とワールド・ゴールド・カウンシルがイスラム法による金取引基準の導入を発表しましたが、今週は米運用会社が、金のETFがイスラム法(シャリーア)に適合しているとの認定を受けたと発表したとのこと。
- 先週末発表のコメックス金先物・オプションの先週火曜日の資金運用業者のネットロングポジションは3週間ぶりに減少し、過去10年間の平均の56%となっていたこと。
- それに対して先週火曜日のコメックス銀先物・オプションのネットロングポジションは、7週連続で増加し、昨年9月27日以来の高い水準で、過去10年間平均の3倍となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
近い将来に弊社サイトでご覧いただけるブリオンボールトの新たなビデオが出来上がりました。ここでは、弊社のビジネスモデルを弊社設立者で会長のポール・タスティンとCEOのロバート・グリンが説明し、弊社が利用する保管場所ではどの様に金地金が保管されているかもご覧いただけます。
もし下記のビデオで日本語字幕が自動的に出ない場合は、ビデオの右下の設定アイコンをクリックいただき、字幕を日本語と選択ください。
https://www.youtube.com/watch?v=uHVCWo_DnKE&feature=youtu.be
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では議会の補欠選挙が2箇所で行われ、本日のその結果が大きく伝えられています。
それは、労働党が1935年以来維持してきたイングランド北西部のコープランドで、労働党が保守党に敗北したことからですが、また、政権を持っている政党が補欠選挙で勝利したのは35年ぶりとのこと。
この補欠選挙では、メイ首相も応援に現地入りするなど異例の力の入れようも伝えられていました。そのため、本日再びメイ首相は現地入りし、選出された保守党候補と共にインタビューを受けている写真とコメント「この勝利から見られることは、この政府がこの国の全ての人々と全ての地域ために働いているということです。」が一面を飾っています。
これは、BREXITを選択した国民選挙後に首相となったメイ首相の最初の就任演説の「一部の特権階級ではなく、国民のために働く」に呼応するコメントです。
これに対し、今回敗北した労働党のコービン党首は、イングランド中部ストークオントレント・セントラルでの補選では英国独立党(UKIP)に勝利し議席は守ったものの、党内から党首としての責任問題など批判が出るのは必至で、引続き難しい党運営を要求されることとなりそうです。