ニュースレター(2月17日)1241.95ドル 利上げ観測の広がりと株高の中、トランプリスク等で金は上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1241.95ドルと、前週同価格から1.1%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、先週のトランプ大統領の「驚異的」な税制改革案を2,3週間以内に発表というコメントで株式市場が上昇した基調を受け継ぎ、ドルインデックスも上昇する中、トロイオンスあたり1220ドルを割る水準まで下げた後に、1224ドルまで戻すこととなりました。
また、トランプ大統領と安倍首相との会談が「蜜月」とメディアが描写するように問題なく終わり、北朝鮮の弾道ミサイル発射のニュースも、トランプ大統領の「日本を100%支える」で、株式市場にはプラスに作用することとなりました。そして、市場は既に翌日からのイエレンFRB議長の議会証言に注目を移すこととなりました。
翌火曜日金相場は、ロンドン午前中に前日の下げを戻したものの、午後再び大きく下げて、ニューヨーク時間終了時には1228ドルあたりを推移することとなりました。
同日は、ロンドン時間昼過ぎに発表された米国生産者物価指数が予想を上回るものであったことと、イエレンFRB議長の議会証言が経済の先行きに楽観的であったことから株価が史上最高値を付け、ドルインデックスも上昇し、「引き締め待ち過ぎるのは賢明ではない」 等と金利引き上げを示唆するものであったことから金相場は下げることとなりました。
水曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎに発表された米消費者物価指数が2013年2月以来の高いものとなったことから、一旦は下げましたが、その後ドルが弱含み、その下げを取り戻し更に上昇することとなりました。
なお、イエレンFRB議長の下院での議会証言は同日行われ、「バランスシート、ゆっくりと縮小させる決意」、「バランスシートの縮小開始は経済次第」 と今年の縮小は無いと市場は読んだ模様でした。そのようなことから、株価も上昇する中で、トランプ大統領の税制改革のコメントで広げていた今週の下げ幅を取り戻すこととなりました。
木曜日金相場は、株式市場が史上最高値を更新する前日までの勢いを多少失う中、1週間ぶりに一時トロイオンスあたり1240ドルを越えて上昇した後に1238ドルへと多少戻して終えることになりました。
同日は米国の主要経済指標の住宅着工件数は予想と前回を上回り、新規失業保険申請件数は予想を下回り、フィラデルフィア連銀製造業指数も大幅に前回と予想を上回り、フィッシャーFRB副議長のブルームバーグとのインタビューでは「利上げは2回か3回かと言及するつもりはないが、ほぼ我々が思っていたものと整合している」と、ほぼイエレンFRB議長の議会証言に近い内容となっていました。
しかし、翌月曜日が米国の大統領の日で祝日であることからも、トランプ大統領の動向に敏感なリスク資産においては、ポジション整理が進んだ模様です。
本日金曜日は、欧米株式市場が軟調な展開の中、金相場は先週の高値の1240ドルの水準へと上昇しています。
これは、やはり来週月曜日が祝日であることからリスク資産のポジション整理が進んでいるのと、昨日のトランプ大統領の記者会見はトランプリスクを再認識させるものでもあり、また、フランスの大統領選においても
なお、本日はポンド建て金相場は、本日発表された英国小売売上高が予想と前回を大きく下回ったことからポンドが弱含み一月ぶりにトロイオンスあたり1000ポンドを超えることとなりました。
その他の市場のニュース
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先週末発表された先週火曜日のコメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週に続き2週連続増加し、その他の業者を含む大口投機玉のネットポジションに関しては、2ヶ月ぶりの高さに増加していたこと。 -
金のETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアは1月26日から残高を減らさず、44.5トン増量し843.5トンと、昨年12月15日の水準まで戻してていること。 -
米証券取引委員会へ提出されたF13によると、SPDRゴールドシェアの所有残高で8位の米ブラックロックが昨年第4四半期にその20%を売却し、みずほグループは1億ドルほどの持ち高を全て売却していたこと。
ブリオンボールトニュース
今週は、CNBCのMoneycontrolの番組でブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが貴金属相場の先行きについてインタビューを受けています。
ここでエィドリアンは、実質金利の動向が貴金属価格に影響を与えるとし、インフレの上昇は、インフレヘッジである金と銀の価格のサポートになるとし、金相場がFRBの利上げとインフレ上昇の間に挟まれているのに対し、銀相場の力強さに言及し、トランプ大統領の政策次第ではトロイオンスあたり20ドル半ばを予想しているアナリストもいるとしています。
また、アカデミー賞を今月26日に控えて、弊社最新インフォグラフィックスでは、銀幕の中の金(ゴールド)として、名作の中の金を取り上げ、金の情報を日本語で網羅しているゴールドニュースサイトでも取り上げられてます。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2月13日~17日) -
インフォグラフィックス:銀幕の中の金(ゴールド)
ロンドン便り
今週も英国のメディアはトランプ大統領の動向、そして昨夜の記者会見のことを大きく取り上げていますが、本日はトニー・ブレア元英首相が、英国のEU離脱に反対して立ち上がるべきと講演したこともトップニュースで伝えられています。
ブレア元首相は、英国のEU離脱の是非を問う国民投票の選挙戦でも、残留派として活発に発言をしていました。そして、本日はロンドンの金融街での講演で、「離脱に投票した人々は、Brexitの本来の意味を理解していなかった」とし、「崖から飛び降りるような慌てた動きを止めるべき」と呼びかけていました。
このコメントへは、保守党内の離脱派であったイアン・ダンカン・スミス元党首は「傲慢で、非民主主義的だ」と反論し、ボリス・ジョンソン外務大臣も「トニー・ブレアが恩着せがましい(反BREXIT)キャンペーンを行っているテレビを人々が消してしまうことを望む」と反発しています。
トニー・ブレア氏は、1997年から2007年まで首相を務めましたが、首相在任中に参戦したイラク戦争には参戦すべきではなかったという世論が強まり、また参戦する際に、ブレア氏は「イラクは45分間で大量破壊兵器を発射できる」として参戦を正当化したものの、イラクの大量破壊兵器は結局見つからず、これは参戦するために情報操作が行われたという疑念も持ち上がり公聴会で証人喚問されていることなどからも、ブレア氏の一般の人々からの評価は大きく下がっています。
そこで、英国のEU離脱を支持している英国独立党のファラージ元党首は、今回のコメントも「彼は過去の人」と言い切って重要視していないようです。
来月には、英国はEUへ離脱の通告する事になりますが、その前に残留派の重鎮のブレア氏がもう一度切り返しを狙ったのかもしれませんが、ニュースは取り上げたものの、国民投票の結果を受けて残留派も含めて世論は既にBREXITへと向かっており、この流れを止めることにはならないようです。