ニュースレター(12月2日)1173.50ドル 好調な経済指標とOPEC減産合意で長期金利が上昇する中金相場は10ヶ月ぶりの水準へ下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1173.50ドルと、前週同価格から1.2%下げています。
週明け月曜日金相場は、アジア時間にドルが弱含む中トロイオンスあたり1197ドルまで上昇しましたが、同日経済協力開発機構(OECD)が、半期に1度の世界経済見通しで、次期トランプ政権の減税と公共投資が米経済を押し上げ、世界経済にも弾みがつくとして成長率予想を引き上げたことが伝えられると、ドルが強含み押し戻されることとなりました。
翌火曜日金相場は、前日の上昇分を緩やかに失い、前週金曜日の今年2月9日の水準まで下落していましたがその後緩やかに戻すこととなりました。
同日は前日多少弱含んだドルが再び上昇し、長期金利も上昇したことから金は押し戻されていました。しかし、その後ドルが多少ながらも弱含んだことからも、金を押し上げる事となりました。
なお、同日ロンドン時間昼過ぎに発表された米国第3四半期GDPは市場予想を上回り2014年第3四半期以来の大幅な伸びとなり、米消費者信頼感指数も予想を上回っていましたが、相場への影響は限定的となりました。これは、今週は翌日のOPEC、金曜日の米雇用統計、週末のイタリアの憲法改正案の是非を問う国民選挙とオーストリアの大統領選と大きなイベントが予定されていることからも、方向性の無いレンジ内の取引となった模様です。
水曜日金相場は前週金曜日の43週間ぶり(2月9日以来)の安値を下回り、トロイオンスあたり1173ドルまで下落しました。
これは、同日発表の米ADP全国雇用者数が予想を上回り、同日行われているOPEC会合で減産合意が伝えられたことで米国長期金利が上昇し、株価も上げる中金は押し下げられたことからです。
前日まではOPECでは減産合意に至らないという観測が広まっていたことからNY原油は下げていましたが、同日は前日比8.7%上昇し、49.20ドル台まで戻すこととなりました。
木曜日金相場は、米国債10年物の利回りが2.40%を超える2015年7月以来の高水準へと上昇したことからも、前日の下げ幅を広げ、ロンドン時間午後に発表された米ISM製造業景況指数が予想を上回ったことで一時は1662ドルを付けるなど、10ヶ月ぶりの低い水準で推移することとなりました。
なお、前日予想を翻しOPECが2008年以来初の減産合意に至り、しかもOPEC外のロシアも含めての合意は15年ぶりでもあり、同日もブレント原油は16ヶ月ぶりの高水準の54ドルを越えて上昇することとなりました。
本日金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が17.8万件と予想の17.5万件と前回の16.1万件を上回りました。なお、前回数値は14.2万人へと下方修正されています。また失業率は、4.6%と前回と予想の4.9%を下回りました。この失業率は、2007年9月以来の低い水準となります。
この発表を受けて金相場は狭いレンジで神経質な動きをしながら一時下落しましたが、その後ロンドン時間午後3時過ぎには下げ幅を取り戻しています。
なお、今週末日曜日にはイタリアの憲法改正案の是非を問う国民選挙とオーストリアの大統領選が予定されています。レンツィ政権による憲法改正が否定された場合、イタリアの国債価格にも影響を与え、2010年から2012年のユーロ危機が再燃するリスクがあり、オーストリアの大統領選で、反難民・反EUを掲げた極右の候補者が大統領に選出された場合もまた、今後のEUのあり方への懸念などからも市場への影響が出る可能性があります。
この結果は月曜日に発表されますので、通常通り弊社フェイスブックとツィッターでその詳細と市場の反応をお伝えいたします。
その他の市場のニュース
- 今週月曜日に中国の上海黄金取引所での金の取引価格が世界指標から24ドルと過去3年で最も高くなり、同日ロイター通信がこれは金の輸入許可を中国政府が制限した可能性があるためと伝えていたこと。
- インド準備銀行が、先週末に予想外の現金準備率引き上げを行なったことが伝えられたこと。これは政府の高額紙幣廃止後に膨らんだ銀行の手元資金を吸収する狙いとのことでしたが、そのために月曜日インドの銀行株に売りがでて、インドの株式市場は下落したこと。
- 水曜日にスペインの主要メディアがトップニュースとして、脱税対策として、スペイン政府が現金での取引額の上限を2500ユーロから1000ユーロとすることを今週金曜日に承認すると伝えていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、昨日木曜日も下げ、15取引日連続で減少もしくは変化無く、BREXIT以前の今年6月1日の水準まで下げ、過去3年のピークの7月からは112トンの減少となっていたこと。
- コメックスの金先物・オプションのデータが今週月曜日に発表され、先週火曜日に資金運用業者のネットロングポジションは更に8.2%減少し、今年3月1日の水準まで下げていたこと。
ブリオンボールトニュース
ブルームバーグの「ファンドが売却を進める中、金が10ヶ月来の低水準へ下落」という記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています
ここでエィドリアンは、「金価格と金ETFの残高は関連性が高い。そのため、大きなファンドが売却を進めているのは驚くべきことではない。市場は米国の債券利回りやドル高から多くの下落圧力を受けている。」とコメントしていました。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国からのニュースは、本日結果が発表されたロンドン郊外の高級住宅地であるリッチモンドの補欠選挙についてお届けしましょう。
この補欠選挙は、この地区の議員であった保守党議員のザック・ゴールドスミスがヒースロー空港の拡張を政府が承認したことに抗議して、無所属候補として立候補し、ヒースロー空港の拡張を認めるかについてに争点を絞り選挙を戦う予定でした。
ちなみにゴールドスミス氏がヒースロー空港の拡張に反対していたのは、選挙区のリッチモンドはヒースロー空港が拡張された際に飛行機の騒音などの被害が高まることからも、この地区の有権者はヒースロー空港の拡張には反対をしているためでした。
しかし蓋を開けてみると、英国の野党自由党が争点をBREXIT(英国のEU離脱)として立候補者を立てたことから、ヒースロー空港拡張とは異なる争点の選挙となっていたのでした。
リッチモンドは、ロンドン同様に今年のEU離脱を問う国民投票では残留派が主流でしたが、ゴールドスミス氏は離脱派として知られています。そこで、前回の総選挙でゴールドスミスに投票した残留派の票を奪いたい自民党のティム・ファロン党首は先月26日、リッチモンドパークで議席獲得を狙うと明言していましたが、本日見事にその思惑は成功したのでした。
この補欠選挙を前に、ティム・ファロン自民党党首は、統一市場へのアクセスも捨てる「ハードブレグジット」に傾くテリーザ・メイ首相に「有権者の意思を示す」絶好の機会だと語っていました。
今週は、元英国首相で残留派として有名なジョン・メイジャー氏が、EU離脱を問う国民投票を再度行う十分な理由はあると述べたこと、そしてやはり残留派の元英国首相のトニー・ブレア氏が、英国民が心変わりをした場合英国のEUからの離脱は覆すことができると述べたことが伝えられていました。
今回の選挙結果も含め、英国内の意見が未だ割れている英国のEU離脱(BREXIT)までの道のりはかなり厳しいようです。