ニュースレター(12月11日)1072.50ドル 原油安で下げ、ドルポジションの巻き戻しで上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1072.50ドルと、前週同価格から0.6%の下げとなっています。
週明け月曜日は、原油価格が急落する中、金相場も金曜日の上昇分を緩やかに失うこととなりました。
同日WTI原油価格は、年初来の安値の37.64ドルで終了しました。これは、前週行われたOPEC(石油輸出国機構)総会で、生産目標を設定できなかった事がきっかけとなった模様です。
翌火曜日は、同日発表の中国の貿易収支が前回や予想を下回り、英資源大手のアングロ・アメリカンが、配当見送り、従業員8万5000の削減と大幅な経営再建計画を発表 したことでその株価が過去最安値を付け、他の資源会社の株も下げる中、欧米株式市場は反落し、コモディティも全般下げていましたが、金はトロイオンスあた り1075ドルの水準を保つこととなりました。
水曜日は、原油価格、株価、ドルの動きで金相場は動くこととなりました。
大きな動きはロンドン時間昼過ぎにドルが対主要通貨弱まったことで、ドル建て金価格が上昇し、その後売りに押されて戻すこととなりました。
原油価格は、月曜日の急落後多少反発をしながら推移していましたが、同日発表のEIA米在庫統計が減少していたことから上昇したものの、その後再び下げることとなりました。そのため、株価は全般下げることとなりました。また、ドルが対主要通貨弱めたのは、来週のFOMCでの利上げを読んで積み上がっているドル買ポジションの調整もあり、巻き戻しが起きたことからです。
木曜日は既に市場の注目は来週のFOMCへ向く中、狭いレンジでの取引となりました。
なお、金を含むコモディティ全般に影響を与えている原油価格は、同日OPECの産出量が過去6年間で記録的な高水準であったことが発表され、過去7年間の最低値へと下げることとなりました。
そして、同日南アフリカ共和国のネネ財務相が、ズマ大統領に解任されたことからランド安が進み、南アフリカ共和国の金融市場はトリプル安となっていました。
本日金曜日、金相場はロンドン時間午前中は下げ基調でしたが、LBMA金価格が定まる午後3時前に大きく上昇することとなりました。これは、金曜日でもありポジション整理が進んだこと、そしてこの時間帯にドル安が進んだことも要因となりました。
そのため、ユーロ建て金価格は年初からの最低値のトロイオンスあたり970ユーロを一時付けることとなりました。
また、本日原油価格が2%下げ、過去7年間で最低の水準へとなり、天然ガスも2.8%下げ、ベースメタルも下げたことから、FTSE100は一時2.5%下げています。
ちなみに、銀価格は一時トロイオンス13.79ドルと、2009年8月の水準まで下げることとなりました。
その他の市場のニュース
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モーガン・スタンレーがベースメタル取引から撤退すると、関係者筋の話としてロイターが伝えたこと。なお、貴金属取引は継続とのこと。 -
インドのゴールド業界団体 (IBJA)が、来年金現物市場をローンチすると伝えられたこと。 -
中国が今年末までにローンチする予定であった人民元建て金のベンチマークが、4月ローンチと延期されたと伝えられたこと。 -
中国本土企業(南華期貨グループ)が初めて、東京商品取引所の会員となったことが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
昨日金相場が上昇したことを解説する「ドルが下げたことをきっかけとして金相場は上昇」というMarket Watchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任のエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここで、エィドリアンは「来週のFOMCに賭けをしているコメックスの投機家、そして、来週どのような決定になろうと、どのように他の投機家が反応するかに金相場は揺すぶらされている。」とコメントしています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週の英国では、2016年の米国大統領選で共和党から立候補を目指す不動産王のドナルド・トランプ氏の「米国当局が問題を把握するまでの間、イスラム教徒の入国を禁止すべき」と提言したことや、それに関わる英国内での反応について、トップニュースで伝えています。
この発言は、米国カリフォルニア州サンバーナディーノ郡で起きたテロ事件を受けて出されたものですが、アメリカ国内はもちろんのこと、英国を含む多くの国々でも非難されています。そして英国では、トランプ氏の英国入国を禁止するよう英議会に求める請願が出され、今朝の段階で50万人を超える人々が署名をしたとのことです。そして、スコットランドの一つの大学では、既にトランプ氏に与えていた名誉学位を取り消したとのことです。
これらの反応等を受けて、トランプ氏は「ロンドンの一部の地域は、警官が踏み入れるのを恐れるほど過激化している。」と英国主要日刊紙ディリーテレブラフへのコメントで述べ、このように本音で話す自分に対し「英国の政治家は感謝すべきだ」と発言したことも伝えられています。
当然、キャメロン英国首相はこの発言を「分裂を助長している」「間違っている」と非難し、ボリス・ジョンソンロンドン市長も「気を違えているとしか思えない。これは、テトリストがまさに我々に求める仲間内での争いを促すものだ。」と答えています。
トランプ氏は、このような極端なコメントを発することで、注目を浴び、現政権の対外政策や金融政策に不満を持つ米国の中流階級層を取り込んでいるようですが、危険なゲームを行なっているとしか思えません。
そのような中、先月パリ同時テロを経験したフランスで先週末に行われた地域圏議会選挙では、トランプ氏同様に「難民の受入停止」という公約を掲げていた極右政党の国民戦線が躍進しています。
個人的にはトランプ氏の先の発言には全く同意しませんが、民主主義国家の中で培ってきた、思想、言論、表現の自由を守ることも大切であるとも考えます。そして英国を含む欧米の国々が、テロへの懸念や恐怖に感情的に動かされること無く、冷静に今後のあり方を議論する事ができる成熟した社会であると信じたいです。