ニュースレター(11月27日)1057.40ドル トルコのロシア機撃墜で上げた金相場は、感謝祭の薄商いの中、中国株急落で過去6年間の最低値へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1057.40ドルと、前週同価格から2.2%下げています。この水準は、2010年1月以来の低水準となります。
週明け月曜日金相場は、アジア時間に先物市場で大きな売り注文があり、ミニ・フラッシュ・クラッシュを起こしたことが伝えられる中、前週の過去5年半で最低の水準近くまで下げ、その後トロイオンスあたり1070ドル前後を推移することとなりました。
銀相場は、アジア時間に2%下げのトロイオンスあたり14ドルを割り、過去6年で最も低い水準まで下げた後に反発して下げ幅をほぼ戻すこととなりました。
翌火曜日は、、ロンドン時間早朝に伝えられた、トルコ軍によるロシア戦闘機撃墜を受け、株式市場が下げる中、トロイオンスあたり10ドルほど上昇することとなりました。しかし、ロンドン時間昼過ぎに発表された米第3四半期GDPが速報値から上方修正されたことで、その上げ幅を多少削ることとなりました。
水曜日は、アジア時間に前日のトルコ軍によるロシア戦闘機撃墜のニュースによるリスクオフの傾向も薄まり、同日発表の米国の経済指標が良好であったことからも、ドルが強含み、欧米株価が上げる中、前日の上昇分を失うこととなりました。
この米国経済指標とは、耐久財受注で、予想の1.5%を遥かに上回る3.0%となり、新規失業保険申請件数も26万件と予想の27万件を下回ることとなりました。
なお、翌日木曜日は米国の感謝祭であることから、同日のロンドン貴金属市場協会のLBMA金価格のオークションにおける取引量は、第3四半期の平均の半分ほどと、市場は既に薄商いとなっていました。
木曜日は、米国が祝日であることからも、金相場は1071ドルから1074ドルと狭いレンジでの取引となりました。
同日のLBMA金価格のオークションにおける取引量は、前日からさらに減少し、第3四半期の平均量の5分の1となっていました。
本日金曜日は、金相場が一時トロイオンス当たり1053ドルと2010年1月以来の低い水準まで下げることとなりました。
これは、10月の中国工業利益の減少や中国証券大手3社が当局から調査を受けたことが伝えられ、上海総合指数が5.5%下げるなど、中国株式市場が今年夏以来の急落を見せたことがきっかけとなり、ドル高とコモディティ安もすすみ、投資センチメントが悪化していることが要因の模様です。
その他の市場のニュース
- 週末発表されたコメックスの金先物・オプションの大口投機玉のネットロングポジション(買い越し残高)は、100トン以下と急激に減少していたこと。これは、過去20年間の平均の35%。それに対し、銀のネットロングポジションは下げていたものの、過去20年間の平均の80%の水準。
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前週末に発表されたレポートで、ブルームバーグコモディティインデックスは、中国の経済成長見通しが1990年以来最も緩やかなものと伝えられる 中、今年 7月~9月の第3四半期に、2008年の金融危機以来最大のの四半期の下げである-14.5%となったことが明らかとなったこと。
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また、香港から中国への金の輸入量が、10月に72トンと先月の過去10か月で最も高い水準であった97トンから下げたことが伝えられたこと。しか し、今年10月末までの香港からの総輸入量は、すでに654トンと、前年同時期の99%ほどとなっているとのこと。ちなみに、スイスからの輸入は10月に29トンと高い水準で、すでに今年10月末までで217トンとなっているとのこと。
ブリオンボールトニュース
先週末に発売された日経マネー最新号に、弊社の日本における正規独占媒介代理店ブリオンジャパンが、先月17日に行われた「日経マネー30周年記念特別シンポジウム: 乱高下するマーケットにおける資産運用術 貯蓄から投資へ」で行った講演についてのレポートが掲載されています。
ここでは、ブリオンジャパンのマーケティング担当上級副社長の平井政光氏が、ブリオンボールトのリサーチを基に、「1990年から2015年までの25年 間に、株式と債券が6対4の割合のポートフォリオに金現物を加えることで、収益率が高まる」と説明したことが、ブリオンボールトのリサーチのデータと共に 紹介されています。
この記事の見出しは、こちらでご覧いただけます。また、弊社の「最近のメディアから」では、この記事のまとめがご覧いただけます。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週水曜日に、英国では、政府の財政運営の大枠を示す「秋の演説」が、ジョージ・オズボーン財務大臣によっておこなわれ、主要紙がトップで伝えています。
財政再建を掲げて、財政緊縮を推し進めてきている保守党政府が導入しようとしていた税額控除制度の大幅削減は、国民の反発が激しいことから、そして、経済の見通しが以前よりも改善したことからも、一転維持する考えを明らかにしました。
当然このニュースは注目されましたが、野党の財務大臣のジョン・マクドネル氏が、ジョージ・オズボーン財務大臣を批判する際に、毛沢東語録の本を取り出し、読み上げたこともかなり大きく伝えられています。
ジョン・マクドネル影の財務大臣は、英国政府が中国との関係を深めることに力を注いでいることからも、毛沢東語録を持ってきたとし、「経済について学ぶためには、経済に熟知している人からすべきだ。それが誰であっても、師として崇め、注意深く尊敬の念を持って学ぶべきだ。しかし、知らないことを知ったように欺くべきではない。」と、この語録から読み上げ、その本をオズボーン財務大臣へと投げ渡したのでした。
ジョン・マクドネル氏は、現労働党党首のジェレミー・コービン氏の盟友で、労組の強力な支持を得ている左派の政治家です。そのため、これまで中道派が主流だった労働党の要職に就いたことがなく、その力量が疑問視されてきていましたが、今回のこの行動は、ほぼ全ての主要メディアが、批判的に伝えています。
その後のインタビューで、マクドネル氏は、先の行為は冗談であり、こうすることで、政府が国の資産を売却していることにスポットライトをあてるためであったとも述べています。
議論好きで、政治家の議論の力も重視する英国人にとって、ジョン・マクドネル氏の議会での冗談は、時と場所に適当なものではなかったとの判断であったようです。
政府の社会保障への予算のカットが、社会的弱者にとってどのような影響があるか、オズボーン財務相がこれまでの進めようとしていた政策を方向転換したことなどを追及できた場所であったはずでしたが、この思いもかけない行為にばかり注目が行ってしまい、残念な限りです。
次期首相の座を狙うオズボーン財務相の支持率は、税額控除制度の大幅削減などの痛みが伴う政策案で、かなり下げていたところですが、マクドネル氏が墓穴を掘ったことで、今回は救われたようです。
野党の異色な政治家達によるドラマのような英国政治は、これからも続いていきそうです。