ニュースレター(11月13日)1081.50ドル 利上げ観測が広がる中、過去6年間で最低水準をタッチ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1081.50ドルと、前週同価格から0.7%下落しています。
週明け月曜日は、狭いレンジでの取引となったものの、前週の下げの反発から前週終値を超えて金相場は少ないながらも上昇することとなりました。
翌火曜日は、金相場は、中国の消費者物価指数が予想を下回ったことで、中国経済への懸念が高まる中、米国の利上げが12月に行われるという観測も引き続き広まり、ドル高が進み、金相場は前日比下げることとなりました。
水曜日は、中国の鉱工業生産が、前年比5.6%増と前回と予想を下回ったことから、中国経済への懸念、そしてコモディティ需要への懸念が広がり、コモディティ全般が下げる中、金も下げることとなりました。
木曜日は、ドル建てで一時的に過去6年で最も低い水準のトロイオンスあたり1074ドルへと下げることとなりました。これは、同日セントルイス連銀ブラード総裁の「金融政策を正常に近づけるのが賢明」というコメントが伝えられる中、欧州中銀ドラギ総裁の「ユーロ圏の経済 回復への外部リスクが明白だ」というコメントも伝えられ、FRBの12月の利上げが現実的との観測が広がる中で、ECBの近い将来の利下げ観測から、ユー ロが下げドルが強含んだことが要因でもあったようです。
本日金曜日は、米国小売売上高と生産者物価指数が、予想と前回を下回ったものの、ロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数は、今年6月以来の高い水準となり、昨日の連銀総裁数人の12月利上げをサポートするコメントなどからも、12月利上げ観測は広がっており、金は押し下げられることとなりました。
その他の市場のニュース
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中国の金準備が人民銀行のサイト上で公表されているデータによると10月に14トン増加し、1722.5トンとなったことがロイターで伝えられていたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高が木曜日にも残高を減らし662トンを割り、過去7年間で最も低い水準へと下げたこと。これにより、3週間で11回下げ、昨年11月以来の長期間の残高の減少となっていること。 -
ロシアの銀行としては初めて、VTB Bankが上海黄金交易所(SGE)のメンバーとして、金の取引を行うことになったと伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
ワールド・ゴールド・カウンシルが発表した、第3四半期の金需給レポートが水曜日に発表され、ブリオンボールトがまとめた記事がダウ・ジョーンズで配信されたことから、多くのメディアでリサーチ主任のエィドリアン・アッシュのコメントと共に伝えられることとなりました。
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オーストラリアン紙「第3四半期に金需要が増加」 -
Fidelity「第3四半期に金需要が8%増」 -
Market Watch「第3四半期に金需要が8%上昇」
これらの記事で、エィドリアンは「第3四半期に価格が下げたことから需要が増加したことからも、インドと中国の需要は価格に敏感であることを再認識させた。」とコメントしています。
なお、最新需給レポートのまとめは、「金相場の下げが個人の金投資を急増させる」でご覧いただけます。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
本日英国では、「ジハーディ・ジョン」と呼ばれている、「イスラム国」が、日本のジャーナリストの後藤健二さんや、英国のエィドワーカーや英、米のジャーナリストを公開処刑した際に関わっていた人物を、米軍の無人機(ドローン)で殺害したことが、トップニュースで伝えられています。
この人物が殺害されたかは、「かなり高い確率」であると、米軍関係者は述べているとのこと。
「ジハーディ・ジョン」とは、クウェート生まれで1994年から英国に移住した27歳のモハメド・エンワジという人物であることが明らかになっていますが、中流家庭で育ち、ロンドン市内の中学校に通い、当時は勤勉でおとなしい生徒であったものの、長男としての責任感も持っていたと当時の校長先生のコメントがBBCで伝えられています。
その後、希望の大学へ進み卒業後、2009年8月にタンザニア旅行にでかけたものの、入国を拒否され、拷問などの不当な扱いをされ、その後もオランダと英国の諜報機関から尋問を受けたことなどが、「イスラム国」へと向かわせることになったと、対テロ戦争に反対する民間団体の「Cage」はコメントしているとのこと。
ただし、タンザニア警察の話では、入国拒否は泥酔し暴れたからであり、英国首相官邸も諜報機関による工作があったという「示唆は許せるものではない」、また英国諜報機関MI5は、タンザニア旅行は観光ではなく、既に過激組織の中で動いていた行動の1つという、異なる言い分も伝えられています。
しかし、結果としてエンワジという人物は、「ジハーディ・ジョン」という名で、シリアに渡り「イスラム国」の広告塔となってしまったことからも、英国の諜報機関や警察は、それを事前に防ぐことができなかったことは確かのようです。
ここ数年、英国のニュースでも多く伝えられている、英国生まれの若者や小さな子連れの家族が「イスラム国」の活動に参加するためにシリアへと向かう傾向は、一時ほど多くないものの続いています。
平和な英国を捨てて、厳しい生活を強いられ、命をかけて戦わなければならない戦場へ向かわせるものが一体何なのか、この根本の原因を正していかないかぎりは、英国生まれのイスラム教の若者たちを過激派組織の洗脳から救う道はきっと無いのでしょう。
今回のニュースを伝える英国メディアも後味の悪さを感じているように思うのは、私だけでは無いようです。