シルバーの産業用需要の見通し
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、GFMS(英国貴金属調査会社)の主要メンバーが立ち上げた、Metals Focusのシルバーの需要の今後の見通しをまとめています。
先週はGFMSの相場見通しを紹介しましたが、今週はそのGFMSの主だったメンバーが退社して自分たちで作った新たな調査会社Metals Focusのシルバーの需要にたいする見方を紹介しましょう。
シルバーの産業用需要はここ数年非常に厳しい情況を通り過ぎてきている。特に2008年のリーマンショック以来の世界的不況により、主たるシルバーの末端での需要の減少がみられ、それに加えて価格の高騰と激しい値動きのために、シルバーの使用を極力絞り込む動きがいろいろな製品の生産者にみられました。 工業生産に対する経済の影響は、循環的なものと考えられますが、一度「省銀化」が行われるとそれが逆に動くことはまずありえず、需要を破壊してしまうこと になります。こうやって続いてきたシルバーの需要の不調は、2013年が転換点となりそうです。それには二つの理由を挙げることができます。まず第一に多 くの産業分野が景気回復を実感し、それにより動き始めていること。第二に年初よりも遥かに安くなったシルバー価格により、「省銀化」がそれほど緊急な課題 ではなくなったことがあげられます。
・メーカー在庫の減少により、シルバーパウダーとシルバーペーストの需要が伸びてきている。
現在シルバーの最終需要のもっとも重要な分野は太陽光発電です。これは英語ではPhotovoltaic (PV)と呼ばれます。太陽光発電パネルに使われるのはシルバーパウダーと呼ばれるシルバーの粉です。2011年にはこのシルバーパウダーの需要が急激に伸びました。そしてその反動として2011年後半から2012年にかけては需要が激減。これはとくに中国において、その大きすぎる生産能力で太陽光電池の在庫を作られたためと、折りしも50ドルまで高騰したシルバー価格が、「省銀化」の動きを急激に後押ししたという事情もありました。しかしこのことは逆説的ではありますが、長期的に太陽光電池におけるシルバーの使用を保証したと考えることもできるでしょう。「省銀化」の動きがあまりに急激に進んだために、 これ以上「省銀化」することは、シルバーの価格の下がったこともあり、もはや研究開発費をかけるものではなく、今後の省銀化のスピードは大きく緩まること になると予想されます。
今後を考えると太陽光発電での需要は上向いていくと考えられます。これまでマーケットの頭を押さえていた太陽電池パネル完成品の在庫はほぼなくなり、現在は普通の状態になっており、太陽光電池の設置は健全なスピードで進んでおり、省銀化の緩まりとともにシルバーペースト(そしてそのもとになるシルバーパ ウダー)の需要は伸びつつあります。
長期的な太陽光発電パネルの需要を考えるときに、参考になるのがEuropean Photovoltanic Industry Association(欧州太陽光発電産業協会、とでも訳せばいいでしょうか)という団体が出している今後の世界での太陽光発電パネル設置予想です。全体的にはこの予想ではこれから数年の間に設置される太陽光発電パネルは2011年に設置されたものを十分に上回ると予想されています。使用されるシルバー量としては当時よりも少なくなると思われますが、それでも35-40mil onz(1000トンから1250トンくらい)の需要があると見込みます。
・過去30年から40年の間、増え続けている分野ですが、今後も増え続けることが予想されます。
・シルバー接点(Contacts)の世界的需要は改善の見込み。
シルバーの接点の需要は伸びることが期待されています。特に自動車販売が伸びることによってそれに使われる電気的接点の需要は増加するでしょう。昨年は 小型自動車の販売が6%増えて8200万台となりました。今後も毎年4-5%程度での増加が期待されています。そしてこの自動車自体の販売の増加よりも大 きい割合でシルバーの需要は増えると思われます。これまでは高級車にしか装備されなかった電気部品がより大衆小型車にも装備されていくからです。この流れは、シルバーの代替をめぐる動きや省銀化の動きを相殺するものといえるでしょう。
************
資産保護のために金の購入をお考えですか。ワールドゴールドカウンシルが資本参加をしている、オンライン金取引において世界一の実績を持つブリオンボールトでは、日本のお客様に、資産の地政学的分散投資を可能とする、スイス、英国、米国、シンガポールでの金保管サービスを提供しています。