金市場ニュース

ゴールドETFについて

貴金属ディーリングにおいて世界でも第一人者のスタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、金ETFについて、この商品が開発された経緯と、金現物市場に与えた影響を解説しています。

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今週は金の基礎知識編(第4回)です。現在2400トンの残高があり、注目すべきセクターであるゴールドETFについて解説します。

第1回:「金の価値って何だろう?

第2回:「金の比較的価値

第3回:「金の実用的価値



ゴールドETFという商品はまるでコロンブスの卵のようです。この商品が出てくるまで、世の機関投資家は、金の現物に投資がしたくても、簡単には手を出せませんでした。保管の問題や彼らの約款上の問題、その他いろいろ普段は株や債券、投信などの金融商品を扱うことがメインのビジネスである機関投資家にとっては現物投資というのは非常に敷居の高いものでした。

実際に機関投資家としてここに目をつけた人物がジェームス・バートンという人でした。彼は「ものを言う株主」として有名なカルパース (CalPERS[カリフォルニア州職員退職年金基金]:The California Public Employees Retirement System)という米国最大の公的年金基金でトップにいた人間です。その彼がWGC(World Gold Council)に移籍し、まさに機関投資家の目線から、金に投資できるように考え出したのが、このゴールドETFであったわけです。金の現物を「上場投資信託(ETF : Exchange Traded Fund)」という形の非常に単純な「投資信託」にしてしまったのです。

機関投資家にとって投資信託であれば、日頃から行っている投資活動の対象であり、なんら問題はありません。現物の保管の心配をする必要もなく、ただの投信として売買できます。これはバイサイドにとってもセルサイドにとっても画期的な、まさに「コロンブスの卵」的な発想だったわけです。もちろん、ETFが 買われたら、ファンドのオペレーターはその分の金地金を市場で買いつけます。そしてその金は倉庫に大切にしまわれていくのです。文字通り、投資家の資金は そのまま金へと向かっています。これはまさに単純に「金を買っている」ということに変わりありません。それを証明するように、ゴールドETFはすごい勢いでその残高を増やしていきました。2003年から始まり、2012年には2400トン近くもの金をこの商品は買ったのです。

最大のSPDRのみならず、ほかのゴールドETFも続々と登場してきました。ロンドン、スイスでは地元の証券会社によるゴールドETFがある程度の残高を集めています。この期間にゴールド価格は400ドルから一時1900ドルまで上昇しました。ETFによる金買いが金価格上昇の原因の少なからざる部分を占めているといえるでしょう。私の個人的感覚ではおそらく、400ドルから1900ドルへの1500ドルもの上げのうちの500ドルくらいはETFによる 買いのためではないかと思います。2400トンといえば、世界の中央銀行(IMFを含む)の中でも4番目のイタリア(2451.8トン)と5番目のフランス(2435.4トン)の保有している金とほぼ同じ量です。そんな中央銀行が数年で新しくできてしまったようなものです。

中央銀行保有金とゴールドETF(トン)
米国 8133.5
ドイツ 3396.3
IMF 2814.1
イタリア 2451.8
フランス 2435.4
ゴールドETF 2374.9
中国 1054.1

ゴールドETFの過去10年の金増加量はこのように半端なくすごいのですが、もうひとつ注目すべきなのが、その残高が大きく減らないこと。つまりゴールドETFに投資している投資家は基本的に長期保有の投資家が圧倒的に多いということが言えます。最大の保持者であったので有名なPaulson Fundが持っていた量はもっとも多かったときで全体の7%。Soros Fundは2%程度でした。ということはその大部分はもっと小口の投資家、年金であったり個人投資家であったり、とにかく裾野が広く、おそらく彼らはポー トフォリオとして保有しており、短期的な売買とは一線を画す中長期的な投資家が多いと推量されるのです。

ゴールドマーケットの根雪部分とよく言われますが、ゴールドETFを保有している投資家が一度に全部売ってこない限り(そして、それは少なくともこれまで一度も起こっていない)、このETFのポジションによって上がった部分は下がらないのです。ゴールドがここから500ドル下がることはゴールドETFがある限りまずありえないと言ってもいいでしょう。 日本でも複数のゴールドETFが販売されています。しかし残念ながら日本では、現物志向が強く、なかなか欧米のような大きな残高にはいたってないようです。

以上

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池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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