アサヒホールディングズが160年間続いたジョンソン・マッセイの金・銀精錬事業を買収
貴金属リサイクルのアサヒホールディングズが、ロンドンのグッドデリバリーバー精錬で最も歴史を持つ、ジョンソン・マッセイ社の金・銀精錬/加工を行う米国とカナダの子会社GSRホールディングズを1億8600万ドル(約223億円)で買収した。
これにより、英国の上場会社であるジョンソン・マッセイ社の160年続いた貴金属精錬事業は、主要精錬工場をアサヒホールディングズに売却することで、来年3月に終了することになる。
GSRホールディングズは、米国ユタ州のソルトレイクシティ工場とカナダのトロント郊外のブランプトン工場を持つ。
アサヒホールディングス(TOK:5857)は、1952年に設立され、1968年に神戸に工場を設立した。2000年には、アサヒホールディングスの銀がロンドン貴金属市場協会(LBMA)でブランド登録され、2008年には金の登録もLBMAで行われた。
同社グループのアサヒプリテックが手掛ける貴金属リサイクル事業では主にエレクトロニクス・歯科・宝飾などの各分野から貴金属資源を回収、分離・加工するのに対して、 GSRグループでは主に鉱山から採掘される鉱石の精錬・加工を行っており、資源・原料の調達、貴金属(加工品)の販売、精錬技術などにおける補完関係が極 めて高く、シナジーが期待されると、同社プレスリリースでは買収について説明している。
1950年代から、自動車排ガス触媒や環境浄化用触媒技術を専門としている、ジョンソン・マッセイ社は、1851年に設立され、金本位制の要であったイングランド銀行の公式な精錬及び試金企業となり、翌年にはロンドン貴金属市場協会のグッドデリバリーバーでブランド登録された。
1942年には、ジョンソン・マッセイPlcはロンドン証券取引所に上場され(LON:JMAT)、1946年には英国の(既に貨幣としては通用しない)銀貨の造幣の独占契約を得た。しかし、同社のプラチナ及び触媒事業が発展する中、同社の英国とアイルランドの宝飾部門は売却され、電子部門も1999年に売却されることとなった。
2012年には、ブランプトンは新契約の準備のために、その金の精錬能力を増強させたが、ソルトレイクシティ工場は、操業上の問題から、金・銀精錬事業で少額の損失を出すこととなった。
2013年にはブランプトンとソルトレイクシティ工場は、金銀の産出元を確認し、戦争やテロリストの管理下にある場所からの金銀を利用しない、LBMAよりレスポンシブル・ゴールドの認可を受けた。しかし、2014年1月には、ブランプトン工場で18日間の労働争議が発生している。
ジョンソン・マッセイ社の金と銀の精錬事業の売上高は、2013/2014年度に10%減となり、9月末までの6ヶ月間に23%減となっている。
「営業利益の可能性は、減少している」とジョンソン・マッセイのこの部門は、半年のレポートで述べており、「金と銀相場の下落は、リサイクルの量に影響を与えている」と続けている。
ブロンプトンとソルトレイクシティ製錬所の売却について、「ジョンソン・マッセイの他の部門とこの部門のシナジー効果はなくなりつつある」と、業界アナリストの一人は、ファイナンシャルタイムズにコメントしている。
日本は、LBMAで認可された11の精錬所を持つ。これは世界で最多であり、第2位の中国とロシアは共に8つの精錬所がLBMAでグッドデリバリーバーの精錬で認可されている。
トムソン・ロイターGFMSの最新レポート「Gold Survey」によると、日本の金地金の輸出は、2013年に10%減の74トンとなっており、香港への輸出が50%を占めている。
ブロンプトン精錬所で製造された金地金は、1961年にLBMAのグッドデリバリーリストに登録され、ソルトレイクシティは1989年に登録されている。この2つのジョンソン・マッセイ社の精錬所は、400オンスバーであるグッドデリバリーバーの、北アメリカの主要精錬所となっている。