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【銀投資家インデックス】銀投資はインフレ懸念が銀価格を8年ぶりの高さへ押上げて後退

5月に銀地金への投資需要が後退していました。
 
 
銀への投資は1970年代に急激に増加しましたが、1970年代はインフレー率が急騰したことが知られています。
 
つまり、インフレは銀にとって良いものでなければならないということです。
 
銀の投資価格は、これに同意するものと思われます。米国の年間インフレ率は、数年ぶり、いや数十年ぶりの高水準となりました。また、貴金属は、米ドルで8年以上ぶりに月間最高値を記録しました。
 
銀の需要の半分以上は工業用であり(金は10%以下)、この金属はコロナ危機の後退に伴う経済の再活性化に後押しされています。5月の平均価格は27.46ドル、月末には27.63ドルと、いずれも2013年3月以来の高値を記録していました。
 
しかし、先月の米ドル建て銀価格の上昇の大部分は、為替市場でドルが下落したことによるものでした。
 
また、ユーロ建ての銀価格は、2020年8月や2021年2月の数年来の高値を上回ることができず、英国ポンド建ての投資家にとっては、これらの高値をさらに下回ることとなりました。
 
また、生活費のインフレ率は、少なくとも今のところは米国中心であり、ドルの下落に起因するものです。そこで、今回の消費者物価データでは、英国もユーロ圏も米国の四半世紀の最高値には及びませんでした。
 
しかし、先月の銀地金価格の上昇は、米国居住者の銀地金への新規投資を促すものではなく、米国のブリオンボールトユーザーが利益確定をする機会となり、顧客全体としても売却が主となったことを示していました。そして、英国、ユーロ圏、その他の国々の顧客が銀地金を購入したことで、この売却額はある程度相殺されることとなりました。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格の推移 出典元 LBMAとブリオンボールトのデータを基にブリオンボールト作成
世界の顧客が利用するブリオンボールトにおいて、先月銀を売却量を上回って購入したネット購入者数は、4月の14ヶ月ぶりの低水準から4.8%増加していました。
 
一方で、銀地金を購入量を上回って売却したネット売却者数は、4月の6ヶ月間で最低の値から28.7%増加していました。
 
その結果、銀地金投資家インデックス(ブリオンボールトにおける顧客の銀投資傾向を指数化した指標)は、4月の54.3から5月には53.1となり、16ヶ月間で最も低い水準に下げていました。
 
この指標は、4月の54.3から5月の53.1へと低下しました。この指標は、他の指標である金投資家インデックスと同様に、購入者数と売却者数が完全に一致した場合、50.0となります。
 
銀投資家インデックスは、2020年春のコロナ危機による価格の急落で急上昇し、この数値を算出して以来の9年間で最高値となる75.1を付けていました。
 
一方で、米国の顧客が全体的に売りに転じる中で、重量においては5月の銀需要は顧客の売却分を差し引いて約7.4トンとなりました。これは、4月よりも3分の1少なく、昨年7月以来の低水準であり、12ヶ月間の平均を59.7%下回っていました。
 
しかし、2020年はブリオンボールトにおける銀地金の需要が記録的に増加した年であったことからも、この平均値を維持することは難しいと言えるでしょう。そのような中、コロナ危機以前の5年間平均と比較すると、先月顧客が追加購入・保管した銀地金は重量で33%上回っており、顧客がブリオンボールトで保管する銀地金の送量は、過去最高の1,200トンで評価額10億ドル以上に達していました。
 
下記にブリオンボールトの顧客が所有するグッドデリバリー地金の一本一本を数え、扱い、チェックする専門の検査員が撮影した銀の一部の写真を添付します。
 
ブリオンボールトの顧客が保有する1200トンの銀地金の一部の写真 著作権 ブリオンボールト
 
さて、10億ドルは、かつてのよう価値はないかもしれません。それでも大金であることには変わりありません。
 
例えば、10億ドルは、 映画館グループであるAMCの昨年の全世界での収益の合計額とほぼ同じです。
 
しかし、その費用の55億ドルには及びませんでした。
 
これは4年間で3度目の赤字であり、コロナ危機による映画館の閉鎖と世界中の映画ファンの減少により、最悪の決算結果となっっていました。
 
しかし、10億ドルという金額は、水曜日に 「Meme Stock」が1時間ごとに取引された金額でもあります。レディット(ウォールストリートベット)の参加者がこの会社の株価を史上最高値に押し上げ、2021年の現時点までに30倍以上に跳ね上げていました。
 
確かに10億ドルは巨額ですが、今日のゼロ金利、量的緩和政策に支えられた金融市場では、多額ではありません。そして世界最大の経済大国で、インフレ率が数十年ぶりの高水準に達している中ではです。
 
しかし、ブリオンボールトの顧客が所有する投資用銀地金を購入するには、この金額が必要となります。この銀地金は1,200トンあり、もしこれらの投資家が現在の価格で売却していたらという額です。
 
銀地金への投資は、金地金への投資と同様に、インフレや通貨安による価値の低下から長期的に富を守るための古典的で一般的な方法です。
 
貨幣価値を下げることが、米国FRBをはじめとする主要中央銀行の金融政策である限り、銀への投資トレンドは継続すると考えられます。しかし、銀価格が2020年春の11年ぶりの安値(米ドル建て)から135%も上昇した後に、1970年代の20倍の価格高騰を繰り返すことを期待すべきではないでしょう。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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