【金投資家インデックス】金投資需要は増加シているものの、インフレ懸念は欠落
金と銀の価格は、FRBやECBのインフレの見方で一致しているようです。
インフレーションが、今年の夏に米国とドイツの貯蓄者にとって30年ぶりの高さにも関わらず、個人投資家の金投資は8月に静かなものとなりました。
個人投資家の金購入量は前月の売却量をわずかに上回るものでしたが、金購入者数は、7月のコロナ禍以前の低水準から急激に増加していていました。
世界の個人投資家のために、世界の5つの拠点で38億ドル(4,160億円)の貴金属を保管しているブリオンボールトにおいては、8月に金地金の売却を選択した人の数が前月のコロナ危機以来最も少ない水準から17.4%増加していました。
一方、購入者数は7月の1年半ぶりの低水準から26.9%増加していました。このために、個人投資家の金投資傾向を示すブリオンボールト独自の指標である金投資家インデックスは、8月に1.4ポイント上昇し55.6となっていました。
2020年3月に65.9と8年ぶりの高水準を記録した金投資家インデックスが50であった場合は、その月に月間で金の売却量を上回る購入をしたネット購入者数と、購入量を上回る売却をしたネット売却者数が完璧に致したこととなります。
インフレ率が数十年ぶりの高水準に達したにもかかわらず、貴金属市場は、欧米の中央銀行や債券市場と同様に、このインフレ率の上昇が一過性であると考えているようです。
長期金利はほとんど動いておらず、米国債の実質利回りは1980年以来の低い水準とマイナス幅を広げています。しかし金価格はこれに反応して上昇しておらず、これは、貴金属市場が昨年8月のトロイオンスあたり2,000ドルを超える新高値へ達したのは、先走りであったと見ていることを示唆しています。
8月の金の米国ドル建て月間平均価格は、昨年夏の史上最高値から9.4%下落していました。これは、金価格が金融危機後の弱気相場の終わりである2016年の新年以来の年間で最も急激な下落幅となります。
金価格が3ヶ月連続で米国ドル建てで下落したために、ブリオンボールトの顧客による8月の金地金の売却量は、過去12ヶ月の平均から24.6%減少していました。しかし、購入量はさらに減少し、前12ヶ月間の平均と比較して47.8%下回り、顧客が新たに購入した金の量は32kgで、3月以来の低い水準となり、売却量を差し引いたネットの購入量は2020年1月以来の低さの24kgとなっていました。
これにより、ブリオンボールトの顧客がロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒの中から選択した保管場所で貯蔵されている金地金の総量は47.6トンで評価額が28億ドル(3050億円)となり、18ヶ月連続で総保管量を更新していました。
また銀においては、米国ドル、ユーロ、英国ポンドの各通貨建てで、工業用に適した貴金属の価格が急落したため、8月は購入が売却を上回っていました。
銀の売却者数は7月の19ヶ月間の最低値から8.2%増加し、購入者数は16ヶ月間の最低値から16.9%増加し、売却者数の2倍の速さで増加していました。
そのために、銀投資家インデックスは1.0ポイント上昇し55.4となっていました。そして、購入量から売却量を差し引いたネットの銀需要は11トンと、重量ベースで13ヶ月連続で総保管量を更新して1,233トン、その評価額は9億5,300万ドル(1,040億円)に達することとなりました。
そこで、8月のブリオンボールトの新規顧客数は、2年ぶりの低水準となった7月から17.8%増加していたものの、2020年のコロナ危機で記録的なペースとなった新規顧客数からは大きく減少していました。
危機時は例外として、夏は貴金属の新規投資需要が閑散とするのが常であり、2021年も例外ではありませんでした。金は新たな関心を集めているものの、貴金属はまちまちな経済見通しと、容赦ない株式の新記録更新の間に挟まれています。
これは個人投資家の間では、小口の購入者が数と量で、他の資産への資金移動を選択する大口の売却者をわずかに上回っていることからも見受けられています。