【金投資家インデックス】貴金属投資家は価格上昇時に金と銀を売却 2021年12月16日 木曜日 17:38 コロナ危機以来の激しい売却で、銀がサービス開始以来初めて売り越しとなっていました。 先月貴金属価格の上昇により、個人投資家がコロナ危機以前以来の早いペースで金を売却していました。 さらに注目すべきことは、オンライン現物貴金属市場において世界最大の ブリオンボールトにおいて、先月は初めて銀の売却量が購入量を上回ったことでした。 金においても、購入量を差し引いた売却量は200キロと、2020年1月以来の大規模なものとなっていました。そして、これは10月に顧客によって売却量を差し引いて購入された量の倍の量でもありました。10月にはブリオンボールトにおいて顧客が保有する金の量が47.7トンを超えて過去最大の記録を更新していました。 銀地金は、その価格のボラティリティがより大きいことからも、2009年末にブリオンボールトにおいて銀地金投資サービスを追加して以来、初めて売り越しとなり、10月末の保有量1,244トンのうち2.7トンが購入量を差し引いた後に売却されていました。 新型コロナウィルス変異型オミクロン型が世界の株式市場の急落に拍車をかけ、インフレが数十年の高水準にある中、11月に金保有を開始または追加した人の数は10月の数値から11.3%増加していましたが、金価格が数ヶ月ぶりの高値となったことから売却者数は41.9%急増していました。 そのため、金投資家インデックスで測定される金に対する投資家のセンチメントは、10月から0.6ポイント低下し52.8を記録し、2019年7月以来の低い水準となっていました。 ちなみにその前月2019年6月は、ブリオンボールトの金投資家インデックスが計測されて以来12年の歴史の中で50.0を下回った2回のうちの1回であり、金価格が1年かけてトロイオンスあたり2000ドルを超える史上最高値を更新する上昇基調の始まりの時期であったことからも、ブリオンボールトで購入者よりも売却者が上回ることとなっていました。 この数値で注意すべき点は2つあります。 まず、この金と銀の売り越し量は、11月中のブリオンボールトにおける個人投資家の保有量のそれぞれ0.4%と0.2%に相当するに過ぎず、貴金属を売却する波が起きていることを示してはいません。 第二に、この少量の資産売却は、価格の急騰に直接反応して行われ、短期目的の人々が、保有する一部もしくは全部の地金の利益確定を迅速に行ったことからです。 ドル建ての金価格は、11月に5ヶ月間の下落を止め、月間の安値から高値までは6.7%と上昇し、6月以来最も高い月間平均価格のトロイオンスあたり1804ドルを付けていました。 一方、英ポンド建ての金相場は1352ポンドと、1月以来の高値となり、ユーロ建ての金相場も4%強の上昇で昨年11月以来の月間平均価格1595ユーロとなっていました。 その結果、ブリオンボールトの世界中の顧客の購入量を差し引いた売却量は0.2トンとなり、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒの顧客の選択した場所で安全に保険をかけて保管されている顧客の保有量は47.5トンを多少下回る、評価額27億ドル(310億円)相当となったのでした。 銀価格はさらに激しい値動きを見せ、ドル建てで月間の安値から高値で10.2%上昇したものの、11月は10月より4.8%低いトロイオンスあたり22.87ドルで終えていました。 ブリオンボールトのユーザーによるわずかな売り越しは、顧客が保有している銀の評価額を9億1300万ドル(1020億円)へと減少させましたが、この0.2%の小さな売り越し分は、銀投資家インデックス小さな上昇と対照的となりました。銀投資家インデックスは、11月には、27ヶ月ぶりの低水準であった10月から0.4ポイント上昇し、52.2となっていたのです。 この背景は、先月の銀価格の高騰によって、個人投資家による銀の売却が前月比15.8%増となったものの、ロンドン、シンガポール、トロント、チューリッヒのいずれかの保管場所で銀の貯蔵を開始したり追加した投資家の数が、10月の最低水準から17.0%増となっていたことからでした。 このように、金と銀の価格高騰は、既存の地金所有者に若干の利益確定を促したものの、新しい購入者が貴金属市場に参入し、新年を前に現物地金のポジションを追加し続けているのです。2022年に向けて金融リスクが高まる中、ポートフォリオや為替ヘッジとしての貴金属の長期的な魅力は揺るぎないものであるようです。 米国の中央銀行がいつ利上げに踏み切ろうとも、金利はインフレ率をはるかに下回り、中央銀行に対する信頼は低下を続けています。金は他の資産のパフォーマンスが不調なときに好調になる傾向がありますが、主要中央銀行の金融政策に対する信頼が失われたときに最も好調になる傾向があるのです。