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【金・銀投資家インデックス】銀地金はショートカバーの価格急騰で利益確定売りに押される

金価格は、2021年5月以来、ドル建てで最も速いペースで上昇し、メディアの見出しを飾りました。
 
しかし、銀地金の価格は、貴金属の下げを見込む投機家が、コメックス先物・オプションにおいてショートポジションを積みましていたことから、そのショートカバーで、10月末から12.7%上昇と急激に上昇していました。
 
欧米で銀貨を保有していた人々はこの上げで利益を出したでしょうか?
 
銀貨を購入する人々は、購入価格と販売価格の間のスプレッドの幅が20%あるいはそれ以上であり、さらに、ユーロ圏では19%、英国では20%の付加価値税が課されることからも、利益を得るのがとても困難となっています。
 
幸いなことに、ブリオンボールトではスプレッドを顧客が値をつけられることからも削ることができ、付加価値税が課されないことから、ひと月の上げ幅としてはほぼ2年ぶりの高さとなった11月に、ブリオンボールトの顧客は3月のロシアのウクライナ侵攻の価格の急騰以来の高い水準で利益確定を行ったのでした。
 
また先月は、2016年6月の英国のEU離脱を決めた国民投票後に銀価格が14%以上急騰して以来初めて、月間の売却量が購入量を上回るネット売却者数が購入量が売却量を上回ったネット購入者数を上回ったのでした。
 
このように大量の利益確定が起きたのは、ブリオンボールトでは費用の低さからも簡単に利益を出すことができたからなのです。
 
銀投資家インデックスと月間平均銀価格の推移 出典元 LBMAデータ及びブリオンボールト
 
貴金属の下落時に購入し、上昇時に売却する取引機会を得ることができるかどうかは、市場へのアクセス方法に依存します。
 
金、銀、プラチナ、パラジウムの価格の下落や上昇に合わせて取引をすることは、実現可能であるだけでなく、付加価値税を取り除き、二桁の取引スプレッドから逃れることができれば、ますます魅力的になります。
 
そのため、それを可能とするブリオンボールトの銀地金売却者の数は、先月10月の数字から39.6%増加し、3月以来最も多くなっていました。
 
それに対し、銀価格の急騰を受けて銀地金購入者数は、先月全体で41.1%減少し、2013年5月以来の急激な下げとなり、2019年5月以来の低い水準まで減少していました。
 
そこで、個人投資家の銀投資傾向を数値化した銀投資家指数は、2020年10月以来の急落を記録し、4.5ポイント減の49.0となっていました。
 
50.0を超えると、その月のネット購入者数と売却者数がほぼ一致したことを意味します。2022年11月には、2016年6月以来初めて、その中間値を下回ることとなりました。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格の推移 出典元 LBMA及びブリオンボールト
 
11月に地金価格が急騰し、ドル建て金価格が月間で18ヶ月ぶりの速いペースで急騰したために、金投資家インデックスも前月下落して、昨年夏以来の下げ幅となっていました。
 
金地金は、米国ドルが為替市場で2022年の高い水準から下げたことから、11月は月初から7.0%上昇して終えていました。
 
これは、2021年5月以来の月間の金の急騰であり、月間平均価格も3.7%上昇となっていました。
 
これを受けて、金地金の月間のネット購入者数は10月から27.0%減少し、過去18ヶ月間で最も大きい下げ幅となりました。それに対し、ネット売却者数は27.2%増となり、2月以来の大きな上げ幅となりました。
 
また、個人投資家の金へのセンチメントを実際に行われた取引データから数値化した金投資家インデックスは、3.2ポイント減の53.5となり、9ヶ月ぶりの低水準となっていました。
 
この数値も50.0を上回れば、月間のネット購入者数とネット売却者数がほぼ一致したことを意味します。
 
重量ベースで見ると、ブリオンボールトの顧客の金保有量はほぼ変わらず、11月に36キログラム増加し、48.0トンを超えて新記録を更新していました。
 
ドル安による月末の金価格の上昇もあり、ブリオンボールトの顧客の金地金保有評価額は27億ドル(約3680億円)を超え、過去5ヶ月で最も高い数値となりました。
 
一方、銀地金の保有量は0.4%減少し、8ヶ月ぶりにネットで売却量が上回り、10月末の史上最高記録である1,267.3トンから5.3トン減少していました。
 
そのような中で、11月の銀地金価格は、2020年8月以来最も急激な月間平均価格上昇である8.5%となっており、ブリオンボールトの顧客が保有する銀地金の評価額は、4月以来最も高い8億7500万ドル(約1194億円)となっていました。
 
それでは、今後の見通しはどのようなものでしょうか?
 
金利の上昇は、高インフレと地政学リスクの高まりによる地金市場への影響を相殺し、今年の地金需要と価格を抑制しています。しかし、消費者需要はすでに回復しており、2023年に可能性が示唆されているスタグフレーションからも、中央銀行がさらなる大幅な利上げに躊躇する可能性がありそうです。
 
金の宝飾品需要はコロナ禍前の水準に戻っていますが、価格は500ドルも高い水準を推移しています。銀の長期的なファンダメンタルズは、鉱山供給が今後減少か横ばいとなることが予想されていることから、そしてグリーンエネルギー技術からの需要が伸びていることからも、明るいものであることは確かなようです。
 
そして、現在の市場水準は、2022年の大きな値動きを覆い隠しており、ロシアのウクライナ侵攻で金は史上最高値に近い水準へ達し、銀は価格の上下幅が30%と大きく変動したにもかかわらず、貴金属は新年からほぼ横ばいの水準に戻っています。
 
そして、金と銀価格の反発からも、Comex先物・オプションの資金運用業者によるショートカバーが価格更に押上げて、現物の買い手は多少反応が遅れているものの、より活発な動きをするトレーダーへは利益確定の機会を提供していたのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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