「金を買う」検索数が世界金融危機以前の低さへ
新規顧客による金購入が4年ぶりの低さへ下げる中、1300ドルを超えて利益確定が進みました。
5月に、ブリオンボールトにおける新規顧客数が2014年5月以来の低さへと下げていました。ここでブリオンボールトのエィドリアン・アッシュが解説しています。
この新規顧客数は過去12か月の平均から27.7%減で、過去5年間の月間平均においては52.7%となっていました。
また、インターネット検索を分析するGoogleトレンドのデータによると、世界の「Buy Gold(金を買う)」という検索は、世界金融危機直前の2007年7月以来の低い数値となっていました。
そして、ブリオンボールトの既存の顧客による利益確定の売却取引は前月同様に起きていました。
世界の71,000人のユーザーによって利用されているブリオンボールトのプラットフォームでは、4月に98キロの金が売却された後に、5月には85キロが売却されていました。それにより、顧客によってチューリッヒ、ロンドン、シンガポール、ニューヨーク、トロントで保管されている金の総量は、3月の史上最高値の38.8トンから0.5%減少していました。
この金保管総量は、世界の多くの中央銀行の金準備高を上回る規模で、その評価額は16億ドル(1750億円)相当となっており、この規模は、ワールド・ゴールド・カウンシルが発表しているデータによると、世界の株式市場で上場されている金現物に裏付けされている金の上場投資信託(ETF)と比較しても、トップ12位に入る規模となっています。
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェア(NYSEArca:GLD)の残高は5月に4%減少し、それまでの2か月間の増加量を失い、1ヶ月間の減少量としては、昨年8月以来の大量なものとなっていました。
また、米国造幣局は24,000オンスのアメリカンイーグル金貨を販売していましたが、これは小売店が在庫を整えたためで、前月4月と比較すると大きく伸びてはいましたが、過去5年間の5月の平均販売量と比較すると半分にも至っていませんでした。
ブリオンボールトのデータでは、5月に新たに金購入を始めた顧客数と月間の購入量が売却量を上回っていたネット購入者数は、2016年1月以来の低い水準であった4月から12.1%増加していました。しかし、ネット売却者数は22.8%増加し、4ヶ月ぶりの高い水準となっていました。
そのために、欧米の個人投資家の金への投資傾向を、実際に行われた取引データから算出する金投資家インデックスは、9ヶ月ぶりの低さの52.4と、4月の52.5から下げていました。
金投資家インデックス(ブルームバーグ端末:BVGDINDX)は、金価格が記録的な高さへ上昇した2011年9月に71.7と最高値を記録し、2015年の1月に50.5の最低値を付けています。
この数値がが50である場合は、その月のネットの購入者数と売却者数が完璧に一致したことを示しています。
そのために、金投資へのセンチメントは、購入者数が売却者数を上回り未だポジティブではあるものの、弱まっていることは確かです。これはなぜなのでしょうか。トランプ大統領の貿易戦争やイタリアの予算案を巡る混乱や中東の危機は、人々を金へ向わせるには十分ではないのでしょうか。
正しいかどうかは別として、金価格は政治リスクや経済リスクを計るものものでもあります。そのために、2018年の株価の急落や地政学リスクには反応していました。
今年の5月までに金は、2016年と2017年を合わせても、トロイオンスあたり1300ドルを超えてより多い日数取引されていました。
「安全資産」と通常呼ばれることに反して、金への興味は、新規顧客数が数年来の低さへ下げていることや、グーグルで「金を買う」の検索数が世界金融危機以前の水準まで減少を続けていることからも、個人投資家の中では薄まっているのです。
そして、価格の上昇も利益確定を進め、低い価格で購入することを望む人々はその機会を待っている状態なのでしょう。
ブリオンボールトのプラットフォームでは、売買がオンラインで手軽に行えることからも、価格の動きが激しい際にはこのように売買が活発に行われることがあります。しかし、金貨や小規模な地金市場においても、高い取引手数料を支払わなければならないにもかかわらず、長期保有の金所有者が売却を行っていたのです。
こうして売却した資金を使って、株式や仮想通貨を購入しているかもしれませんが、金融システムの保険という役割の金への投資需要は明らかに減少していると言えるかもしれません。
米国株式のS&P500種指数は、現時点で世界金融危機後の低さから290%増となっています。ビットコインは12か月前と比べても驚異的な上昇を記録しています。これは、2017年末の史上最高値を付けた後にです。
S&Pの強気相場の過去最長記録である9年間と51週を更新したとしても、これは、1999年から2000年のインターネットバブル後に起きていることなのです。
投資家は金融システムの保険の役割である金の位置づけを再度検討する必要があるのではないでしょうか。