金市場ニュース

Dr. Gloom - マーク・ファーバー博士のゴールド感

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今月行われた投資家セミナーで行われた、マーク・ファーバー博士とのパネルディスカッションにおける、ファーバー博士の金投資の見解をまとめています。

3月15日土曜日毎年恒例のパンローリング社主催の投資家セミナーが東京ドームプリズムホールでありました。このセミナーは毎年3000人もの個人投資家 が集まる一大イベントです。僕はこれに出るのが4年目になります。今年はちょっとマーク・ファーバー博士との共演になりました。パンローリング社による マークファーバー博士の経歴は以下の通りです。

マーク・ファーバー博士 (MARC FABER)

1946年スイス・チューリッヒ生まれ。ジュネーブとチューリッヒの高校を卒業後、 チューリッヒ大学で経済学を学び、24歳で準主席で経済学博士号を取得。1970年~ 1978年、ニューヨーク、チューリッヒ、香港にてホワイト・ウェルド・アンド・カン パニーに勤務。1973年から香港に移住。1978年~1990年2月までDrexel Burnham LambertにてCEOを勤め、1990年6月に、投資顧問会社 マークファーバー・リミテッドを立ちあげる。独特の投資チャンスを取り上げ、幅広く購読されている月刊投資会報「THE GLOOM BOOM & DOOM」を発行し、世界中の主要経済誌に定期的に寄稿している。 主な著作 に、『RIDING THE MILLENNIAL STORM』(1998年刊)のほか、世界将来の投資チャン スを浮き彫りにした、『トゥモローズ・ゴールド』(2002年刊)は、Amazon.comのベストセラーに数週間ランクインするなど、日本語、中国語、 韓国語、タイ語、ドイツ語など世界中に翻訳されている。また、さまざまな投資セミナーで定期的に講師を務める博士は、逆張り投資家として の投資手法でもよく知られている。またMr. Gloomとも呼ばれ、上昇マーケットの下落の予測を得意としており、マーケットの下落を何度も予測して当てている。

1987年 NY株式市場のブラックマンデー到来
1990年 日本のバブル崩壊(8000円まで下げると予見)
2003年 日本株の上昇
2007年 世界的な株安の到来

僕のセッションはこの博士と大橋ひろこさんとゴールドに関して話あうこと。通訳をつけてやるので時間は単純に倍かかり(通訳の方はとても優秀でした)、 ほとんど彼の独演のような形になりましたが、日本の投資家にとっては直接彼の話をきくめったにない機会なので、僕はできるだけしゃべらずに聞き側に回りま した。
 
 
 

彼の講演の骨子は以下です。極端な意見に聞こえますが、含蓄がある言葉でした。それは究極の話であり、ゴールドの値動きなど正直もはやどうでもよいレベルということです。

・まず彼が何度となく繰り返したのは世界の中央銀行が繰り返す愚行、つまりどんどん輪転機を回しお札をばら撒いていることが現在の世界に金融システムを結 果的に破壊してしまうだろうということ。この際限なきマネー膨張、信用拡大は経済の拡大にはつながらず、最終的に破裂する運命にあるバブルをどんどん膨ら ましているだけであると。
 
・そしてもはや不可避であるそのときが来た時、役に立つのは不動産やクラシックカー、そしてゴールドのような、紙切れではない価値を内在している「物」で ある。通貨をはじめとして金融商品が紙切れになるような暴落に見舞われても、価値が下がることがあっても無価値にはならないゴールドは保険として欠かせな いものだ。不動産も有効であるが、欠点はそれが政府から見えてしまうこと。ゴールドなら政府の目から隠すこともできる。

・彼は過去30年間毎月ゴールドを買っている。売るなんてことは考えたこともない。(相場変動のリスクなど、相場崩壊のリスクに比べると無視できるもの、 ということであろう。)そして、その保管場所には気をつけるべきだと言っています。間違っても米国で保管してはいけない。彼らは1970年台、個人から ゴールドを取り上げたことがあるから。シンガポールでもドバイでも香港でもいいが米国だけは避けるべきだと。彼は実際長い間香港に在住で数年前からタイの チェンマイに移ったということで、少し異常とも思えるほど米国に対しては不信感を持っています。FRBが本当に他国の中央銀行から預かったゴールドを実際 に保管しているかどうかさえも疑っていました。そして中央銀行の連中は「クレイジー」であり、自分だったら絶対彼らに自分の資産の運用はさせないと。とに かくお役所嫌い。タイのチェンマイに住んでいるのはなんとなくわかる気がします。

短期の相場の上げ下げなど関係ない。ゴールドはまさに保険。その一貫した見方を30年も続けて買い増しているというのは非常に参考になります。普通の投 資家とはやはり大きく違ったものの見方をし、現在の金融システムの崩壊を信じている彼が、ゴールドをこれだけ信頼しているというのはなんだか象徴的な気が しました。

彼の予測するような金融システムの崩壊が起きないことがベストですが、やはり保険としてのゴールドは保有しおくべきだなあ、と強く感じました。

昨年のゴールドに関する中国の統計数字は驚異的の一言。確かにほぼ1年を通して価格が下がり続けたこともbargain hunterである中国人を刺激したと思われます。

 

以上

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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