東京ゴールドフェスティバル2012
12月2日に東京で行われた、「東京ゴールドフェスティバル2012」のまとめを、ブリオンボールト日本市場責任者のホワイトハウス佐藤敦子がお届けします。
今回のイベントは、金業界の市場開拓団体であるワールドーゴールドカウンシルが特別後援し、東京工業品取引所、東京証券取引所、大阪証券取引所などの主要取引所が後援すると共に、日経マネー、ラジオNikkei、日経CNBCと連動するなど大掛かりなもので、10月から協力メディアを通してこのイベントは告知されていました。そのため、今回一般枠は受付を開始後1日で定員となるなど、イベントへの盛り上がりは十分な状態となっていました。
そして、当日は定員一杯の300名の個人投資家が出席し、三菱マテリアル、三菱信託銀行といった日本の金業界を代表する企業が協賛会社として参加しました。
会場では、三菱マテリアルが用意した、専門市場で取引が行われているグッドデリバリバー(約12.5キロ)の金地金が用意され、これと同じ大きさの銀、銅、アルミニウムの地金を実際に取り上げて比較する体感コーナーもありました。当然、最も重いのは金で、銀、銅、アルミニウムと続きます。
ちなみに、グッドデリバリバーは、イングランド銀行の博物館においても、その重さを体感することができます。
また、金先物の協賛会社のドットコモディティが1キロバーも当日用意していたために、参加者はこれを実際に持つことも可能でした。私も二つのキロバーを持って、日経マネー次号に掲載される写真も撮っていただきました。
第一部では、ワールドゴールドカウンシル駐日代表の森田隆大氏が基調講演をし、金価格が高騰している背景と金を取り巻く環境を同機関発行の最新の「ゴールド・デマンド・トレンド」のデーターを基に解説しました。
地上に現存する金が約17万トンであるということから始まり、金の需要と供給の傾向、1970年に需要の50%を占めていた欧米が、2010年には20%となり、1970年に30%であったアジアが50%以上となっていることに言及した上で、その産出国も1970年にアフリカが80%以上であったものの、現在は中国が最大の産出国で全体の13%となっていることなど、金の需要と供給の中心がアジアへと移行していることが説明されました。
そして、今後の金の世界金融の中の位置づけとして、CMEやICEなどで適格担保として認められ、銀行の健全性を維持するための自己資本規制のバーゼルIIIにおいて、金が中核的自己資本(Tier 1)として認められていることなどから、今後その重要性は増すことになるであろうと講演を締めくくりました。
第二部は、経済アナリストの豊島逸夫氏が、日経CNBCの江連裕子氏と共に、金市場の動向の取材で訪れた国々の写真と共に語りました。
お二人は、ドバイから戻ったばかりとのことで、ドバイのスーク(広場)の写真を見せながら、通常金市場関係者は、ドバイ市場に注目していることを説明しました。それは、ドバイ価格にプレミアが付くと、下げている金価格は底値であることを示唆し、それに対し、ドバイ価格がディスカウントになると、金価格は天井値であることが多いということからとのことです。また、世界で最大の消費国であるインドへは、ドバイ経由で金が多く輸入されることから、ドバイにはインド系の人々が人口の4割を占め居住し、他の人種と比較してもとても高い比率であり、ドバイ市場はインドの需要を熟知しているとのことでした。
その他、中国の金のデパートを訪問した際の写真も見せ、中国の金購入熱の高さについても説明しました。中国の市場は、自由化されて3年ほどであるにも関わらず、中国工商銀行(ICBC)においては、既に純金積立の3億口座が開設されたとのことです。これは、1500支店で運営されていて、現物受渡しは、1.5営業日以内に行えるシステムが既に構築されているとのことです。
第三部は、金の雑学のクイズに参加者が答えるコーナーで、何と賞品としてiPadやメイプルリーフ金貨などが勝ち残った人々にはプレゼントされました。
第四部は、今回の協賛企業によるパネルディスカッションで、それぞれの企業は提供する金の現物、金ETF、金先物、金CFD取引について語りました。
第五部は、日本を代表する金アナリストの経済アナリストの豊島逸夫氏、国際貴金属アナリストの亀井幸一郎氏、貴金属トップディーラーの池水雄一氏による、パネルディスカッションでした。
この方々は、常々セミナーなどでご一緒することも多く、十分にお互いを知り尽くしていらっしゃることからも、全くシナリオを準備することなく、様々なトピックについて議論することとなりました。そこで、非常に興味深かったのは、過去10年間上昇基調にある金価格が下落に転ずるタイミングについてでした。
豊島氏、亀井氏、池水氏は皆、FRBが2015年の半ばまで低金利を続けるために、金価格の上昇傾向を後押しするものであろうと考えています。しかし、豊島氏は、2015年半ばに低金利政策が終了することを見込んで、おそらく2014年半ばには金価格は下落傾向に入るであろうと予想しています。それに対し、亀井氏はFRBの金融政策が功をなした場合はそうであるが、現状では経済が2015年半ばに低金利政策を終えるほど回復するとは思えないために、金価格上昇傾向が下落に転ずる時期は必ずしも2014年半ばとは思えないとのことでした。
また、池水氏の経験からの話として、COMEXの投資家のロングポジションが1000トンを超えると、売却が入るので金価格は下げ、400から500トンまで下げると、金価格は上がる傾向があるというアナリストが市場を見る一つの要素を披露していただきました。
第六部は、参加者とゲストの懇親会でした。ここで私はワールド・ゴールド・カウンシルの森田氏とお話をする機会をいただきましたが、森田氏は前週に日本の年金基金100社向けのワールドゴールドカウンシル主催のセミナーに出席して感じたこととして、来年は日本の年金基金が金購入に入る転機となるのではないかとのお話をいただきました。既に一部日本の年金基金は、金の購入を行っていますが、これが主流になると、日本の金市場の動向は興味深いものになると思われます。
以上、昨年9月のコモディティフェスティバルに続き行われた東京ゴールドフェスティバルです。ここは予想通り金投資に関する情報が満載の、充実したイベントでした。私は、運営会社のキャピタル・エフ代表の児島様にご招待をいただき参加させていただきましたが、参加された投資家の人々の知識の高さと更なる情報収集欲の強さにも感心させられました。
来年以降も同様のイベントが開催される予定と聞いておりますので、その詳細が決まりましたら、いち早くお知らせをしたいと思います。
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