2023年の金価格を考える上で需要と供給は重要なのか 2022年11月30日 水曜日 13:24 2023年を前に金価格の先行きについて考えてみましょう。 ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエイドリアン・アッシュは、専門家やアナリストを盲目的に信じないのは良いことで、それは金の市場では常に行われていることと述べています。 しかし、個人投資家が個人的に分析をする際に、どのような点に注意をする必要があるのでしょうかとここで問いかけています。 金価格との明確な相関関係から、投資の流れに執着しがちですが、金市場の分析において気をつけるべきことは、鉱山から産出される金の供給が実際に価格に何らかの影響を与える可能性があることです。 デリバティブ取引所のCMEのエリック・ノーランド氏は最近の 一連の記事で、「供給が貴金属価格に与える影響をマクロ経済条件の中で明確に示すことは難しいが、鉱山供給は長期的に貴金属価格に強い影響を与えるようだ」と述べています。 金価格が高騰すると、鉱山会社の未開発の埋蔵量に付加 価値がつくため、生産量を抑制する傾向があります。また、不経済なよりコストの高い地層を掘るこ とができることとなります。 しかし、10年前の世界金融危機の際、金が名目ドル建てで1900ドルを超える高値まで急騰した際に、「金の鉱山供給量は2009年に増加し、2010年と2011年にわずかに減少していました。」とノーランド氏は 述べていました。 その後、価格が過去最高値からほぼ半減する中、「2011年から2016年にかけて20%以上上昇」しましたが、「金鉱山供給量は(その後)2016年から2021年にかけて7%減少」していたのです。この間、金価格はまず2020年のコロナ危機、次に2022年初めのロシアのウクライナ侵攻で、史上最高値を更新しするなどと価格が急騰していたのです。 したがって、2023年以降の金地金価格の行方を見る上で、鉱山供給の長期的なトレンドは十分に検討に値すると思われます。 それでは、宝飾品の金価格への影響はどうでしょうか。 歴史的にブレスレットやネックレスの需要が金価格を反映する傾向があることを、何度も見てきました。 それは、価格が下がれば需要は増え、上昇すれば需要が減少するというものです。 投資用の金の需要のように、金価格の上昇や下降を促すのではなく、むしろ金価格の上昇は需要の減少を促すのです。 しかし、金投資家が宝飾品の需要の価値を完全に無視したり、否定したりすべきではないことは、データと過去のパターンの両方から明らかです。 特に、金利がインフレ率を上回るスピードで上昇し、金の投資需要や金価格が困難に直面した場合はなおさらです。 貴金属専門アナリストであるMetals Focusが 集計し、鉱業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルが発表したデータでは、世界の金宝飾品とハイテク機器への需要は、今年新しい記録を作ってはいません。 実際、2013年の記録的なピークからかなりの差で出遅れています。しかし、繰り返しになりますが、a)2013年に金価格は25%暴落していたこと。b)世界の金宝飾品と技術用需要は、コロナ危機以前の水準を、金地金の価格が史上最高値に近い、もしくはそれを超える水準で推移しているにもかかわらず回復していること。これは、リサイクルや再販による消費者市場からの供給を考慮したにもかかわらずです。 トロイオンスあたりの年間平均金価格。出所:BullionVault BullionVault 2023年には、宝飾品の需要に新たな逆風が吹くことは間違いないでしょう。特に、世界最大金消費国であるインドと中国において。 しかし、2022年に金地金が史上最高値付近で安定する中で、その需要は後退するどころか、コロナ危機から回復し、安定したものとなっています。 そして、世界最大の消費国である中国が「ゼロコロナ政策」を達成するために、移動規制をし続ける中でも安定しているのです。 もちろん保証されたものは何もありません。2023年に世界の金価格が急落することでアジアや世界の宝飾品の需要が落ち込むかもしれません。 しかし、歴史的なパターンと傾向から、このようなことが起こらないことは示唆されています。そのために、投資家やファンドマネージャーがポートフォリオ価値下落の保険を求めるのであれば、金地金がどのように機能するかを検討するべきでしょう。 歴史的にも証明されている投資を多様化するための手段として。 そして、すでにその効用は証明されているようです。