2019年の金価格:5人のアナリストの見通し
金市場の専門家が今年の金相場をどのように見ているのでしょうか。
ブリオンボールトのリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが、ここでパート1に続きここで解説しています。
年間を通じて上海黄金交易所のプレミアムを計算し、金のETFの資金の流入量を確認し、コメックスの先物・オプションのポジションの推移を追う作業を地道に続けて金市場を分析したとしても、必ずしも報われるものではありません。
今後12ヶ月の金、銀、プラチナ価格を正しく予想するのは簡単なことではありません。
たとえアナリストがその予想に自信を持っていたとしても、株式市場、原油市場、債券市場で働いているアナリスト同様に、金融機関で働いている場合は、その企業の公式な見解に主要な点では従わざるを得ないのです。
個人投資家にはこのような柵はありません。個人投資家にとって、投資資金は個人の資金であり、誰に気兼ねをすることもないはずです。
それでは、アナリストの人々の2019年の予想を見てみましょう。
ドイツのコメルツ銀行は上昇すると予想し、オーストラリアのマッコーリーは下がると予想しています。
この両社は、他のアナリストのように、地金市場を動かす同様の要因を指摘しています。
しかし異なるのは、この両社がその要因がどのように変化すると見ているかです。
「貴金属価格は2019年に上昇するだろう。」とコメルツ銀行は述べ、「主に、米連邦準備制度の利上げが終了することによる米国ドル安が要因です。」と続けています。
「しかし、米国の経済活動が活発であることや米連邦準備制度が利上げを続けることは、米国ドルの上昇を促し、ドル建ての商品は米国株や債券市場に率いられることとなる。」とマッコーリーは予想しています。
そして、中国商工銀行が資本参加しているICBCスタンダードバンクは、ほぼ同じ見方をしています。
「米連邦準備制度が利上げを継続する中で、2019年に米国において経済成長が続き、生産性が増加をすることで、金価格は下げる。」としています。
しかし、先は必ずしもICBCスタンダードバンクの見方の全てではありません。それは、米国ドルは過去6年間で5年間上昇していることから、すでに「ピークへ達している」と見ているためです。
そのために、金が上昇する可能性は少なくともドル建てにおいてはあると見ているのです。
「主な下落の要因について」とスタンダードチャータード銀行のSuki Cooper氏は先月ロンドンのギルドホールで行われたLBMAのセミナーで次のように語っています。
「長期的な米連邦準備制度による利上げサイクル、現物需要の弱さの広がり、ドル高、金利の上昇、投資家の興味の薄さ、金のETFからの資金の流出」
しかし、「上昇要因として、安全資産の需要」を挙げ、更に次のように続けていました。
「株価市場の低迷、米連邦準備制度による利上げサイクルが予想を下回る(インフレ率を下回る)は、米国ドル安を引き起こし、米長期金利を下げるだろう。」
この上昇要因の初期の傾向は、2018年後半に安全資産への需要の高まりにより、ドル建て金価格が上昇することを助けることとなりました。この間ドル建てではない資産、特に中国人民元は対ドル下げ続けています。
そのために、スタンダード・チャータード銀行は、よりICBCスタンダートバンクに近い金に強気な見方をしています。しかしSuki Cooper氏は金価格がどのような位置へと動くのかは予想をしていません。
HSBCのJames Steel氏もまた、先月のLBMAのセミナーで、価格を予想することは次のように述べて避けていました。
「私は将来を見通す水晶玉を持ち合わせていません。しかし2030年に世界がどのような風景を見せているのかを予想してみましょう。」とし、2030年における需要と供給の動きへ影響を与える主な要因について説明をしました。
「私のチームには素晴らしいエコノミストがいます。そして、彼らは2030年の興味深い情報をまとめ、これらを利用してその時点の金市場がどのようなものかを予想しました。」
最も興味深かったのは、HSBCの貴金属チームのアナリストは、新興国の経済成長に注目していたのでした。
金の最大消費国10カ国中の8カ国が現段階では新興国のカテゴリーに入っています。そして、これらの国の中流階級の人々がより豊かになることで、2030年の金の需要は増加しているであろうというものでした。
もし時間があれば、ぜひSteel氏の20分の講演をご覧になってみてください。
そのため、直近においては、これらの新興国の情勢に注意を向けると良いでしょう。それは、価格に直接な影響を与えないにしても、長期における価格へのサポートとなるはずだからです。
2030年の価格については述べることは難しいことはご理解いただけるでしょう。それは、2019年ですら十分に難しいのですから。
それでは、パート3では今年の価格の方向性について考察してみましょう。