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銀は2年連続の供給不足の予想ながら、銀価格は2022年に5%安と予想

銀の供給不足が数年続くことが予想されている。
著名アナリストは、銀の需要が記録的な水準に増加し、数年にわたる供給不足を予想しているものの、銀価格は2022年に5%下落することが予想している。
 
2021年は銀の供給と需要のバランスは2015年以来初めて供給不足で、2010年以来の最大のものになったと貴金属専門コンサルタント会社のMetals Focusが明らかとした。
 
「これは、しばらく続くであろう供給不足という市場の構造的変化の始まりであると考える」とMetals Focusの取締役であるPhilip Newman氏は、シルバーインスティチュートのために作成された最新の World Silver Survey 2022のローンチイベントで述べていた。
 
「しかし供給不足額は(需要総額と比較して)少ないものである中で、その需給バランスの今後の傾向としては、市場において重要な変化ではあるものの、全体を見る必要がある。」とNewman氏は解説していた。
 
「2021年と2022年の数字を単独で見るべきではなく、今回の数値の影響を弱めているそれ以前の供給過多の数値も含めて見るべきでだ。」と続けていた。
 
銀の需給バランス 出典元 Metals Focus
米国ドル建て 銀価格は、昨年1月には2013年以来の高値となる30ドル近くをつけ、2月初旬にはソーシャルメディアの「Reddit Crowd」が個人投資家に銀地金購入を促し「シルバー・スクィーズ」を起こし、5月にはインフレ率が25年ぶりの高水準となったためにインフレヘッジとしての需要からも高値をつけ、2021年には年間平均価格は前年比22%上昇し、25.14ドルを記録していた。
 
2021年の世界の銀需要は、19%急増して1億50万オンスと2015年以来最も高い水準を記録し、全ての需要分野で前年を上回るという1997年以来の稀な状況となっていた。
 
これは、パンデミック後の活動回復に後押しされただけでなく、各国政府が気候目標達成のために再生可能エネルギーを強化し、ソーラーパネルの使用が増加したこと、銀貨と銀地金の需要が36 %増と急増し、需要全体の28%となっていたことに牽引されていた。
 
「宝飾品と銀製品も、健全な伸びを記録した。」とMetals Focusは述べ、「経済が再開し消費者心理が改善し始めたことから、それぞれ21%と32%増加した。」と解説していた。
 
「とはいえ、ともにパンデミック前の水準には及ばず、長引く感染症被害と価格高騰を反映している。」と続けていた。
 
一方銀の供給は、ロックダウン後の再開と中南米の産出量が増加したことに牽引されて、2013年以来最大の鉱山生産高の年間成長率を記録したとのこと。最大の産出国のメキシコは、約2億オンスの産出という過去最大の規模となっっていたとし、2022年も同水準を予想すると、Metals Focusの鉱山産出の専門であるAdam Webb氏は述べていた。
 
銀のリサイクル量は、産業用スクラップの急増に牽引され、7%近く増加し、8年ぶりの高水準に達していた。
 
また、銀の供給量は、鉱山産出量の増加によって、2022年には更に3%増加すると予想されているものの、世界の銀需要は5%増加し、再び過去最高となるとMetals Focusは予想している。
 
銀価格の2022年予想 出典元 Matals Focus
 
「銀の消費量の約半分を占める産業用需要には、ウクライナ戦争をめぐる不確実性と世界的な景気後退の可能性がリスクとなるだろう。」ともNewman氏は先週のSilver Surveyローンチイベントで述べていた。
 
「価格の上昇要因としては、機関投資家の動向の方が重要だ。」とNewman氏は述べ、「価格に影響を与える要因としての現物需要は、価格を支えるサポートを提供するものの、上昇させることは少ない。」と価格動向に与える要因について説明していた。
 
2021年の機関投資家の動きはまちまちだったとMetals Focusは分析していたが、ソーシャルメディアに影響を受けた爆発的な投資家の動きもあり、前半に取引量および強気ポジションは急増していたが、プロの投資家は年末までにそのポジションを年初から77%以下に減少させていた。
 
銀価格は。ロシアによるウクライナへの侵攻に対する、主要国の経済制裁のニュースを受けて、今年3月初旬にトロイオンスあたり27ドル近くまで上昇していた。
 
その後、米国の速いペースの金利引き上げ観測と中国のCovid-19感染拡大に対する都市封鎖による景気停滞懸念から、ほぼその上げ幅を失っていた。
 
スイスの銀行で金地金のマーケットメーカーであるUBSのコモディティ・ストラテジストは、「金利上昇の見通しは、銀地金にとって引き続き逆風となるだろう」と考えている。
 
「このように、上値が抑えられている銀の価格は、投資家がよりアクティブな戦略をとるための機会を与える。」と続けている。
 
「今年後半に投資家が資金を流出することが予想されている。」と主要中央銀行の金利引き上げによってエネルギー費用高騰による高インフレが抑制されることを指摘した上で、Metals Focusもその分析に同意している。
 
「銀の価格は、旺盛な需要に支えられて、下値が限定されるものの、価格が下落することが予想されている。」と結論付けていた。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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