銀の太陽光発電向け需要が2024年までに40%減少
銀価格が下げる中、太陽光発電で使用される銀の量を節約する傾向は続くようです。
太陽光発電向け銀の需要は、2020年半ばには世界的に40%減少することが、最新のレポートで明らかとなりました。
そのレポートによると、世界の3大太陽光発電国の中国とインドと米国における太陽光発電需要はまちまちである中、世界の太陽光発電の累積導入量は、今日500GWから2030年には3倍強のの1600GWに増加すると予想されているものの、この業界からの銀需要の増加の見通しはないとのことです。
それは、コモディティ市場の分析をするCRU International LimitedのCRU Consulting部門が発表したこのレポートによると、技術の進化による銀の使用量を節約することが可能となり、同量の電力を生み出すために必要となる銀の量が減少する事からであるとのことです。
それは、2016年に太陽電池セルで使用する銀が平均130ミリグラムから、2028年には65ミリグラムへの節約が可能となるからとのこと。
「この銀使用量を節約する主な理由は銀価格である」とCRUは、ワシントンを拠点とした鉱山会社とそのユーザーの協会であるSilver Instituteのために準備されたレポートで述べています。
銀価格は史上最高値の50ドルに達する2年の間に2倍以上に上昇しました。この間、一つの太陽光発電のセルに使われていた銀は4.0グラムから2.5グラムへと減少したと、このコンサルタント会社は説明しています。
そして、銀価格がトロイオンスあたり31ドルから17ドルへ下げた2012年から2017年には、銀の使用量を節約するスピードは遅くなりました。しかし、この5年間に太陽光発電のセルで使われる銀の量は半減していたこともこのCRU のレポートでは述べられています。
銀の工業用需要の6分の1へと増加を続けている太陽光発電向け銀の需要は、2017年に新たな記録を更新していたことがトムソンロイターGFMSの分析で明らかとなっています。それは、2017年に前年から19%増の9410万オンス(2,926トン)へと達していました。
この増加幅は、GFMSによると、大部分は中国の太陽光発電のブームによるものとのことです。2017年の中国における太陽光発電向け銀の需要は、前年比55%増で、全世界の需要の増加率の24%をはるかに上回るものでした。
「もし中国の太陽光発電の需要が縮小すると、世界の銀の需要が減少する可能性がある」と、ドイツの主要貴金属鉱山会社のHeraeusが最近のレポートで述べています。
「例えば世界の太陽光発電の需要が10GW下げた場合、それは、1000万オンス弱の銀の需要が減少することになり、それは世界全体の銀の需要の1%にも及ぶものだ。」と続けています。
そして、主要貴金属コンサルタント会社のMetals Focusもまた、最新のレポートで中国国内の太陽光発電の需要が、2017年の53GWから今年は45GW へと減少することを予想しています。それは、中国政府の政策(FIT:Feed-in Tariff)の変更で、太陽光発電の18年の導入割当量に対する買取価格の引き下げ等が背景とのことです。
米国においても、トランプ政権の1974年通商法のエスケープ・クローズ(緊急輸入制限)によって、新たな関税を輸入された太陽光発電のセルやモジュールに課することからも、2018年から2021年の米国内の太陽光発電のペースを遅らせ、太陽光発電の需要も悪影響を受けることになると予想されています。
インドもまた、自国の「保護主義的」関税で太陽光発電の需要が不透明であるとMetals Focusは述べ、その需要は2018年の9.2GWの3分の1まで下げることを予想しています。
銀価格が2011年に達した史上最高値へと戻すのはあり得ないように見えるものの、太陽光発電業界のより性能を高め価格を下げる競争は高まっていることからも、太陽光発電で使用される銀の量の節約は今後も継続するとCRUは解説しています。
そのような中で、この銀需要の減少によるギャップは、電気自動車や他の輸送関連の需要が70%急増して7000万オンスへと2030年には達して埋められることになるであろうと、CRUはそのレポートで予想しています。