金融危機は予測できなかったのか
「なぜ、誰もこのようなことが起こる事を予測できなかったのですか?」これは、現在既に5年が経過している、金融危機が発生し14ヶ月後に英国女王が、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)を訪問した際に投げかけた有名な質問です。
ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、なぜ誰も予測しなかったのか、もしくは本当に予測しなかったのかについて解説しています。
Luis Garicano教授は、2008年11月に英国女王にLSEの7100万ポンドを費やして新設した学部建物を案内する際に、「全ての段階で、人々は他の人々が正しいことを行っていることに依存していたのです。」と答えたのでした。
英国のメディアは、このばかげた説明を笑い飛ばしたのでした。しかし、数日後、数ヵ月後、数年後に、経済の専門家は次のように答えたのでした。
「簡潔な答えは、多くの人は予測していたというものでしょう。」
- Garicano教授が、先の答えを弁護した翌週のガーディアン紙のインタビュー記事より
「多くの人々は危機が来るであろうことを予想していました。....しかし、誰もそれを信じたくなかったのです。」
- ブリティッシュ・アカデミーにおけるセミナーで、先の質問について討議した概要を伝える英国女王への公開された手紙より
「その答えはとてもシンプルで、誰もこのようなことが起こるとは信じなかったのです。」
- イングランド銀行のマーヴィン・キング総裁の2009年7月に行われたBBC Todayの講演より
多くの人々は何と単純で、しかし現実を受け入れようとしていなかったのでしょうか。
これらの有名な経済学者が人々に信じさせようとしたこととは異なり、事実大部分の人はこの危機が起こる事を予測していたのです。実際にこの質問を投げかけてみてください。多くの人々は予想していたと言う事でしょう。しかし、それに対して準備をしていなかったとも。もし多くの人々が準備をしていたら、このような危機にはならなかったことでしょう。それは、もしこれを防ぐことができる立場にいれば、金利を引き上げたり、取引内容を注意深く吟味するなどをし、これを防ぐ処置をしたことでしょうし、そうでない場合は、少なくともこの危機によって影響を受ける投資から引き上げていたことでしょう。
しかし、専門家の見解とは再び異なり、多くの人々ではなくてもこの危機が起こることは予測されていたはずです。そうでなければ、英国銀行のノーザンロックが破綻に瀕する5年前に金と銀価格が150%上昇することはなかったでしょう。2007年8月発行の、金投資を長年提唱しているMarc Faber氏のニュースレターにおける、世界経済に関する分析を見る限り、13の明確な要因から、2001年から2006年の間に、近い将来に金融危機が起こる事を警告しています。「米国の行き過ぎた金融緩和政策」とFaber氏は、グリーンスパンFRB議長のインターネット・バブルに対する金融政策を表現しています。この人工的な低金利政策が世界の考えられる資産のバブルを引き起こすであろうとも。
「最初の警告: 金価格が2倍以上になること」

この赤線は、クレジットクランチ(信用収縮)が起こった2007年8月9日です。その後、金融危機は急激に進み、このようなことが起こる事を信じていなかった人々は、9月14日に英国銀行ノーザンロックへと(預金を引き出すために)駆けつけたのでした。その前の5年間に、金と銀はそれぞれ価格を倍にしました。その後の5年間には、それぞれの価格は3倍となったのです。
そのため、早い時期に金投資を行った人々は賢明であった(もしくは運が良かった)といえるでしょう。金融危機以来、時折価格の調整が入ったとしても、金及び銀投資は確実に収益を上げてきました。
「2007年初頭に経済が悪化するであろうと予想しました。」2007年以来のブリオンボールトの顧客のジョンは語っています。「私は、Endowment(英国独特の不動産用基金)がありましたので、これを金投資に利用しました。」
ノーザン・ロックが見出しを飾った5年前に金を購入したフィリップは、「2004年以来個人及び公的債務の規模を憂慮していたのです。そして、この問題を解決するためには、中央銀行が紙幣を増刷し、通貨の価値を下げる以外にはないだろうと考えたのです。しかし、個人投資家が金をシンプルに購入できるブリオンボールトのサービスを知ったのは、2007年だったのです。」
「5年前に起きたことを考慮すると、この金融危機を理由に、より多くの個人投資家が金を買わなかったことが驚きです。」と2007年9月から顧客であるスペインに在住する英国人のArmand氏は述べています。
「私は、全てのことを憂っているのではありません。それは、金や銀を保有することが、金融市場が崩壊しつつある際、利用できる限られた選択肢であると考えるためです。そして、この崩壊時には、ハイパーインフレーションが起こるか、長い出口の見えない景気の停滞が起こるはずです。」
今日このような状況は、多くの人々が予想するものでしょう。ユーロ圏が債務問題を解決しようとあらゆる手段を講じている間、また、米国と英国が経済成長を促し、雇用状況を改善するために、様々な金融政策を導入しているにもかかわらず、経済指標はほとんど改善していません。中国経済もまた、日本の1990年来のバブル後の長引く不況を再現するかのような兆しを見せています。
英国のメディアの読者の投稿欄においては、貯蓄者がゼロ金利を嘆いている記事や、政治家が金融緩和で紙幣を増刷することを憂いている記事、またエコノミストやストラテジストがハイパーインフレーションの到来を予想する記事が多く見受けられます。金や銀を購入するのは、必ずしも限られた人々が行う懸命な投資方法では、もはやないのです。
この金融危機以降の5年間を見てみましょう。この危機が発生することを予想したと言った人々が、そのために何らかの措置を行ったでしょうか。それが、金もしくは銀を購入するといったことだったでしょうか。2007年以来の投資効果を見る限り、金及び銀への投資は、他を圧倒しています。しかし、投資家や貯蓄者にとっては、金投資は未だに一般的なものではありません。これは、おそらく誰もがこの危機がこのように長引くとは思わなかったためでしょう。
2012年9月11日のエコノミストの「Free Exchangeのブログ」からのコメントを次に引用します。
「私達は、中央銀行がその国のインフレーションを十分に管理できることを、多くの場合見てきました。(今日の)市場は、インフレーションが高まるという恐れがあることを表していません。」
エコノミストと金融市場が問題を見出していないのであれば、安心をして良いものなのでしょうか。かつて、金融危機を予測しなかった、もしくは信じなかった人々が、これらの人々ではなかったのでしょうか。
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