金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年6月30日)金相場、世界金融危機以来最大の半期の上昇率を記録

金価格は月曜日、1カ月ぶりの安値から反発し、6月末に上半期を終えるにあたり、米ドル建てで25%以上の上昇を記録しました。これは、約20年前の世界金融危機の始まり以来の大幅なものとなります。

同時に、米ドルは為替市場で3年ぶりの安値を更新し、2025年上半期で10%下落しました。これは、トランプ大統領の貿易、地政学、中央銀行の独立性、経済政策に対する投資家・企業の懸念が背景にあります。

金現物価格は、前週金曜日にロンドン午後3時のオークション価格で5月末以来の安値をつけた後、月曜日昼過ぎにはトロイオンスあたり0.2%上昇して3281ドル前後を推移していました。

「安全資産」とされる金は、今年前半で25.7%上昇し、これは世界金融危機が始まった2007年の下半期(7月〜12月)以来最大の半年間上昇率となります。

ドル建て金価格と半期ごとの価格の変化率(%) 出典元 ブリオンボールト

一方で、米ドルの価値を主要通貨と比較するドルインデックスは、月曜の取引で最大0.4%下落し、2022年3月以来の低水準を記録しました。

この結果、ドルの半年間での下落幅は10.1%となり、ニクソン大統領が金兌換を停止し、2年後にブレトン・ウッズ体制が完全に崩壊した1973年以来、最悪の下落率となりました。

オランダのING銀行の外国為替ストラテジストは、「ドルはトランプ2.0政権の気まぐれな政策の“サンドバッグ”となっている」と述べています。

また、三菱UFJフィナンシャル・グループのストラテジストは、「ドルをさらに弱める要因として、トランプ大統領の『美しい大型法案(One Big Beautiful Bill)』による財政赤字の急増が挙げられる」と指摘していました。

米上院では、2025年上半期最終日の6月30日に、トランプ大統領が提案する4.5兆ドル規模の減税法案に対する最終採決が行われる予定です。

米議会予算局(CBO)は前日の日曜日に、この「美しい大型法案」が今後10年間で3.3兆ドルの追加財政赤字を生むと予測しており、これはすでに今年見込まれている年間1.3兆ドルの赤字に上乗せされるものです。

また、外国製品への関税再導入に関するトランプ大統領の期限は7月9日に設定されていますが、米政府関係者は中国およびEUとの交渉が進展しており、カナダがデジタルサービス税を撤回したことで米ハイテク企業への圧力が和らぎ、同国との協議も「軌道に戻った」としています。また、インドの通商交渉団も、合意最終化のためにワシントン滞在を延長しています。

ワールド・ゴールド・カウンシルが行った中央銀行制作担当者への最新調査では、ある匿名の中央銀行準備資産マネージャーが「最近の関税関連の市場動向により、米ドルの安全資産としての地位に疑問が生じ、金の地位が強化された」と語っています。

記録的な95%の中央銀行関係者が「今後12カ月で世界の中央銀行による金保有量が増加する」と予測しており、自国の保有量も増えると考える回答者は過去最多の43%に達しています。

一方、ユーロ建てと英ポンド建ての金価格は月曜午前に横ばいとなり、5週間ぶりの安値であるトロイオンスあたり2795ユーロ、2392ポンドで推移しました。これは、年初来で外国為替市場でユーロが対ドルで12.5%、ポンドが9.1%上昇していることによるものです。

欧州およびアジアの株式市場は小幅に下落しましたが、米S&P500株価指数の先物は上昇し、先週の史上最高値をさらに上回る動きとなっています。アナリストたちはこれを「リスク選好の高まり」としています。

産業用途が中心の銀は、トロイオンスあたり0.1%下落し35.97ドルとなり、2025年上半期の上昇率は24.4%にとどまりました。

プラチナ(需要の3分の2は自動車触媒など産業用途)は1.5%上昇して1361ドルとなり、上半期の上昇率は49.1%と大幅なものとなっていました。

同じく自動車触媒向け需要が8割を超えるパラジウムも月曜日1.5%上昇し、1153ドルを記録。2025年上半期での上昇率は26.8%となっています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ