金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2024年5月13日)金価格は、米消費者物価指数の発表を待つ中、FRB高官のタカ派的コメントで、スタグフレーションの懸念があるものの3週ぶりの高さから下げる

金相場は、米連邦準備制度理事会(FRB)高官が2024年は政策金利を高く長く維持することを示唆し、今週発表される米国の重要なインフレデータを前に、スタグフレーションが再び注目される中で下落していました。
 
金現物価格は、先週ロンドンの世界指標ベースで3.4%上昇して過去3週間で最も高い終値となった後、月曜日ロンドン時間昼過ぎに1.0%下落し、トロイオンスあたり2348ドルとなっていました。
 
あるエコノミストはロイターの取材に対し、「今週の米消費者物価指数(CPI)データは、(金利)レンジとリスク資産に対する見方を打破する きっかけになる可能性がある」と述べていました。
 
「米国のデータが緩やかさを示し始めたとはいえ、インフレは依然として高止まりしており、スタグフレーションの懸念がある」とエコノミストは続けていました。
 
米労働統計局は水曜日に最新の米消費者物価指数(CPI)を発表する予定ですが、それによると、4月のヘッドラインインフレ率は前年同月比3.4%(3月は3.5%)に低下すると予想されています。ちなみに、3月CPIは2月より0.3ポイント上昇していました。
 
米国消費者物価指数とGDPの推移 出典元 セントルイス連銀
 
「私の基本的な見通しとは異なるが、インフレの進展が停滞、あるいは反転するようなことがあれば、将来の会合で 政策金利をさらに引き上げる必要があるかもしれないというリスクを、私は引き続き見ている」と、米政策金利を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)の常任投票メンバーであるミシェル・ボウマン連邦準備制度理事会(FRB)総裁は先週金曜日に述べていました。
 
「政策金利の引き下げが早すぎたりすると、インフレ率の反発を招き、長期的にインフレ率を2%に戻すためには、将来のさらなる政策金利の引き上げが必要となる可能性がある。」と続けていました。
 
ダラス連銀のロリー・ローガン総裁も、金曜日に開かれたルイジアナ銀行協会年次総会で、「今年ここまでの失望的なインフレ・データを考えると、 利下げを考えるのは時期尚早だ」と述べていました。
 
ミシガン大学が先週金曜日に発表したデータによると、米国の消費者態度指数は5月に6ヵ月ぶりの低水準に落ち込み、同調査による1年間のインフレ期待値は4月の3.2%から5月には3.5%に上昇していました。
 
一方、米商務省の初期推定によると、2024年第1四半期の米国内総生産は年率1.6%に減速し、2023年最終3ヵ月間の3.4%という高い成長率から減速していました。
 
鉱山業界のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、最新の金市場の解説の中で、「スタグフレーションが再び注目されている」と述べ、ここ数ヶ月で数回連続して上昇したインフレ率と経済成長率の低迷を指摘していました。
 
WGCは、S&P500、米国債、米国社債、米ドル指数などの金融資産の中で、金が1973年の第1四半期以来、最も高い年率平均調整後リターン(AAAR)を示しているとの調査結果を示し、「(スタグフレーションは)歴史的に金のリターンにとって最良の環境の一つである」と続けていました。
 
しかし、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先月、政策金利の決定発表後の記者会見で、「 私はStagもFlationも見えていない」とスタグフレーションの可能性を否定していいました。 同議長は、インフレ率と失業率がともに4%を下回っていることを指摘し、1970年代とは異なると述べていました。
 
ちなみにこのスタグフレーション下の当時は、インフレ率が5.5%から14.4%の範囲に上昇し、失業率が4.9%から8.2%の範囲に上昇していました。
 
欧州のインフレ率は金曜日に発表され、このインフレ率は先月、ヘッドライン・レートがわずか2.4%まで低下し、市場予想を下回っていました。
 
米中央銀行のタカ派的スタンスとは対照的に、欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は6月の利下げを示唆していました。 
 
ユーロ建てと英ポンド建ての金相場は、月曜日に1.2%下落し、トロイオンスあたり2175ユーロと1871ポンドとなっていました。
 
銀の価格は、主に工業用金属であり、年間需要の60%近くを工業用金属が占めていますが、金曜日の終値から1.1%下落し、28.34ドルとなっていました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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