金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2024年12月2日)フランスが財政赤字問題で「不信任」投票に直面し、ユーロ建て金価格が上昇

フランス政府が、財政赤字支出計画をめぐり「極右政党」の党首マリーヌ・ルペンによる「不信任案」投票に直面し、フランスの借入コストが史上初めてギリシャを上回ったことから、米ドル建てで取引されている金は、月曜日に1.0%の下落から若干回復する中で、ユーロ建てで金価格は1週間ぶりの高値に近づいていました。
 
それに対し、先週中国の長期借入コストは初めて日本の国債利回りを下回り、多くのアナリストが、世界第2位の経済大国である中国が、不動産暴落の重荷の下でデフレを回避するのに苦労していることからも、日本型の「失われた10年」になるかもしれないと警告していました。
 
月曜のアジア取引時間では、ドルインデックス(主要通貨に対するドルの価値を示す指標)が、先月の「トランプトレード」のピークを下回ったものの、0.5%上昇したことで、金のスポット価格はトロイオンスあたり30ドル近く下落し、2622ドルを一時つけていました。
 
しかし、その後金価格は下げ幅を削り2650ドルへと戻す一方、ユーロ建て金価格は、フランスの政治的緊張が高まる中、単一通貨の為替レートが11月の月間の下げ幅2.8%からさらに下げたことで、先週月曜日以来の高値となる2529ユーロをつけていました。
 
フランスとギリシャの10年物国債の利回りの差 出典元 セントルイス連銀
 
フランス10年物国債利回りは本日、年率2.90%と前週終値を下回り、昨年秋の12年ぶりの高水準からまだ0.5パーセンテージ・ポイント低い水準となっていました。
 
しかし、2010年から2013年にかけてのユーロ圏の債務危機で価格が暴落したギリシャの国債利回りも、価格が上昇するにつれてその水準まで低下し、ギリシャの借入コストは2年半ぶりの低水準近くまで下がり、先週初めて一時的に起こったフランス国債の利回りがギリシャ国債利回りを超えたことを月曜日も繰り返していました。
 
「フランスの政治的混乱は、ユーロ安とドル高をもたらし、金に対する圧力を維持している。」とStone xのRhona O'Conner氏は最新のレポートで述べていました。
 
「政治的な不安定さがあるのは確かだ」と別のアナリストはブルームバーグに語り、
「フランス国債は値下がりし、新規購入者に提示される利回りを押し上げ、同国による新規借り入れのコストを上昇させて、この状況を反映している。」とそのアナリストは続けていました。
 
「政情不安は不確実性を生む。しかし、より重要なのは、フランスが財政赤字を削減するために何をするかということだ。」と問いかけていました。
 
フランスの中央政府の税収と支出のギャップは、今年GDPの6.2%に達すると予測されており、欧州連合(EU)の公式上限である3%をはるかに超えています。
 
月曜日、ミシェル・バルニエ仏首相の脆弱な連立政権は、強硬右派の国民連合党の暗黙の支持に依存していますが、バルニエ政権の財政赤字削減を目的とした新予算案の電気税の引き上げと国民年金のインフレ率以下の引き上げの提案をめぐって、マリーヌ・ル・ペン国民連合党首が不信任投票を発動すると脅したため、ルペン党首にさらに譲歩していました。
 
「政府に対する不信任案は避けられないものではない」とルペン党首はラ・トリビューン紙のインタビューに答えていました。
 
「バルニエ首相が交渉に応じるだけでいい。」と続けていました。
 
しかし、バルニエ首相は月曜日に、憲法49.3条を発動し、議会の承認を得ることなく予算案を通過させることを選択していました。
 
月曜日にフランスの主要株価指数のCAC40指数は0.4%下落し、ドイツのダックス指数が0.9%上昇したのとは対照的となっていました。
 
ポンド建ての英国金価格は、11月に月間で1.6%下落した後、本日ロンドン時間昼過ぎにわずかに回復し、0.3%上昇して2086ポンドをつけていました。
 
中国では、上海黄金交易所の金価格は0.7%下落し1グラムあたり611円となり、ロンドン価格に対するディスカウントは2週間ぶりの安値となるトロイオンスあたり7ドルまで縮小していました。これは、ドナルド・トランプ次期大統領がBRICS諸国に対し、代替の世界通貨を作ったり優遇したりしないよう警告し、米国への輸出に100%の関税をかけると脅し、中国人民元は対ドルで3カ月ぶりの安値を付ける中でのことでした。
 
原油価格は、月曜日に中国の製造業の経済指標は、2か月連続で上昇し、また、イランがアレッポの反政府武装勢力に対する反撃でシリアを支援すると表明したことを受けて、中東情勢の緊張の高まりからも、前週の4.6%の下落幅を削っていました。
 
主に工業用途で需要の6割が工業用である銀の価格は、ロンドン時間昼過ぎまでに0.8%下落してトロイオンスあたり30.38ドルと前週終値から下げて推移していました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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