金価格ディリーレポート(2023年8月15日)堅調な米小売売上高と中国のサプライズ利下げ後、金は1900ドルを維持 2023年8月15日 火曜日 17:23 予想を上回る米小売売上高と中国の予想がされていなかった利下げが世界第二の経済大国の健全性への懸念を深めたことから、ドル建て金相場は一時1900ドルを下回り7週間ぶりの安値まで下落し、中国の金プレミアムは10ヶ月ぶりの高さまで上昇していました。 米国商務省が火曜日に発表した報告によると、米国の小売売上高は6月に0.3%であった後、先月は0.7%増加し、米国経済が力強さを維持していることを示していました。 ドル建て金価格は、2023年6月末以来の安値であるトロイオンスあたり1896ドルまで一時的に下落した後、心理的な水準である1900ドルを回復していました。 中国の中央銀行の人民銀行は、火曜日に7月の一連のデータ発表の1時間前に、主要政策金利を予想外に引き下げ、2020年以来の大幅な引き下げを実施しました。 キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジュリアン・エバンス=プリチャード氏は、「7月の主要な経済指標はすべて コンセンサス予想を下回り、ほとんどの指標が前月比で停滞しているか、ほとんど拡大していない」と述べていました。 世界株価は5週ぶりの低さで、欧州のストックス600種株価指数が0.7%下落し、アジア株は0.4%下落し、米株価の先物は市場開始時に下げることを示唆していました。 米国債の10年物利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借り入れの基準金利ですが、債券の売りに押され約4.23%と9ヵ月ぶりの高水準に上昇していました。 中国人民銀行(中央銀行)は、金融機関への融資に影響する1年物中期貸出金利を15ベーシスポイント引き下げ2.5%とし、2014年に開始されて以来の最低水準としていました。 一方、上海金取引所の金相場は、2週間ぶりの高さのグラムあたり456元を火曜日につける中で、ロンドンの世界指標を$43ドル上回り数か月ぶりの高いプレミアムを示し、先週の人民元建て価格が17%安だった2022年10月以来の高値の週平均36ドルからさらに上昇していました。 上海黄金交易所の金価格は、2023年の年初からの平均がロンドンの世界指標を16ドル以上上回っており、昨年の平均5ドルの約3倍となっています。 「中国のデフレは経済成長に対する警告のサインであり、 金の需要は供給を上回り続けるだろう。」とMKS PAMP社の中国地域ダイレクターのBernard Sin氏は述べていました。 一方、貴金属専門コンサルタント会社であるMetals Focus LtdのマネージングディレクターであるNikos Kavalis氏は、「中国の金需要の見通しは、かなり乏しいようだ。」と述べ、「素晴らしくもなく、悪くもない」と続けていました。 「しかし、 供給不足であることは確認している。」とブルームバーグが、政府が貴金属の輸入を抑制する可能性を報じているレポートで述べていました。 昨年9月、人民元が対ドルで15年ぶりの安値まで下落した際に課された金の輸入ライセンスの不足は、上海のプレミアムを1オンスあたり25ドルを超える6年ぶりの高値まで押し上げ、また、ロンドンと現地の価格差が激しく、中国の消費者の 金需要の後退を覆い隠していました。 本日、国家統計局(NBS)が発表したデータは、小売売上高と鉱工業生産の伸びが鈍化したことを示し、予想を大きく下回っていました。 中国当局はまた、若年失業率が2023年6月に記録的な水準に達した数週間後に、若年失業率のデータ公表を中止すると発表していました。 先週発表されたデータでは、消費者物価が2023年7月に2年以上ぶりの年間下落を記録したことや、貿易統計が予想を下回るなど、世界第2位の経済大国である中国の成長見通しに対する懸念がすでに高まっていた。 「 碧桂園( カントリー ・ ガーデン)のようなデベロッパーの財務上の問題が当面の住宅市場に重くのしかかりそうで、政策支援がすぐに強化されない限り、経済が景気後退に陥る現実的なリスクがある」とエバンス=プリチャード氏は述べていました。 中国最大の民間住宅建設会社であるカントリー・ガーデンは先週、国際債券の支払いが滞り、月曜日から少なくとも10社の社債の取引が停止されていました。 主要通貨と米国通貨の価値を示すドルインデックスは、4週連続で上昇して5週ぶりの高さに上昇後に、火曜日にその水準を維持していました。この間、中国人民元は11月4日以来の元安水準まで下落した後、主要国有銀行が自国通貨を買い支えるためにドルを売却する動きが見られたことから持ち直していました。 英国ポンド建て金地金価格は、本日発表された雇用統計がまちまちだったことが為替市場でポンドを下支えし、0.4%安の1498ポンドとなり、ユーロ建て金価格は0.3%安の1743ユーロとなっていました。 本日発表されたデータによると、英国の失業率は横ばいの4%という予想に反して4.2%に増加していました。 さらに、雇用者数の伸びも予想を下回り、7万5,000人増の予想に対して6万6,000人減となっていました。このように雇用創出が1年以上ぶりに減少したことは、労働市場の冷え込みを示唆していました。 しかし、ヘッドライン平均所得は前月比8.2%と2001年以来の高水準に急伸し、イングランド銀行の再利上げ観測が強まっていました。 CMEのFedWatchツールによると、9月に米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを一時停止するとのトレーダーの見方は、米小売売上高統計後の86.5%にそれ以前の89%から下げていました。