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金価格ディリーレポート(2023年7月31日)金価格が1940ドルのサポートラインから反発し、主要通貨建てで3ヶ月ぶりの月間上げ幅の中、日本円建ては史上最高値を更新

金地金価格は、前週米インフレデータがインフレの鈍化を示したことから、一部のアナリストが「強気のシグナル」と呼んだサポートラインのトロイオンスあたり1940ドルの水準から反発した後に、月曜日に上昇して、日本円建て史上最高値を更新する中、月間では主要通貨建てで3ヶ月ぶりの上げ幅をつける基調となっていました。
 
日本銀行(BOJ)が金曜日に金融政策の柔軟性を拡大することを発表して世界の金融市場を驚かせ、月曜日に長期金利が9年ぶりの高さまで上昇した後、日本円建て金価格は、世界3位の経済大国の通貨がさらに軟化したため、グラムあたり9023円と前日終値比1.5%上昇し、史上最高値を記録していました。
 
日本貴金属マーケット協会の池水雄一代表理事は、「10年物国債利回りが0.6%を超え、日銀が長期金利のさらなる上昇を抑制するために買い入れオペを通じて資金を供給していることから、円相場は142円台半ばまでさらに円安が進んでいる」と ツイートしていました。
 
ドル建て金相場は、先週1週間の下げ幅を0.1%縮小した後、月曜日の午後に0.5%上昇し、トロイオンスあたり1968ドル前後を推移していました。そこで、金は月末ベースで2.5%の上昇をつける基調であり、これは米国の地方銀行の破綻による銀行危機とともに価格が上昇した3月以来の大きさとなっていました。
 
金の主要通貨での月末価格チャート 出典元 LBMAとセントルイス連銀のデータからブリオンボールトが作成
 
金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は最新レポートの中で、「金は1940ドル付近にテクニカルサポートがあり、先週売られたにもかかわらずこの水準を維持したことから、米国経済の強さなどを織り込んだ上での反発は強気シグナルと見る向きもある」と述べていました。
 
金曜日に発表されたデータによると、エネルギー価格と食品価格を除いた、FRBがインフレデータとして重要視する個人消費支出(PCE)コア・デフレータは6月も減速を続け、前年比4.1%となっていました。前月5月のこの数値は年率4.6%でした。
 
これはほぼ2年ぶりの低水準であるものの、FRBが目標とする2%をはるかに上回っていました。
 
「米国のインフレ見通しはかなり明るい」と、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁は日曜日に CNBCのインタビューでコメントしていました。
 
一方、ユーロ建てで取引されている金も、ユーロ圏のインフレ率が7月に予想通り5.3%に低下したという最新のデータと第2四半期に経済が成長を取り戻したことが明らかになる中、ユーロが為替市場で強含んだにも関わらず、月曜日の午後には0.3%上昇し1783ユーロとなっていました。
 
そして月次ベースでは、ユーロ建て金相場は7月に1.2%上昇し、過去4カ月で最高の上昇率を記録していました。
 
「フランス、ドイツ、スペインの第2四半期のGDPの数字は、か なり勇気づけられるものだ」とラガルド欧州中央銀行総裁は日曜日にフランスの日刊紙ル・フィガロに語っていました。
 
月曜日に発表されたユーロ統計局の最新データでは、欧州中央銀行が1年間で合計4.25ポイントも借り入れコストを引き上げたにもかかわらず、ユーロ圏経済は第2四半期に0.3%成長し、過去最速のペースで回復した。
 
しかし、ラガルド総裁は、ECBが2023年9月の次回会合でどのような措置を講じるかについてはまだ決定していないと強調し、「インフレ率は目標(2%)に持続的に戻らなければならない」と述べていました。
 
英国ポンド建て金相場は月曜日に0.5%上昇の1533ポンドとなり、今週木曜日に開催されるイングランド銀行の政策決定会合を前に、月間で1.7%の上昇傾向となっていました。
 
日本に話を戻すと、日銀は先週金曜日にイールドカーブ・コントロールを緩和し、10年物国債利回りを目標である0%から0.5%ポイントの範囲内で変動させることを容認し、固定金利オペを通じて10年物国債を1%で買い入れることを提案していました。これは事実上、許容幅をさらに50ベーシスポイント拡大するものとなります。
 
しかし一方で日銀は、政策金利をマイナス0.1%に据え置いていました。日本は世界で唯一マイナス金利を維持している国で、その背景としてインフレ目標2%に落ち着くにはまだ時間がかかるためとしていましたが、日本のインフレ率は6月にすでに3.3%まで上昇したのでした。
 
日本国債の利回りは月曜日に急上昇し、10年物国債の基準利回りは9年ぶりの高水準となる0.61%まで上昇した後、日銀が予定外の3000億円(21億ドル)の5年から10年の国債購入を発表したため、0.59%まで下落していました。
 
日本円建て金価格は7月にすでに1.5%弱上昇しており、今年に入ってからは17.3%上昇と、他の主要通貨の年初からの上げ幅を少なくとも2倍の高さとなっています。
 
10年物米国債利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借入コストの基準金利であり、先週木曜日に米第2四半期のGDPなどの経済指標が予想を遥かに上回り急騰していた以来の高さの本日早朝の4%超の上昇分を失い、ロンドン時間昼過ぎに3.9%とほぼ前週終値の水準へと下げていました。
 
「金価格の上昇を復活させ、(ドル建て)価格を史上最高値に押し上げるには、 広範で長期的な景気縮小が必要だろう。」とJulius Baerのリサーチ主任のCarsten Menke氏は述べていました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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