金価格ディリーレポート(2022年8月18日)FOMCの議事録がより緩やかなペースのりあげを示唆し金は2週間ぶりの低値を維持
金相場は、7月の米連邦準備制度理事会(FRB)議事録の内容を見極め、トレーダーが9月の利上げ予想を調整する中、2週間ぶりの高値からじり高となっていました。この間、7月の欧州インフレ率は1997年のユーロ圏発足以来最高であったことが明らかとなっていました。
CMEの FedWatchツールによると、9月に75bpの利上げを行う確率は議事録発表前の52%から36.5%に低下し、50bpの利上げが60%以上の確率で行われる見通しとなっていました。
昨夜発表された7月26から27日に行われた 連邦公開市場委員会の議事録には、「金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれ、経済活動とインフレに対する累積的な政策調整の効果を評価しながら政策金利の引き上げペースを緩めることがある時点で適切になりそうだ」と記されていました。
証券会社StoneXグループのローナ・オコネル氏は、「おそらく重要なのは、『多くの参加者』が、政策転換と経済結果との間に長く変動するラグがあるため、委員会が過度に引き締まるリスクを懸念していることです。」と最新リポートで指摘していました。
「これは、9月に75ベーシスポイントではなく、50ベーシスポイントの引き上げを示唆するものと受け取られる可能性があります。」と続けていました。
金地金現物価格は、3営業日連続で下落し、前日に8月3日以来の安値をつけた後、ロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり1770ドルに0.3%上昇していました。前日の下げは、議事録で中央銀行がインフレ対策としてより金融政策を引き締める可能性があるとし、米ドルと米債券利回りが上昇したことからでした。
「インフレ率が委員会の目標を大幅に上回っていることから、参加者は最大限の雇用と物価の安定を促進するという委員会の立法命令を満たすために、政策スタンスをより引き締めることが必要であると判断した。」と議事録は述べていました。
ドルインデックス(米国の通貨の価値を主要通貨に対して示す指標)は、先週の水曜日に米国のインフレデータが予想より緩やかに上昇したことで下落した後、昨夜は上昇を再開していました。 そして本日更に上昇し、3週間ぶりの高値となっていました。
金利変動に非常に敏感な2年物国債利回りは議事録発表後に3.28%と2カ月ぶりの高水準に上昇し、主要通貨に対する米国の通貨価値の指標である10年物国債利回りは2.90%と1カ月ぶりの高水準に上昇していました。 そして木曜日の朝は、両方の国債利回りが若干さげていました。
FRBはこの日の会合で、基準金利を2カ月連続で75ベーシスポイント引き上げ、目標レンジを2.25%から2.5%とし、インフレ率が14.6%と高かった1980年代前半以来の速いペースで引き締めを実施していました。
本日発表されたユーロ統計局の最終報告によると、7月のユーロ圏の インフレ率は年率換算で8.9%となり、6月の8.6%から上昇していました。 これは、1997年にユーロ圏の記録が始まって以来、最高値となります。
欧州中央銀行(ECB)の運営委員は、本日ラトビアのTV3とのインタビューで、「ECBは利上げを継続する」と述べていました。
ラトビアの中央銀行を率いるカザクス氏は、ラトビアで20%を超えるインフレが起きていることを指摘し、「 インフレを放置する方が苦痛だ」とも述べていました。
欧州中央銀行(ECB)は7月の前回会合で、ユーロ圏のインフレに対処するため、2011年以来初めて金利を0%に引き上げています。
ノルウェーの中央銀行は木曜日、基準金利を半ポイント引き上げ1.75%とし、2012年3月以来の水準に戻していました。
一方、 国家統計局が昨日発表したデータによると、英国の7月のインフレ率は10.1%に急上昇し、40年以上ぶりに年間2桁の上昇を記録していました。
英国のインフレ率は、他のG7諸国やほとんどのヨーロッパ諸国よりも高いこととなります。
イングランド銀行は、今年の最終四半期に インフレ率が13%以上に上昇し、2023年の大部分まで高水準で推移すると予想していました。
ユーロ建ての金価格は1740ユーロと0.4%上昇し、ポンド建ての英国金価格は1467ポンドと前日と変わらずに推移しています。
欧州株式と米国株式先物は、欧州のストックス600指数が0.1%上昇し、米国株式指数先物が下落するなど、木曜日のロンドン午前中はは穏やかな動きとなっていました。
投資家が待ち望む次のビッグイベントは、8月25日から27日にかけてワイオミング州ジャクソンホールで開催される年次金融政策シンポジウムとなります。