金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2022年5月9日)金の投機家ポジションが3ヶ月ぶりの低さとなる中で金価格はパウエル議長のタカ派的コメント以来の下げ幅を拡大

金の投機家ポジションが3週連続でネットロングを減少し、世界の株式市場の更なる下落により、リスク回避のドル需要が為替市場で米国ドルを20年ぶりの高値に押し上げる中、金価格は下落していました。
 
金の現物価格は、月曜日ロンドン昼過ぎまでに1.3%下落してトロイオンスあたり1859ドルと下げていました。これは、4月中旬にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、5月に0.5%の利上げを行うことを明言し、先週水曜日の政策会議でそれが実現し、2000年5月以来の利上げとなったことが要因で、3週連続で続落してほぼ7%の下げとなっていました。
 
原油価格もまたロンドン時間昼過ぎまでに2%下げていました。これは、G7の諸国が、モスクワのウクライナ侵攻に対する制裁強化の一環として、ロシアからの原油輸入を阻止する計画に合意したことが背景となりました。
 
最新のデータでは、コメックス金先物・オプションのヘッジファンドやその他のレバレッジ投機家は、5月3日までの週で3週連続でロングポジションを減少させ、ショートポジションを増加させたことが明らかとなっていました。
 
米国の規制当局である商品先物取引委員会(CFTC)が収集・公表したデータによると、全体として、資金運用業者のネットロングポジションは、過去3ヶ月間で最も少なく、このネットポジションは過去3週間で43%縮小していました。
 
資金運用業者のコメックスの金先物・オプションのネットロングポジションと金価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
欧州株式市場は月曜日に下落幅を拡大し、汎欧州のストックス600は1.5%下落し、過去3週間では8.5%の下落となり、国債価格も再び下落し、米国債の年間利回りは3年半ぶりの高さまで上昇している。
 
「FRBがインフレ抑制のために 積極的な利上げを継続するのではないかという予想の中で、ドル高の持続と債券利回りの上昇が金の重荷になっている」とインドの証券会社Kotak Securities Ltdのコモディティ・リサーチ責任者のRavindra Rao氏は述べていました。
 
ドルインデックス(主要通貨に対する米国の通貨価値の指標)は、3週間前にパウエルが0.5%の利上げを示唆して以来、本日までで3%上昇しており、月曜日の朝には2002年以来の高値である104を記録していました。
 
政府だけでなく多くの金融や商業の借入コストの指標となる米10年債利回りは、2018年11月以来の高水準となる3.19%へと上昇していました。
 
一方、財務省債券価格が示唆する今後10年間の米国のインフレ率は、月曜日に2.9%に上昇し、3週間前に達した年率3.0%を超える過去最高値からはやや低下していました。
 
4月の米消費者物価指数(CPI)は水曜日に発表される予定ですが、エコノミストによると、消費者物価指数が8.1%となり、3月の41年ぶりの記録である8.5%から低下すると見ています。
 
金融・貴金属アナリスト、亀井幸一郎氏は「このところのドル高に関しては、他の主要中銀に比べFRBの引き締めスタンスが際立つこと。さらに米株式市場と米国債市場双方の不安定化という 異例の状況を映した側面もあるとみられる。」と最新のレポートで述べていました。
 
「投資家が運用リスクを避ける動きを強めていると見られ、リスク回避のドル(キャッシュ)需要の高まりがドル高に反映されている可能性がありそうだ。 」と続けていました。
 
米国株式市場の先物取引は、ダウが6週連続、S&P500とナスダック総合指数が5週目のマイナスを記録した後、市場前の取引で大きく下落していました。
 
そしてこの3週間で、主要株価指数はそれぞれ4.5%、6.1%、9.0%の下落を記録します。
 
また、 CFTCのデータでは、投機筋は先週、銀に対するネットロングポジションを43%減少させ、過去3週間の変化率は64%となっていました。
 
このように、銀は、金と同様に、資金運用業者のネットロングが3ヶ月で最も少なくなっています。
 
その結果、銀価格は前週末比2.5%下落のトロイオンスあたり21.80ドルとなり、金と銀の相対価格を示す金銀比は85を超え、約2年ぶりの高水準となっていました。
 
自動車触媒を中心とする工業用途で需要の3分の2を占めるプラチナ価格も2.6%下落のトロイオンスあたり938ドル、ロシアが第1位の採掘量を誇るパラジウム価格も1.5%下落のトロイオンスあたり2022ドルとなっていました。
 
英国政府は日曜日に、新たな制裁措置として、ロシアとベラルーシからのプラチナとパラジウムの輸入に対する関税を引き上げると発表していました。 
 
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ナチス・ドイツに勝利した記念に赤の広場で行われた軍事パレードで演説し、「今日、あなた方は我々の父、祖父、曾祖父たちが戦ったものを守っている」とウクライナ侵攻を正当化すべく述べていました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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