金価格ディリーレポート(2022年1月24日)FRBによる利上げとウクライナ警戒で世界株価が下げる中で金ETFが18年ぶりの一日の増加量を記録
金相場は、ロンドン時間昼過ぎに午前中の10ドルの上げ幅を失ったものの2ヶ月ぶりの高さを維持していました。
これは、前週の米株価の暴落を受けて世界の株式市場が下落し、ビットコインが過去最高値から半減し、ロシアとウクライナ情勢が緊迫する中で、世界最大の金ETFであるSPDRゴールドシェアが2004年の上場以来最大の1日の資金流入をしていました。
金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、日本貴金属協会の 最新のレポートで、「1日で過去5ヶ月間の流出分を取り戻した」と述べていました。
SPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)は金曜日に、昨年8月以来最も多くの残高へと増加し、木曜日の終値からさらに27.6トン増、その評価額は16億3000万ドル相当となっていました。
これは、2020年9月21日以来、世界最大の金ETFの1日の重量ベースでの最大の増加であり、米国ドルベースでは約18年前の上場以来最大の増加となっていました。
また、先週のGLDの総増加量32.3トンは、コロナ危機で世界株価が暴落した2020年3月26日の週以来の重量ベースでの週間の最大増加量でもありました。
「金の安定性が光る」と亀井氏は述べ、「FRBのタカ派的スタンス転換による余剰資金減少見通しの中で」いわゆる暗号資産であるビットコインが11月の過去最高値からドル建て価値の半分を失ったことと、金の堅固な価格水準を対比して結論づけています。
「最近の市場のボラティリティの急上昇、地政学的緊張の高まり、暗号資産の価格の低迷は、より安全な避難所としての 金の魅力を増加させた。」とブルームバーグから引用された金ストラテジストは同意していました。
金地金現物相場は、米長期金利がコロナ危機前の水準まで急騰した状態から後退を続ける中、2週連続の上昇を記録し、トロイオンスあたり1835ドルを超えて、ロンドン時間昼過ぎに週末の水準を維持して推移していました。
SPDRゴールドシェアは、2020年のコロナ危機時に278トン残高を増加させて、2004年に取引開始後最大の年間の資金の流入を記録後、昨年は重量ベースで2013年以来最大の年間流出量となる195トンの減少を記録していました。
モスクワの株式市場は月曜日の昼までに 7%以上下落し、為替市場ではロシアのルーブルが対ドルで14ヶ月ぶりの安値に急落していました。
欧州の株式も急落し、汎欧州のストックス欧州600指数は2.7%下落し、2営業日で6月以来の最大の下げ幅となる傾向で、インフレ高騰を理由に米連邦準備理事会(FRB)が2022年に金利を引き上げる観測が確実化される中で、先週のウォール街が暴落した基調を受け継いでいました。
米中央銀行の連邦公開市場委員会(FOMC)は火曜日に会合を開き、水曜日に政策を発表する予定ですが、3月までに利上げが行われると予想はほぼ皆無ではあります。
本日のニューヨーク市場開始を前に、米国株価指数先物は下落し、先週のハイテク株比率の高いナスダック総合指数が7.6%下落し、2020年3月に新型コロナウイルスのパンデミックが米国の金融市場を揺るがして以来の最大の下げ幅を記録し、優良株のS&P500指数も週間で5.7%下落という下げ基調を継続する傾向を示していました。
世界の株式を代表する指数で、先進国と新興国の株式で構成されるFTSE全世界指数もまた、4.2%下落して2020年10月以来の下げを記録していました。
時価総額最大の「デジタル資産」であるビットコインは、ロシアの中央銀行が、先週木曜日に世界最大の暗号採掘国の1つである同国の金融システムと環境にもたらす危険性を理由に、すべての暗号通貨の使用と作成の 全面禁止を提案したことも要因となり、週末に3万4000ドルを下回る、昨年11月の史上最高値から半値以下となる下げを見せていました。
一方、原油は、ロシアとウクライナ情勢悪化による供給途絶懸念と、 1週間前のイエメン反政府勢力の攻撃後、アラブ首長国連邦が湾岸諸国を標的としたフーシ派の弾道ミサイル2発を迎撃・破壊したと伝えられ、中東の緊張が高まったことからも上昇していました。
ブレント原油は0.4%上昇しバレルあたり88.22ドル、米ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WIT)原油は0.3%上昇し85.38ドルとなっていました。
6割が工業用需要である銀価格は、先週5.8%上昇した後に、本日トロイオンスあたり1.5%安の23.70ドルとなっていました。
金ETFとは対照的に、銀ETFの最大銘柄のiシェアーズシルバー・トラスト(NYSEArca: SLV)は先週、5週連続の残高減少を記録し、価格が2ヶ月ぶりの高さに上昇する中、17ヶ月ぶりの規模へと減少していました。
プラチナは、自動車触媒を中心とした工業用途が需要の3分の2を占めていますが、先週6%上昇した後、0.5%安のトロイオンスあたろ1028ドルへと下げていました。
この間ドルインデックス(主要通貨に対する米国の通貨価値の指標)は、0.4%上昇し、金曜の下げを取り戻していました。