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金価格ディリーレポート(2021年9月3日)インド、中国、中銀の金需要が増加する中で、金価格は一月ぶりの高さを維持

月曜日の金相場は、先週金曜日に達した一月ぶりの高さを維持して推移していました。
 
これは、米国がレイバー・デーで休場していたことからも取引薄の中であり、この間、主要消費市場である中国やインド、そして中央銀行の間で金の需要が改善しているも明らかとなっていました。
 
欧州の株式市場は、木曜日に行われるユーロ圏の中央銀行の政策決定会合を前に、過去最高値付近まで上昇していました。
 
日本では、新型コロナウィルス感染拡大対応が後手後手に回ったことで 支持率を大幅に下げていた菅義偉首相の退陣により、自民党が衆議院を制する可能性が高くなったことから、日経平均は1.8%上昇していました。
 
日本貴金属マーケット協会の代表理事の池水雄一氏は、「ゴールド価格のもっとも強力なドライバーはFRBの金融政策を巡っての投資家の動きですが、インドや中国、そして最近ではドイツといった国々の個人投資家の現物の買い、そして中央銀行の買いがゴールドの価格を支える大きな要因となっています。」と述べていました。
 
そして、「先月のフラッシュクラッシュが一瞬にして終わり、その後はそれ以上の上げとなったのはまさにその証明と考えてもよいでしょう。」と続けています。
 
インドの商務省によると、世界第2位の地金消費国であるインドの8月の金輸入量は、 前年同月比で約2倍となり、5カ月ぶりの高水準となっていました。 
 
インドの金輸入の推移 出典元 インド商務省
 
本日の金現物価格は、金曜日発表の8月の 米雇用統計が予想を大幅に下回ったことを受けて一時1833ドルまで上昇し、6月中旬以来の高値を記録した後、ロンドン時間昼過ぎに0.1%安の1824ドルとなっていました。
 
NatWest Marketsのマクロ戦略責任者であるジョン・ブリッグス氏は、米国非農業部門雇用者数の報告により、米連邦準備制度理事会(FRB)が毎月1,200億ドルの債券を買い入れていることについて、「これまで議論されてきたテーパリングのスケジュールに 疑問を投げかけるものである」とコメントしていました。
 
ドル・インデックス(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は、先週金曜日に記録した1ヶ月ぶりの安値から今日は上昇していました。
 
米労働統計局の発表によると、世界最大の経済大国である米国の8月の時間当たり賃金は前月比0.6%上昇し、予想の0.3%から倍増し、年率4.3%に加速しましたが、雇用統計の結果を受けて、10年物物価連動国債(TIPS)の利回りは3ベーシスポイント上昇し、1週間ぶりの高水準となっていました。
 
金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は利回り上昇の背景として「賃金の上昇は潜在的な高インフレを連想させ、例外的な物価上昇は一過性のものだというFRBの主張に疑問を抱かせた。」と指摘していました。
 
一方、上海黄金交易所の金価格は、ロンドンに対するプレミアムを示し続けており、月曜日にはトロイオンスあたり4ドルまで上昇していました。これは、金の最大の消費市場である中国への金輸入の動機づけともなるプレミアムが先週平均で2.5ドルであったことから上昇をしていたこととなるものの、Covid-19以前の平均であった9ドルは未だ大きく割る水準でもありました。
 
上海黄金交易所におけるロンドン受け渡し金価格との差と金価格の推移 出典元 SGEとLBMAのデータからブリオンボールトが作成
 
金消費国第2位のインドは、8月に 121トンの金を輸入したことが新しいデータで明らかになりましたが、これは、健全な小売需要、製造業の増加、そして米国、香港、中国への宝飾品の輸出が活発化したことによるものと、金鉱会社のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のインドにおけるシニアアナリストの Mukesh Kumar氏は解説していました。
 
これは、金価格が2020年8月の史上最高値であるトロイオンスあたり2075ドルから、8月初旬に約12%下落したことによるもので、前年同期の63トンと比較してもほぼ倍増と言えます。
 
またWGCのデータによると、中央銀行は夏にも 金準備を積み増しており、ブラジルの41.8トンの購入を筆頭に、6月に63.1トン追加した後、7月には30.1トンを購入していました。
 
そして、WGCの金の需給レポートによると、2021年上半期に中央銀行が購入した量は333トン以上で、5年平均を39%、10年平均の29%を上回っています。
 
WGCのEMEA担当シニアアナリスト、Krishan Gopaul氏は「中央銀行の純購入量は年間でプラスになるという予想をWGCは維持しており、2020年よりも大幅に高いレベルになる可能性が高まっている」と語っていました。
 
月曜日、英国とユーロの投資家向けの金価格は、ポンドと単一通貨ユーロの両方が対米ドルの強含んでいた金曜日からその傾向が緩和されたために、それぞれトロイオンスあたり1318ポンドと1537ユーロで横ばいで推移していました。
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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