金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年9月27日)米長期金利が上昇する中、恒大集団債務問題懸念は中国の需要を増加させ、金価格は堅調に推移


本日金価格は、トロイオンスあたり1750ドルで堅調に推移しています。


 


これは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定者による発言を前に、債券市場で欧米の長期金利が再び上昇に転じたために、ロンドン時間早朝の上昇分を失った後で、この間中国では、不動産大手の恒大集団の債務不履行リスクを回避するために、金の現物需要が4ヶ月ぶりの強さを見せていました。


 


ロンドンの金現物価格は、月曜日の朝に1760ドルまで上昇した後、1750ドルへ戻して安定して推移しています。


 


前週金価格は、木曜日に6週間ぶりの安値となる1738ドルを記録し、LBMA価格での週終値は4月以来の安値となっていました。これは、ベンチマークと見られている米国10年物国債利回りが数カ月ぶりの高さの1.45%を付けていたことからでした。


 


本日ロンドン時間月曜の朝にはさらに上昇して1.48%となり、6月末以来の高水準となっていました。


 


スイスの精製・金融グループであるMKS Pampsの金属部門戦略責任者であるNicky Shiels氏は、「金を動かしているのは他の市場だ」と述べ、世界的な利回り上昇を指摘していました。


 


10年物国債利回りは、先週の米連邦準備制度理事会(FRB)の タカ派的なコメントで、7月中旬から数ヶ月間レンジ内の動きとなっていたレンジの上限を突破し、1.40%を超えていました。


 


10年債利回りは、経済全体の借入コストと貸し手へのリターンを示す指標として広く知られていますが、金価格が史上最高値であるトロイオンスあたり2075ドルを記録した2020年8月には、0.55%まで低下していました。


 


金価格と米10年物国債の利回りの推移 出典元 セントルイス連銀


 


 


より大きな脅威は、10年債利回りが何らかのレジスタンスを割って、上昇をした場合です」とShiels氏は述べていました。


 


「そうなると、債券市場は最近の1.2%から1.4%のレンジから、1.4%から1.6%のレンジへと移行する可能性があり、金は直近のレンジではトロイオンスあたり1830ドルから1730ドルで取引されています。」


 


「その場合は金のレンジを下げることを意味するかもしれない」と続けていました。


 


一方、上海黄金交易所の金価格は月曜日もロンドンに対するプレミアムを示し、トロイオンスあたり12.30ドルまで上昇し、4ヶ月ぶりの高値を記録していました。


 


金地金の世界最大消費地である上海の金地金卸売市場では、新規輸入に対する平均的なインセンティブは先週9.60ドルと、世界の地金取引の中心地であるロンドン価格との差として典型的な歴史的プレミアムの水準となっていました。


 


 


ロンドン金価格と上海黄金交易所の金価格の差の推移 出典元 SGEとLBMAのデータを基にブリオンボールトが作成


 


 


上海黄金交易所のロンドンに対するプレミアムは、コロナ危機が発生した際に記録的なディスカウントを記録した後、今年は平均4.50ドルとなっていました。これは、今年の6月初旬に、中国政府による新たな アンチマネーロンダリング法が金を含む取引所に導入されるニュースで25ドルのディスカウントを付けたことからでした。


 


MKSの中華圏担当リージョナル・ディレクター、Bernard Sin氏は、「恒大集団債務問題により、投資家は金に移行し、 資本保全にシフトしている。」と述べ、中国の輸入量は「今月、急激に増加する可能性がある」と付け加えていました。


 


先週月曜日に世界の株式市場を揺るがした大規模は負債を抱える不動産大手の恒大集団は、先週、 社債の利息支払い期限を逃し、現在、債券保有者がデフォルトと呼べるまで30日間の猶予期間に入っているとのこと。


 


英国のガソリンスタンドの90%が 「パニック」による買い占めで空になったと報じられている中、本日の 英国のポンド建て金価格はロンドン昼過ぎに、先週のイングランド銀行による「 金利上昇のケースが強まったようだ」との発言を受けて、英ポンドが対ドルで堅調に推移したため、0.2%安のトロイオンスあたり1277ポンドとなっていました。


 


そこで、ベンチマークである英国国債利回りは、イングランド銀行の発言後、5月以来初めて 0.90%を超えていました。


 


欧州の投資家向けのユーロ建て金価格は0.1%上昇して1495ユーロとなっていました。これは、ドイツの連邦選挙では明確な勝利者が出ず、連立政権とリーダーが合意されるまでアンゲラ・メルケル氏が臨時首相を務めることになったため、ユーロは対ドルで上げ幅を失ったことからでした。


 


日曜日に行われた選挙の暫定結果では、中道左派の社会民主党(SPD)が25.7%の得票率を獲得し、アンゲラ・メルケル首相が率いるCDU/CSU保守派の24.1%を上回りました。


 


ドイツの国債利回りは2.5ヶ月ぶりの高水準から低下していました。これは、投資大手ブラックロック社の アナリストによると、「左翼党(Die Linke)」の不振により「左派連合は除外された」ことで、社会民主党、もしくはキリスト教民主・社会同盟による連立政権発足となることから、投資家の間では「いくらかの安堵感」が見られたことからのようです。


 


欧州の株式は、今週のパウエルFRB議長とイエレン米財務長官の議会証言を前に、ニューヨークの株式先物同様、ロンドン時間昼過ぎに、早朝の上げ幅を失っていました。


 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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