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金価格ディリーレポート(2021年8月23日)ジャクソンホール前に実質金利と株価が上昇する中で金が「意外にも」1800ドルを超える

金価格は、2週間ぶりにオンスあたり1800ドルを突破しました。
 
これは、木曜日に開催されるジャクソンホール中央銀行シンポジウムを前に、為替市場でドルが弱含み、世界の株式や商品が先週の急落を経て上昇する中のことでした。
 
金の現物価格は、ロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり25ドル近く上昇し、1805ドルに達し、先週の上昇幅を拡大していました。
 
しかし、ドルが先週の商品市場や株式市場での「リスクオフ」の流れの中で、2021年来の最高値を記録した後、本日0.3%以上下落したにもかかわらず、金は他の通貨建てでも急上昇し、ユーロ建てでは3週間ぶりの高値となる1537ユーロ、英国ポンド建てでは5週間ぶりの高値となる1318ポンドを記録していました。
 
金鉱業界のマーケティング団体のワールド・ゴールド・カウンシルのチーフ・マーケット・ストラテジストであるジョン・リード氏は、「過去1週間の実質利回りの動きを見ると、 金の回復力は少し意外だ」と述べ、米国物価連動国債(TIPS)の価格が急落し、新規購入者に提供する金利が上昇したことを指摘していました。
 
「おそらく、 短期的な売られすぎの状態からの調整が、金利よりも(金価格の)原動力になったことを示しているのだろう。」と続けていました。 
 
10年物TIPSの利回りは月曜日にさらに上昇して年率マイナス1.01%を超え、1ヶ月ぶりの高水準となっていました。 
 
昨年の夏は下げる中でマイナス1.0%を突破し、当時の最低記録を更新したことで、金価格は急上昇し、 2020年8月の金の史上最高値であるトロイオンスあたり2075ドルを記録した。
 
当時、金価格と10年TIPS利回りの相関関係はほぼ完全な逆相関でしたが、その関係は現在、 2年ぶりに弱まっていました。
 
金価格とTIPS(米国物価連動国債)の推移 出典元 セントルイス連銀
 
最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジの効いた投機家は、8月17日までの週に、金に対する強気のポジションを9%増やし、弱気のポジションを26ヶ月ぶりの水準から21%減らしていました。
 
この結果、資金有用業者のネットロングポジションは52%増加していました。
 
一方、やはり米国の商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、投機筋は銀に対する強気のポジションを同時期に18%減らし、同じ工業用貴金属であるプラチナに対するネットショートポジションを40%減らしたものの、ネットショートを3週連続で維持していました。
 
需要の60%を自動車排ガス触媒などの工業用に依存するプラチナは、先週3.4%下落した後、本日ロンドン昼過ぎまでに2.6%増の1023ドルとなっていました。この工業用メタルは先週木曜日に964ドルと2021年の底を打っていました。
 
銀の価格も本日急上昇し、先週の3.2%の下落の3分の2を取り除いて、月曜日の昼にロンドンでトロイオンスあたり23.55ドルに達していました。
 
原油価格は、アジア時間には5月21日以来の安値を記録しましたが、その後は7営業日連続の下げを止めて、ブレント原油は3.2%上昇してバレルあたり67.19ドルを付けていました。
 
アジアの株式市場も上昇し、香港のハンセン指数は、先週デルタ変異種の感染拡大や中国のハイテク企業への取り締まり強化により「弱気市場」に陥っっていましたが、本日反発して上昇していました。
 
そして、欧州株は先週2月以来の最悪下げ幅を記録後に、本日は上昇して、ストックス欧州600指数はロンドン時間昼過ぎまでに0.5%の上げ幅となっていました。
 
インドのムンバイを拠点とするブローカーAnand Rathi Sharesの商品アナリストJigar Trivedi氏は、「現在市場ではジャクソンホールシンポジウムと次回非農業部門雇用者数に焦点が当てられ、市場にとって非常に 重要なものとなるだろう。」と述べています。
 
先週金曜日にオンラインでの開催へと変更されたジャクソンホール会議におけるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言は、金曜日の朝に ライブストリーミングで公開されます。
 
前FRB議長で現財務長官のジャネット・イエレン氏は昨日、パウエル議長を 2期目の中央銀行総裁に推挙し、バイデン・ホワイトハウスの承認が得られれば2022年に就任することになっています。
 
ダラス連銀のロバート・カプラン総裁は、先の会議に先立って、もしデルタ問題が持続して経済の進展に支障をきたすようであれば、FRBは資産購入プログラムの縮小を早期に開始すべきであるとの 見解を調整することに前向きであると述べていました。
 
派生商品のプラットフォームであるサクソバンクのコモディティ・ストラテジスト、オーレ・ハンセン氏は、「市場はFOMC以降、ウイルスに関連して消費者心理が悪化したことで、FOMCがテーパリングのボタンを押す前に考え直すようになったと結論付けるかもしれない。」と述べています。
 
「この例は、先週ニュージーランドで見られており、同国ではCovid-19の感染者数が発生したことにより再びロックダウンが行われ、ニュージーランド準備銀行が予想されていた利上げを中止しているというものです。」
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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