金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年6月7日)イエレンがインフレは社会にはプラスと述べる中で、金は10ドルの下げを取り戻す

金価格はロンドン時間午前中の10ドルの下げを取り戻し上昇しています。
 
これは、市場の注目が先週の米国の雇用統計から、ジョー・バイデン大統領の歳出計画、ジャネット・イエレン財務長官の金利に関するコメント、そして今後の米国のインフレデータへと移っていると金融市場のトレーダーやアナリストが述べている中のことでした。
 
本日金現物価格は、月曜日午前中に0.5%下げてトロイオンスあたり1882ドルと下げていました。これは、先週金曜日に発表された米国の雇用統計が予想を下回ったことから、 50ドルの急落分の30ドルを取り戻して、1週間の下げ幅を0.7%に縮めた後のことでした。
 
ドル・インデックス(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は、2ヶ月連続で米国の雇用統計が予想よりも悪かったため、金曜日に大きく下げた後に、本日ロンドン時間昼過ぎまでに多少上昇していました。
 
今後の焦点となるのは、ドルと利回りが金曜日の下げを維持できるかどうか、バイデン大統領の歳出計画、 G7の最低法人税率合意に対する市場の反応です」と、デリバティブ・プラットフォームであるSaxo Bank最新のレポートでは分析されていました。
 
イエレン財務長官が、バイデン氏の4兆ドル規模の歳出計画がインフレを引き起こし、その結果金利が上昇する可能性があると述べたことで、政府や多くの金融機関、商業施設の借入コストの基準となる米国の10年物国債利回りは、先週の7週間ぶりの低水準から上昇していました。
 
イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「もし若干の金利上昇があったとしても、 社会的にもFRB的にもプラスになるだろう」と述べていました。
 
またイエレン議長は、土曜日にロンドンで開催されたG7財務相会合後の記者会見で、「インフレは見られるが、それが 恒久的なものだとは思わない」と述べていました。
 
消費者物価の主要指標は、4月までの12ヵ月間で4.2%上昇していました。5月の消費者物価指数は今週木曜日に発表される予定で、アナリストの予想は4.7%となっています。
 
金価格とインフレ率の推移  出典元 セントルイス連銀
 
オーストラリアの銀行、ANZのシニア・コモディティ・ストラテジスト、Daniel Hynes氏は、「米国のコア消費者物価指数は当面3%以上で推移すると予想しています。」と述べ、「これはインフレ期待を押し上げ、金価格の上昇をする可能性が高く、ANZの金評価モデルでは、的確価格をトロイオンスあたり2000ドルとしている。」と続けています。 
 
中国の輸入量が過去10年間で最も速いペースで増加した一方で、貿易黒字が市場予想を下回ったことから、アジアの株式市場ではまちまちでしたが、月曜日の昼過ぎに、汎欧州のストックス欧州600指数は0.1%上昇するなど、欧州株価はわずかに上昇していました。
 
ユーロ建ての金価格は、日曜日に行われた州議会選挙で、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が極右勢力からの挑戦を退ける中で、ロンドン時間昼過ぎに0.2%減のトロイオンスあたり1550ユーロを付けていました。
 
また、英国の金価格はトロイオンスあたり1331ポンドと前週終値から0.4%下落していました。この間、英国政府は「デルタ」型の新型コロナウイルスの発生で感染者数が増加する中で、6月21日のロックダウンの最終解除を遅らせることを「受け入れる用意がある」と述べていました。
 
一方、中国の金価格はロンドン価格を下回るディスカウントを続けており、先週水曜日に25ドルと1月初旬以来最大のディスカウントまで広げた後に、月曜日には20ドル弱までその差を縮めていました。
 
これは、先週中国における 新たな不正資金洗浄法と罰金が貴金属市場にも適用されるというニュースが報じられたことにより、金銀地金の第一消費市場である中国の卸売金価格は、世界的な基準価格であるロンドン決済価格を下回るディスカウントへとプレミアムから転じていたのでした。
 
貴金属精錬グループMKSの中華圏担当リージョナル・ディレクターのBernard Sin氏によると、新たに課せられた規制のためか、ディスカウントは50ドルにも達し、今後もさらに値引きが拡大する可能性があるという。
 
"広州では Covid-19の感染者数が急増し、この地域は完全にロックダウンされ、すべての金製造業者に影響が出ている」とSin氏は語っていました。
 
世界第2位の金地金消費国であるインドの金地金ディーラーは、これまでで最悪の新型コロナウイルス感染に見舞われてその規制の影響で小売需要が引き続き低迷しているため、先週も約9カ月ぶりに最大のディスカウントを記録していたとのこと。
 
ロイター通信によると、前週はトロイオンスあたり10ドルのディスカウントだったのに対し、先週は トロイオンスあたり最大12ドルのディスカウントが金地金ディーラーから提示されたと伝えていました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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