金価格ディリーレポート(2021年5月17日)インフレ予想率が急騰しコメックスで金強気ポジションが急増する中で、金は3ヶ月ぶりの高値へ 2021年5月17日 月曜日 19:12 金価格は、月曜日朝に3ヶ月を超える高値のトロイオンスあたり1855ドルを記録しました。 これは、米国債の実質金利が3ヶ月ぶりの低水準になり、その一方でアジアでは中国の最新の経済データがアナリストの予測よりも弱く、Covid-19による移動制限が再開されたことが背景となっていました。 そこで、金価格は月曜日ロンドン取引開始時に1.1%上昇し、2月10日以来の高値を記録し、先週の0.6%の上昇からさらなる上げを見せていましたが、ニューヨーク時間開始とともににトロイオンスあたり10ドル下落し、1845ドルを付けていました。 インフレ考慮後の米国債の実質金利はマイナス0.93%に低下し、それに対し今後10年間のインフレ率の予測値は年率2.55%と8年ぶりの高水準となっていました。 ストラテジストはロイターに対し、「インフレは短・中期的に 金の強力な推進力となるだろう」と語っています。 過去5年間、金価格は週単位では10年物TIPS利回り(実質金利)とほぼ 60%を超えて逆方向に動いています。 先週の金曜日、クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁は、「連邦準備制度の政策は 現在良い状態にあります。」と述べ、他の連銀の高官が繰り返している金融緩和政策へのコミットメントを繰り返していました。 「私たちが現在いるのは、予防接種を広く行き渡らせた回復の一部の始まりであり、私たちはもう少し待って、回復が続くのを待つしかないと思います。」 ANZのシニア・コモディティ・ストラテジストであるダニエル・ハインズ氏は、「投資家は、インフレ率の上昇によって(米連邦準備制度理事会の)金利が上昇することはないと確信しつつあります。」と述べ、それは「米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ圧力は一過性のものである可能性が高いというマントラを言い続けているからです。」とハインズ氏は説明していました。 先週末発表された最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジの効いた投機家は、5月11日までの1週間で、金に対する強気のポジションを12%増やし、弱気ポジションを5分の1以上減らしていました。 これにより、資金運用業者のネットロングポジションは45%増加し、1週間の増加率としては5週間ぶり、重量としては3ヶ月ぶりの大きさとなっていました。 また、米国の商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、投機筋は銀に対するネットロングポジションを重量で過去20週間で最大としていましたが、プラチナ価格に対するネットでのロングポジションを減らしていました。 主に工業用金属である銀の価格は本日ロンドン時間昼過ぎに、0.6%上昇してトロイオンスあたり27.57ドルとなり、プラチナは0.5%上昇して1オンスあたり1236ドルとなっていました。 本日アジア株価はまちまちである中で、欧州株価は下げて先週の下げ幅を広げていました。この間、本日中国国家統計局によって発表された世界第2位の経済大国である中国の4月の鉱工業生産が3月よりも緩やかに増加し、小売売上高が年間18%近く増加したものの予想を下回っていました。 そして、新型コロナウィルス感染抑制に成功していたシンガポールと台湾は、日曜日に新たな感染者が記録的な数で報告されたことを受けて、集会や移動に規制を設けていました。 日本でも緊急事態宣言は6都道府県に拡大し、「まん延防止等の重点措置」も8道県に拡大しています。 そのような中、日本の金価格は月曜日の朝、グラムあたり6,524円まで急騰し、医薬品メーカーのファイザーがワクチンの良好な臨床試験結果を発表した前夜の2020年11月8日以来の高値となっていました。 また、上海黄金交易所の金価格もグラムあたり385円まで上昇し、3ヶ月ぶりの高値となっていました。この間、金の最大の消費国である中国のロンドン価格との金価格プレミアムは先週の平均の10.5ドルから8ドルまで下げていました。 欧州の金価格もロンドン時間早朝に0.9%上昇してトロイオンスあたり1529ユーロとなり、2月10日以来の高値となっていましたが、本日昼過ぎには20ユーロの上昇のうち10ユーロは戻していました。 英国では、政府がイングランド、ウェールズ、スコットランドのほとんどの地域でロックダウンの緩和を進め、外国への旅行を一部解禁し、限られた人数での屋内で会うことを許可する中で、ポンド建ての金価格も1%近く上昇した後、上昇幅が半減し、トロイオンスあたり1317ポンドに達した後に、昼過ぎにその上げ幅を半分ほど失っていました。