金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年12月6日)中国の金需要が増加する中で、金ETFと金先物・オプションからの資金流出は続き、金はほぼ4週間ぶりの低い水準を推移

金価格は月曜日に前週の一月ぶりの低さを多少上回る水準で推移しています。 
 
この間、欧米株価が前週の新型コロナ変異種オミクロン型と米国の早期量的緩和縮小観測による急落から反発する中で、中国の中央銀行が流動性を高めると発表したにもかかわらず、アジアの株式が下落した一方で、世界最大の金消費国の中国における金の需要が増加していました。
 
金の現物価格は、政府や金融機関の借り入れコストの基準となる10年物米国債利回りが1.4%に向けて上昇したため、0.2%安のトロイオンスあたり1780ドルをロンドン昼過ぎに付けていました。
 
先週の金曜日、市場注目のまちまちとなった米雇用統計の結果を受けて投資家が米国株を買い控えたために米長期金利は2021年9月以来初めて1.4%を下回り、金価格は1%上昇して週間の下げ幅を0.5%と縮小させていました。
 
ちなみに、国債利回りは価格に反比例して動き、利回りの低下は金利を産まない金を保有する機会費用の削減を意味します。
 
Invescoのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジストであるKristina Hooper氏は、「投資家は今、金融政策がよりタカ派的になると期待していると思うが、それは歴史的にもくり返されているように、 ハイテク株に下降圧力をかけている。」と語っていました。
 
本日S&P500指数の先物は、米国市場が開場前のロンドン昼過ぎに、オミクロン型の症例が比較的軽度であるとの報告を受け、金曜日の暴落から反発していました。
 
しかし、日本を除くアジア太平洋地域のMSCI指数は約1%の下落となりましたが、欧州の株価は全般上昇し、欧州Stoxx600指数は月曜日に0.7%上昇して始まっていました。
 
それに対し中国の株価は、中央銀行が発表した預金準備率の引き下げに関するコメントよりも、中国の不動産会社の恒大集団のデフォルト(債務不履行)による影響を懸念して下落していました。
 
中国人民銀行はウェブサイトで、2021年12月15日から銀行の預金準備率を50ベーシスポイント引き下げると本日発表していました。
 
これは、中国の恒大集団の株価は、債務返済に十分な資金を確保できる保証はないと述べたことで20%急落し、タクシー配車アプリ等を運営する大手滴滴出行(DiDi)は先週、ニューヨーク株式上場からの撤退を発表し、中国企業の米国預託証券(ADR)が急落していました。
 
一方、金の世界最大の消費国である中国では、上海黄金交易所での価格がロンドン価格に対するプレミアムと需要の高まりが見られ、月曜日にはトロイオンスあたり10ドル以上に上昇し、新たな金輸入に対するインセンティブが高まっていました。
 
ロンドン受け渡し金現物価格と上海黄金交易所の金価格の差の推移 出典元 SGEとLBMAデータからブリオンボールトが作成
上海黄金交易所の金価格のロンドンに対するプレミアムは、Covid-19の初期に記録的なディスカウントを記録した後、今年はこれまで平均して4.64ドルとなっており、今年 6月初めには新たな不正資金洗浄法の規制強化の報道を受けて25ドルのディスカウントまで下落していました。
 
あるアナリストは、投資家に向けた最新のメモの中で、「デルタ波で大きな被害を受けたアジアは、当然のことながらより慎重になっており、今は、米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和縮小)の現実に加え、中国の 『繁栄の共有』や不動産業界とIT業界の苦難にも直面している」と述べています。
 
中国の金需要が増加しているのとは対照的に、金を裏付けとするETFの信託資金は先週、SPDRゴールドシェア(GLD)とiSharesゴールド( IAU)の両方で投資家の資金がネットで流出し、残高が減少していました。
 
GLDとIAUは先週、それぞれ0.85%と0.20%残高を失い、2021年11月に2021年6月以来の月間で資金の流入を記録した後に、それぞれ4週間と3週間ぶりの週間での資金の流出となっていました。
 
GLDとIAUを合わせた残高は、2020年9月に過去最高を記録後に17%減少し、重量にして300トン近く残高を減らしています。
 
また、週末に発表された最新のデータによると、コメックス金先物・オプションのヘッジファンドなどのレバレッジの効いた投機家は、11月30日締めの週にグループとして、金が史上最高値を記録した2020年8月以来の最大規模から2週連続で強気のポジションを減らしていました。この間、弱気ポジションはほぼ変わっていませんでした。
 
その結果、資金運用業者のネット・ロング・ポジションは12%減少し、前週の28%に加えて、4週間ぶりに最も低い水準となっていました。
 
また、同様に米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、資金運用業者は銀に対するネットロングポジションを2週連続で縮小し、プラチナ価格に対するネットロングポジションもまた、前週から99%と大幅に減らしていましたが、かろうじてネットショートへ転じるのを免れていました。
 
主に工業用金属である銀の価格は本日ロンドン時間昼過ぎに前週終値比0.8%下落してトロイオンスあたり22.32ドルと9週ぶりの低さで、同じく需要の3分の2が工業用であるプラチナの価格は前週から横ばいの936ドルと11週ぶりの低さを付けていました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ