金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年12月20日)金価格はオミクロン型懸念による株価下落とFOMC後の実質金利の下落で上昇基調へ

金価格はロンドン時間昼過ぎに、前週の上昇幅を維持して1800ドル前後を推移していました。
 
これは、債券市場の利回りがインフレ期待値をさらに下回り、急速に広がるオミクロン変異型で行われる移動規制による経済の減速懸念からも世界株価が下げる中のことでした。
 
金相場は、先週4週ぶりに週間で0.9%上昇し、本日はその上げ幅をほぼ維持してトロイオンスあたり1797ドルで横ばいで推移していました。
 
ドイツ銀行のストラテジスト、Jim Reid氏は、「オミクロンは、年末に向けた見通しを曇らせているため、今、市場にとって最大の問題の一つです。」と述べていました。
 
Stone Xの貴金属市場専門でEMEAとアジアの市場分析責任者のRhona O'Connell氏は、最新の2022年の市場展望の中で、「リスクヘッジが引き続き重要であるために、金は来年は再び軌道に乗ると見ている。」と述べています。
 
「インフレが一過性であることが証明されたとしても、実質金利はマイナスのままであり、これは現物金属を保有する機会費用を一掃するものです。」と続けていました。
 
インフレを考慮した10年物TIPS債が示唆する実質金利は、月曜日に小幅に低下し、名目債券利回りが年率1.40%以下で推移する中、2週間ぶりの低水準となるマイナス1.04%に低下し、長期インフレ予測の上昇を示唆していました。
 
金価格とTIPS債10年ものの利回りの推移 出典元 LBMAと米国財務省データからブリオンボールトが作成
 
先週発表された米連邦準備制度理事会(FRB)の 最新経済予測では、2022年の実質金利が対コアPCEインフレ率で-1.8%と、9月の-2.0%から上昇すると予測されていました。
 
米投資銀行ゴールドマン・サックスのエコノミストは、共和党のジョー・マンチン上院議員が日曜日に民主党のジョー・バイデン大統領による 2兆ドルの税・歳出計画を拒否したことを受け、経済成長予測を引き下げていました。
 
「29兆ドル以上の驚異的な負債と、ガソリンや食料品店、光熱費など、すべての勤勉なアメリカ人に 実害のあるインフレ税で、終わりの見えないリスクを取ることはできない」と、マンチン議員は述べていました。
 
ドルインデックス(主要通貨に対する米国の通貨価値の指標)は、先週金曜日に0.7%上昇した後、月曜日には狭いレンジで取引されていました。
 
一方、アジア株の下落に続き、欧州の株式市場は、欧州ストックス600指数が月曜日の朝一時2.6%まで下落した後、1.7%の下げまで取り戻していたものの、この3週間で最大の下げ幅を記録していました。
 
一方、ユーロ建ての金価格は、オランダがEU諸国で初めて全国的なロックダウンを再開し、ドイツ政府が週末に旅行制限を強化し、アイルランドがパブやレストランの閉店時間を午後8時にしたことから、0.2%下落しトロイオンスあたり1597ユーロとなっっていました。
 
英国の保健大臣は、クリスマス前にイングランドで移動規制を導入することを 否定せず、「より慎重になるべき時だ」と日曜日にBBCの番組で語っていました。
 
そこで、先週のイングランド銀行の3年ぶりの利上げにも関わらずポンドが大きく下落し、ポンドが対ドルで2020年12月以来の低い為替レートを記録したことから、月曜日昼過ぎに英国ポンド建て金価格は0.4%上昇しトロイオンスあたり1364ポンドへと女癒傷していました。
 
一方、上海黄金交易所の金価格はロンドンに対して引き続きプレミアムを示していましたが、中国の中央銀行がコロナウイルスの流行最中であったる2020年4月以来初めて基準貸出金利を引き下げたことで人民元がドルに対して弱含み、月曜日に新規輸入のインセンティブとしてトロイオンスあたり7ドルまで下げていました。
 
金地金の最大消費国の中国の金価格は、先週ロンドンに対して平均9ドルのプレミアムと歴史的水準を推移していました。
 
一方、金消費国第5位のトルコの通貨リラは、トルコのエルドアン大統領が、インフレ率が年間20%を超えているにもかかわらず、金利引き下げを継続すると約束したことから、月曜日に再び過去最低水準まで暴落していました。
 
トルコ中央銀行は、エルドアン大統領からの強い政治的圧力を受け、9月以降、相次いで利下げを行っていました。
 
これに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー総裁は金曜日、「FRBが3月に債券購入を終了した『直後』に利上げが正当化される可能性がある」と述べていました。
 
また、「中央銀行は「『驚くほど高い』インフレに対応するために、早ければ夏にも 保有債券の削減を始めるべきだ。」とも述べていました。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ