金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年11月15日)FRB関係者とイエレン財務長官がインフレは「一時的」との見方を変えない中で、金価格が数ヶ月ぶりの高値を維持

本日金相場はロンドン昼過ぎに、主要通貨で数カ月ぶりの高値を維持していました。
 
これは、先週の米国のインフレデータを受けてのことながら、今月量的緩和縮小開始が発表されたにもかかわらず、金融刺激策と流動性が米連邦準備制度理事会のバランスシートを膨らませ続け、来年には9兆ドルに達する見込みである中でのことでした。
 
今日の金現物価格は、前日終値から0.2%上昇して1868ドルと5ヶ月ぶりの高値をつけていました。これは、前週5月以来の週間の上昇率の2.6%を記録した後のことでした。
 
ソシエテジェネラルのストラテジストは、「FRBが経済を支援しつつ、インフレ率の上昇を放置するという新たなコミットメントを示したことで、我々は(金価格の)予想を 上方修正した」と述べていました。
 
そして、「2022年第1四半期の金価格は平均1950ドルになると予想している。」としていました。
 
ミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は日曜日、インフレ率の急騰についての質問に答えて、「非常に深刻に受け止める必要がある」と述べていました。
 
「しかし、私の考えでは、痛みが本物であっても、一時的な要因に過剰反応しないようにする必要があると思います」と続けていました。
 
また同日、イエレン財務長官は、バイデン大統領の支持率が低迷し、民主党が巨額の予算を投じる経済政策をめぐって揉めている中、インフレについて質問され、「この インフレの原因がパンデミックにあることを認識することが重要だ」と述べていました。
 
先週発表された労働省のデータによると、10月までの12ヶ月間に 消費者物価指数は6.2%上昇し、1990年後半以来の最速ペースとなっていました。
 
債券市場が今後10年間に期待するインフレ率を示す10年物ブレークイーブンインフレ率は、金曜日に2.73%まで上昇した後、月曜日の朝には2.72%を推移し、このデータシリーズの2006年の高値にほぼ一致しています。
 
金価格とブレークイーブンインフレ率 出典元 セントルイス連銀
 
「金融アドバイザーであるLibertas Wealth Management GroupのAdam Koos氏は、「米連邦準備制度理事会(FRB)と米国政府からより多くの刺激策と流動性がもたらされれば、この短期的な上昇トレンドはいつでもすぐに軌道修正され、ドルは下落し、 金価格上昇のきっかけとなるだろう」と述べていました。
 
ドルを6つの通貨に対して測定するドルインデックスは、先週16ヶ月ぶりの高値を記録し、約5ヶ月ぶりの上げ幅を記録した後、月曜日の朝には多少弱含んでいました。
 
米連邦準備制度理事会(FRB)は今月初め、毎月1,200億ドルの大規模な債券購入プログラムの縮小を開始すると発表し、5月にプログラムが終了するまで毎月150億ドルずつ購入額を減らす計画です。
 
しかし、例え 大規模な資産購入プログラムを段階的に縮小したとしても、FRBのバランスシートは来年9兆ドルに達し、パンデミック発生以降の資産購入額は4.8兆ドルになると予想されています。
 
ドル建て金価格と米FRBの総資産(右軸) 出典元 セントルイス連銀
 
バイデン大統領は、道路、橋、水路などのインフラの整備を目的とした、過去10年で最大の1兆ドル規模の法案の作成に協力した連邦議会議員とともに、本日月曜日 署名式に参加することが発表されていました。
 
また本日は、台湾、貿易、気候変動、人権などをめぐって緊張が高まっている 中国の習近平国家主席とオンラインで会談する予定となっています。
 
ワシントン・ポストとABCニュースの世論調査によると、大統領の全体的な支持率は41%で、6月の50%、9月の44%から低下していました。そして、世論調査によると、アメリカ人全体の約半数が、 バイデン氏がインフレを加速させていると非難しているとのことです。
 
先週金曜日にミシガン大学が発表したデータによると、米国の消費者心理は過去10年間で最低の水準にまで下げていました。
 
ミシガン大学の消費者調査部門のチーフエコノミストであるリチャード・カーティン氏は、「インフレ率が上昇し、消費者の間では、急上昇したインフレによる日々の生活へのダメージを軽減するための 有効な政策がまだ行われていないという考えが広がっている」と述べ、今月の消費者心理の低下を指摘していました。
 
この間、ユーロ建て金価格は0.2%上昇し、トロイオンスあたり1632ユーロと、先週の3.7%上昇からさらに上昇し、1年ぶりの高値を記録していました。
 
英国ポンド建て金価格は前週3.3%上昇しトロイオンスあたり1392ドルと1月以来の高値を記録した後、本日1390ポンドと前日終値からほぼ横ばいとなっていました。
 
また、金の世界最大の消費国である中国本土へ精錬された金地金が合法的に入る唯一のルートである上海黄金交易所の本日の基準価格は、先週記録した5ヶ月ぶりの高値である1グラムあたり380円で安定して推移していました。
 
この現地価格の高さにより、中国の金価格と世界的に金の基準価格であるロンドン決済価格と比較して、先週の平均2.20ドルのプレミアムから、月曜日には0.70ドルのディスカウントとなっていました。
 
今年の平均は4.60ドルのプレミアムとなっており、昨年の記録的なコロナ危機の間に中国国内の移動制限等から金需要が減少したことによるディスカウントから改善していますが、コロナ危機以前に見られた平均9ドルのプレミアムには未だ至っていません。
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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