金価格ディリーレポート(2020年6月22日)実質金利がマイナスに落ち、Covid-19の一日の感染者数が記録となる中で、金は1ヶ月ぶりの高さへ
金価格が月曜日に一月ぶりの高さへ上昇し、直近の上値のトロイオンスあたり1767ドルを試そうとしているようです。
この間株式市場は、主要国の経済刺激策による経済活動再開期待と感染のさらなる世界的拡大及び第2波の懸念の間で綱引き状態の中、インフレを考慮した主要国の利回りのマイナス幅が拡大しつつあります。
また中国政府が香港への統制を強める「香港国家安全法」の概要が20日判明し、地政学リスの高まりも金をサポートしています。
ドル建て金相場は本日市場明けに一月ぶりの高さのトロイオンスあたり1758ドルまで上昇した後下げていたものの、昼過ぎに再び1763ドルを試しています。
ドルインデックスは、先週の4営業日連続の上昇から一転し下げています。
「この2営業日の金の上昇の主な原因は米国の実質長期金利がマイナス幅を広げていることだ。」と、インフレ考慮後の米国10年国債利回りに注目し、ワールド・ゴールド・カウンシルのマーケットストラティジスト主任のJohn Reade氏は述べています。
米国5年物と10年物国債の実質利回りは、ブルームバーグによると昨年同時期からほぼ1%下げて、本日それぞれ-0.77%と-0.64%となっています。
「実質利回りと金はほぼ完璧な負の相関関係となっている。」とReade氏は続けています。
世界保健機構(WHO)は、昨日一日の感染者数が18万3000人増と最多を記録したと発表しています。この内訳ではブラジルが54,771人と最多で、米国が36,617人、インドが15,400人と続いています。
金を裏付けとする上場投資信託は、新年からの残高増加量が過去のどの年よりも多くなっていますが、ヘッジファンドや投機筋は先週、コメックスの金先物・オプションの強気ポジションを増加させていました。
資金運用業者の強気ポジションは3週連続で減少し、2月のピークから55%下げていましたが、先週は増加に転じ、弱気ポジションは6週ぶりに減少していました。そのために、ネットロングポジションは、12ヶ月ぶりの低さから回復し、3週間ぶりの高さとなっていました。
また、コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも3週間ぶりの高さへと先週増加していました。
「私達の意見としては、金融緩和はドルの価値を結果的に下げることになると考えます。」とモーガン・スタンレーのウェルス・マネジメントの投資部門主任のLisa Shalett氏はコメントしています。
「米連銀の(低金利と資産購入プログラム)への強い意志は、金利を押し下げているのです。そのために、金が堅固であることは十分に理解できます。」と続けています。
プライベート・バンクの9行は9兆ドルの顧客資産を運用していますが、ポートフォリオに占める金の割合を増加させています。そして、モーガン・スタンレーはすでに3月末に金を含むコモディティを5%としています。
この競合会社のゴールドマン・サックスにおいては、先週金価格の3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の見通しをぞれぞれトロイオンスあたり200ドル上げて、1800ドル、1900ドル、2000ドルとしています。
「政策の不透明さを棚に置いておいたとしても、コロナ危機後の環境下でドルの価値が下がる懸念が、金価格を押上げている主な要因です。」とゴールドマン・サックスのアナリストはレポートで述べています。
ユーロ建て金価格は、市場開始直後に一月ぶりの高さへ上げた後に、ユーロ圏の国債価格が上昇し、利回りをマイナス領域へ押し下げる中で、0.3%下げてトロイオンスあたり1560ユーロを付けていました。これは、本日ドイツの連邦憲法裁判所の人事が行われ、より欧州中央銀行(ECB)に近い人々が就任したことで、ECBの量的金融緩和策の一部を違法とした先月の判決、そしてこの政策が適切に均整性テストが適用されていることを証明する猶予期間の3ヶ月後の判断がECB寄りになる可能性への安堵感もあった模様です。
ポンド建て金価格も、今朝ほど一月ぶりの高さを記録した後にロンドン時間昼過ぎに0.1%下げてトロイオンスあたり1411ポンドを付けていました。この間アンドリュー・ベイリー・イングランド銀行総裁は、現在実行している金融政策において、金利の引き上げは資産購入プログラムを終了する前にに行われることはないと述べていました。
その他貴金属においては、銀価格は1.36%上昇し、トロイオンスあたり17.87ドルを付け、金銀比価を一週間ぶりの低さの98以下に引き下げて銀の割安傾向を改善していました。
プラチナもまた、0.83%上回るトロイオンスあたり821ドルへ上昇していました。