金価格ディリーレポート(2020年2月24日)金価格がイタリアなどへの新型コロナウィルス感染拡大で急騰
金価格がドル建てで7年ぶりの高さ、そして他の主要通貨で史上最高値を付けています。
この背景は、新型コロナウィルス感染が世界規模で広がる懸念が高まり、世界株価が大きく急落をしていることからです。
アジア時間開始と共にドル建て金地金現物相場は、トロイオンスあたり1689ドルへと前週の週間の上昇としては6か月ぶりの上げ幅を見せた終値から2.8%上昇していました。これは、2013年2月以来の高さとなります。
アジアと欧州株価は、それとは対照的に急落していました。イタリア政府が新型コロナウィルス(Covid-19)感染の広がりが確認された北部地域の移動を禁止したことで、イタリア株価指数のFTSE-MIB指数は5.9%下落しています。
この間金価格はユーロ建て、英国ポンド建て、カナダドル建て、豪州ドル建てでは史上最高値を付け、スイスフランク建てと日本円建てでは最高値に数パーセンテージまで上昇しています。
工業用途需要の高い銀の価格は1.3%上昇してトロイオンスあたり18.74ドルとなっていますが、自動車の排ガス浄化触媒として使われるプラチナは、同様な用途で使われるパラジウムと共に急落し、トロイオンスあたり961ドルを付けています。
「金価格は、世界経済の停滞リスクを考えれば、当然の動きをしています。そして、中央銀行の緩和的金融政策がこの新たな動きの根底ともなっています。」と、カナダの金融グループのスコシアバンクの最新のレポートで言及しています。
「すでに弊社の2020年の平均金価格予想のトロイオンスあたり1600ドルを超えているものの」とコメックスと金ETFへの資金流入に注目し続けています。
先週末発表されたコメックスの資金運用業者のロングポジションは、先週金価格が7年ぶりの高さの1600ドルを超えた火曜日に、史上最高値を付けていました。
そして、ショートポジションは、2020年で2番目に高い水準まで上昇していました。しかし、ロングポジションからショートポジションを差し引いたネットロングポジションは、前週比24%増の5か月半ぶりの高さとなっていました。
本日世界第2位の金消費国インドにトランプ大統領は公式訪問をして、多くの観衆に迎えられていますが、インドルピー建てにおいても金は史上最高値を付けています。
韓国における感染者が760人を超え、7人の志望者が出る中で、同国政府が感染症の警戒レベルを最高の「深刻」に10年ぶりに引き上げ、同国の株価指数のKOSPIは、本日3.9%急落と2018年10月以来の大幅な下げを見せていました。
そのために、日本を除くアジアパシフィックの株価指数のMSCI AC Asia ex Japanは、2月初め以来の下げ幅の1.9%下げています。日本は天皇誕生日の祝日で休場となっています。
「新型コロナウィルスの世界規模の感染の広がりから、非常に市場は注意深くなってくることでしょう。」とINGのアジアパシフィックの主任のRobert Carnell氏は述べています。
「これは、すでにアジアの問題ではないのです。」
新型コロナウィルスの世界の死亡者は2,620人で、そのうちの30名を除き中国国内の感染ではあります。また、世界の感染者数は79,300人に達しています。
週末にサウジアラビアの首都リヤドで開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議では、新型肺炎の拡大について多くの時間を費やしたとのことですが、共同声明では「新型コロナウイルスの最近の流行を含め、世界経済のリスク監視を強化する」とし、財政出動を含む政策総動員することを採択しています。
また、この週末には日本銀行の黒田総裁が、新型コロナウィルスが日本経済に及ぼす影響へ対応が求められる場合には、日銀として必要な措置を取れるよう「万全を期していきたい」と述べたことが伝えられ、またムニューシン米財務長官は、中央銀行は可能な対応を行うだろうとも述べていました。
なお、CMEの米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)で決める政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が変更される可能性を確率で表した数値を表すFedWatchでは、来月17日と18日に行われる公開FOMCでの利下げを予想する率が前週金曜日の11%から24%と急激に増加し、年末までに利下げが行われる可能性は0%へと急落しています。