金価格ディリーレポート(2019年9月16日)サウジ原油施設への攻撃による地政学リスクの高まりと中国指標の悪化で金上昇
金価格が月曜日市場が明けるとともに1.6%上げのトロイオンスあたり1512ドルまで急騰しました。
これは、週末無人機によってサウジアラビア国営石油会社で世界最大の石油施設のサウジアラムコが攻撃を受けたことがきっかけとなりました。
この攻撃により、同国の産油量の約半分で世界の原油供給量の5%以上の生産が停止したことから、またイエメンの反政府武装組織フーシが犯行声明を出したものの、米国はこの組織を支援するイランが実行したと非難をしていることからも、原油価格は取引開始とともに20%急騰していました。
また、本日は中国の経済指標が発表され、鉱工業生産は17年半ぶりの低い水準で、小売売上高も予想を下回っていたことも要因となりました。
そこで、金価格は月曜日昼過ぎにはトロイオンスあたり1504ドルまで多少下げていますが、先週のひと月ぶりの低さからは20ドルほど上昇しています。この間、主要国債価格は取引開始時の急騰から多少落ち着きを取り戻しています。
銀価格は金価格の上げ幅を超えて月曜日朝に3%とトロイオンスあたり17.99ドルまで急騰後に20ペンスほど下げて推移しています。この上げ幅にもかかわらず、金銀比価は本日84を超え、3週間ぶりの高さとなっています。
「最大の問題は、今後の攻撃リスクに対してどのようなプリミアムを市場がつけるかということだろう。」と米国投資銀行のJ.P.Morganのアセットマネジメント部門のKerry Craig氏が述べています。
「中央銀行はこの高い原油価格によるインフレに注目すると思うが、すでにボラティリティの高まっている市場に地政学リスクが加わったことに気付かないことはないだろう。」と続けています。
投資家とトレーダーは今週火・水曜日の米連邦準備理事会に注目しており、ここでの0.25%の利下げを見込んでいますが、ドルインデックスはほぼ横ばいを続けています。この間、安全資産と見られている日本円とスイスフランクは上昇しており、原油産出国のノルウェークローネとカナダドルは上昇しています。
なお、先週の欧州中央銀行のマイナス金利拡大等を決定した金融政策発表後、ロイターのエコノミストの3分の1は、今週木曜日に行われる日本銀行の金融政策決定会合ではさらなる緩和策が発表されることを予想しています。
本日中国におけるロンドン金価格との差であるプレミアムは、通常を30%上回る約12ドルまで上昇していました。
本日英国ポンド建て金価格は、先週の6週間ぶりの低さから急騰しトロイオンスあたり1210ポンドを付けていました。このような中、本日ボリス・ジョンソン首相は来月末の英国のEU離脱のために、ジャン=クロード・ユンケル欧州委員長と初会合を行っています。
ユーロ建て金価格は、欧州株式が4営業日連続の上昇後本日全般下げる中で、前週末より1.3%上げのトロイオンスあたり1365ユーロまで一時上昇していました。
なお、本日の原油価格急騰の中で、エネルギー市場を落ち着かせるために米国が原油備蓄を放出することを述べた上で、ドナルド・トランプ大統領は、サウジアラビアの石油施設への無人機による攻撃はイランが関与していると述べ、それに対し米国は「臨戦態勢」ができていると述べていました。