金価格ディリレポート(2024年7月15日)米利回り逆転の中、トランプ大統領狙撃でも記録的な金価格に変化はなし 月曜日, 7/15/2024 16:01 週末に行われた政治集会での共和党候補暗殺未遂事件を受けて、アナリストが11月のホワイトハウス選挙でドナルド・トランプ前大統領の圧勝を予想する中、米ドル相場が上昇し、長期の債券相場が下落し、米国のイールドカーブが反転から外れる中、金価格はロンドン金地金市場の週間終値の過去最高値を上回り、序盤の下げから反発していました。 金現物相場は、先週ニューヨーク市場の終値から0.4%下落した後、更に0.4%上昇し、トロイオンスあたり2419ドルに達していました。前週金価格は、米連邦準備制度理事会(FRB)が米インフレ・データの軟化を受けて近く利下げを開始するとの思惑が広がる中、日々ロンドン午後3時につけられる世界指標で2406ドルと 金曜の基準価格の最高値を更新していました。 ジョー・バイデン現米大統領は、土曜日のトランプ大統領狙撃未遂事件を受け、「政治の温度を下げる」と米国人に冷静になるように呼びかけ、一方、トランプは共和党全国大会のためウィスコンシン州ミルウォーキーに移動中、国民的団結を呼びかけていました。 「これは恐ろしい出来事だ」とある投資ストラテジストは言う。しかし、「純粋に市場の観点からすれば、この出来事が短期的に劇的な影響を与えるとは考えていない」と述べていました。 いわゆる「デジタル通貨」であるビットコインは月曜日、さらに3.1%上昇し、2週間ぶりの高値となる62,830ドルをつけていました。識者は、トランプ氏がクリプトに親和的と見られ、このセクターを規制しようとする民主党の試みを批判する一方、米国の主要政党としては初めて、政治献金者からクリプト通貨の支払いを受け入れていることを指摘していました。 ある資産運用会社の投資担当者はロイターに、トランプ氏が最初の任期中にFRBに利下げを繰り返し要求していたことを思い出しながら、「(大統領に返り咲けば)トランプ氏がすぐにでも 利下げを推し進めることは明らかだと思います」と語っていました。 「(そのため)おそらく市場は長期金利の上昇を予想し始めるだろう」とインフレ上昇への期待を反映するからも、「短期金利の低下を予想する」と続けていました。 今日の30年債利回りは約7ベーシスポイント上昇し、年率4.47%となり、2年物国債は年率4.47%を下回っていました。 このイールドカーブのスティープ化により、30年債利回りは今年1月以来初めて2年債利回りを上回り、長期債利回りが短期債利回りを下回る、近い将来の景気後退を示す「逆イールドカーブ」が解消されていました。 カナダのトロント・ドミニオン銀行で外国為替・新興市場戦略のグローバル・ヘッドを務めるマーク・マコーミック氏は、「我々にとって、(銃撃事件の)ニュースはトランプ大統領が最有力候補であることを補強するものだ」と述べていました。 トランプ勝利で米国債の利回りは底堅く推移するため、「後半から2025年初頭にかけては ドル強気の姿勢を維持する」と続けていました。 ドル相場は当初上昇したが、ドル指数(主要通貨に対する米国の通貨価値を示す指標)はその後、金曜日の6週間ぶりの安値近くまで反落していました。 ヘリテージ財団のシンクタンクが作成した「 プロジェクト2025」が来週の党全国大会で承認される見込みであることから、トランプ大統領の2期目は減税、輸入関税の引き上げ、財政政策の緩和を伴うと予想されています。 2017年1月から2021年1月までのトランプ大統領の最初の大統領執務室在任期間中、米ドル指数は外国為替価値の10.6%を失い、多くの商業借入金利の基準である10年債利回りは、コロナ危機の間、世界最大の経済を支えるために連邦準備制度理事会(FRB)がオーバーナイト政策金利を引き下げたため、半分以上になっていました。 それに対し、米連邦準備制度理事会が長期間高い政策金利を維持という観測からもドルインデックスは今年に入って2.7%上昇し、10年債利回りはほぼ9.0%まで上昇しています。 欧州株式市場は下落し、主要株式市場がほぼ全て下げる中で、ロンドンの昼過ぎまでに汎欧州ストックス600は0.4%下落していました。 それは、アジア株式市場の下げ傾向を受け継ぐもので、この市場の動きは、トランプ大統領が11月に勝利した場合、さらなる輸入関税の対象となる中国の国内総生産(GDP)データが、世界第2位の経済大国である中国の第2四半期の成長率は4.7%にとどまり、予想の5.1%増を下回り、第1四半期の5.3%増を下回ったことを受けてのものでした。 中国共産党のトップが北京に集まり、5年ごとに開催される第3回全人代が開かれる中、本日中国国家統計局が発表した新築住宅価格が過去9年間で最も速いペースで下落し、前年同期比4.5%減で、小売売上高は2022年12月以来のスローペースでの増加となっていました。 上海金取引所の金価格は本日、1グラムあたり564円と下げ幅を拡大し、引き続きロンドンに対するプレミアムを示したものの、週平均が17ドルと1年ぶりの低水準に落ち込んだことから、輸入業者にはオンスあたり11ドルのインセンティブと下げていました。 今年の上海の平均プレミアムは35ドルとなっていますが、これは年初の中国の需要の急増を反映しており、新規の地金輸入のインセンティブは1月に49ドルまで上昇していました。 一方、ユーロ建て金価格は0.2%上昇し、トロイオンスあたり2216ユーロと3週間ぶりの高値となり、英国ポンド建て金価格は0.4%上昇しトロイオンスあたり1863ポンドとなっていました。 6割が工業用途である銀価格は、月曜日0.4%下げてトロイオンスあたり30.69ドルへと下げていました。また、プラチナ相場は1.3%下落の991.45ドル、姉妹品である、ガソリン車の排ガス浄化装置の工業用需要が8割を超えるパラジウム相場は0.1%下落の955ドルとなっていました。