金価格ディリレポート(2022年6月6日)FRBによる利上げとインフレの綱引きの中で、金ETFの残高は減少
本日金相場はロンドン時間昼過ぎに前週終値の水準で堅固に推移していました。
これは、欧州中央銀行が米国連邦準備制度理事会と共に、インフレを40年来の高水準から引き下げようと金融引き締めを行うとの観測が高まる中、金ETFの最大銘柄が5ヶ月ぶりに残高を減少させている中のことでした。
長期金利は、月曜日に債券市場で上昇し、欧米の株式市場は、5月の米雇用統計が予想を上回ったことを受けて、金曜日の急落から反発していました。
ドル建ての金現物価格は、金曜日の雇用統計後に1%下落した後、トロイオンスあたり1853ドルへと上昇していました。
一方、ユーロ建ての金相場は、木曜日のECB政策決定会合を前に、0.2%安の1724ユーロとなっていました。
先週は、SPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)とiShareゴールド(NYSEArca: IAU)の 金ETFから資金が流出して、金裏付けとするETF信託ファンドは残高を減少させていました。
また先週水曜日の5月末の段階では、金価格が月間平均で4.4%下落する中で、GLDは2.4%減、IAUは0.4%減と、12月以来初めて月間で残高を減少させていました。
日本貴金属マーケット協会の池水雄一代表理事は、「インフレ警戒感が金の下値を支えていると思う」とし、エネルギー価格の上昇が続く限り、ヘッドラインインフレ率は落ち着かないと予測しています。
「その結果、FRBのインフレ対策としての金利上げの動きと、インフレ、そしてそれに続く不景気の可能性との綱引きにより、ゴールドは1800-1900ドルの間、そして中心値としてこの1850の近辺での動きがまだしばらく続きそうです。」と続けています。
2022年年初から原油は60%近く上昇し、サウジアラビアが7月のアジアの買い手への販売価格を引き上げたことで、原油価格は月曜日にバレルあたり120ドル(3ヶ月ぶりの高値)を記録していました。
CME取引所の FedWatchツールによると、FRBが今年9月までに3回の0.5%の利上げを行うという予想は1週間前の36%から70%へと増加していました。
ロレッタ・メスター・クリーブランド連銀総裁は金曜日に、「9月の会合で(インフレが冷え込んでいるという)有力な証拠がなければ、その会合でも簡単に 50ベーシスポイントにすることができる」と述べていました。
同日、米労働統計局が発表した5月の 米非農業部門雇用者数は39万人増で、アナリストのコンセンサス予想の32万8000人を上回り、平均時給は予想を若干下回ったものの、前年比5.2%増となていました。
5月の米消費者物価指数は金曜日に発表され、4月の8.3%から8.2%に低下すると予想されています。
先週発表されたユーロ圏の年間インフレ率は8.1%と、19カ国からなる通貨同盟の20年の歴史の中で最も高い水準に加速し、ドイツの消費者物価は過去40年で最も速く上昇していました。
欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストであるフィリップ・レーン氏は、「(金融政策の)正常化は、25ベーシスポイントの単位で動くことに 焦点が置かれている」と語っていました。
「つまり、7月と9月の会合で25ベーシスポイントの引き上げが基準となるペースだ」と続けていました。
ECBは今週の会合で資産購入プログラムを 終了することを発表すると予想されています。
ユーロとの金利差が広がっているにもかかわらず、ドルインデックス(米国の通貨の価値を主要通貨に対して示す指標)は月曜日の朝、0.25%下落し、金曜日の上げ基調を拡大することができませんでした。
米国債の10年物利回りは、政府機関や多くの金融機関、企業の借入コストのベンチマークとなっており、5ベーシスポイント上昇して2.98%となり、2週間ぶりの高値をつけていました。
これとは対照的に、インフレ連動債(TIPS)の利回りは月曜日に下げて、ブレイクイーブン率(今後10年間の米国のインフレ率を示唆)が2.75%と1ヶ月ぶりの高さに上昇したことから、年率0.20%に下げていました。
本日、ボリス・ジョンソン英首相の信任投票が保守党議員の間で突然行われることになったにもかかわらず、為替市場で英国ポンドが米ドルに対して強含み、ポンド建て金価格は0.6%下落し、トロイオンスあたり1473ポンドとなりました。
金消費最大国の中国は、首都北京のレストランが屋内営業を再開し、2ヶ月間封鎖されていた上海の金融センターも先週からゆっくりと段階的に再開されるなど、さらに規制が緩和されていることが伝えられていました。
そこで、中国の需要増加観測からも、工業用途需要が6割である銀の価格は、5月に低迷した後本日1.6%上昇し22.31ドルとなり、金と銀の相対的な価格を示す金銀比価は、5月20日以来の低さの84以下まで銀の割安を解消していました。
プラチナもまた工業用途が需要の3分の2を占め、本日1.2%高の1034ドルとなり、パラジウムはガソリンエンジンからの排ガス浄化触媒需要が全体の5分の4以上を占めていることからも、2.4%高の2023ドルと急伸していました。