連邦準備制度理事会の量的緩和縮小のロードマップの行方
かつてバーナンキFRB議長が述べた金価格を急落させる方法と、ドルの価値を下落させる政策の類似点はあるのでしょうか。
ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、先週の連邦公開市場委員会(FOMC)が予想されていた量的緩和縮小を行なわなかったことの背景を、過去にバーナンキ議長が提言したデフレ打開策に触れ解説しています。
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私と同様に、全てのヘッジファンドのマネージャーは米連邦準備制度理事会が先週水曜日に量的緩和縮小を決定すると予想していました。
米国債は下げ、株価も下げ、金と銀の価格もまた量的緩和縮小の準備に入っていました。
米連邦準備制度理事会は量的緩和縮小のロードマップを明らかにし、バーナンキFRB議長は5月にそのように明言したのでした。しかし、それは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)では決定されませんでした。
「失業率は引き続き高いものである」と、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)のステートメントは言及し、バーナンキFRB議長もまた、FOMC後の記者会見で、その懸念を表しました。
この時点で、米国株価は史上最高値へと急騰しました。
「住宅ローンの金利は上昇している。」と米連邦準備制度理事会は述べ、「財政政策は経済成長を抑えている。そして、インフレーションは、委員会が望む水準以下となっている。」と続けています。
確かに2%のインフレターゲットには、程遠いものがあります。この数値は、1.3%へ今年の夏に下げ、過去5年間の平均年間消費者物価指数(CPI)は、過去20年の平均の半分以下となっています。そして、過去60年の平均と比較すると3分の1の水準です。
これは、デフレとも言えるものです。
そのため、月間850億ドルの資産買い入れを続けるべきだと決定したのです。これは、バーナンキFRB議長が2002年のスピーチで「電子上同等の(紙幣を刷る印刷機)」を回し続けるべきだ説明したように。
2002年に、当時経済学者であったバーナンキ現FRB議長は、金はトロイオンスあたり300ドルで売られていると述べた上で、もし金を作り出す錬金術が見つかれば、「金の価格はその発表と共に暴落するだろう」と説明したのです。
それから11年後の現在に早送りすると、FRB議長の先週の発表により、ドルの価値は即座に下落したのでした。それは、2002年にデフレ対策を提言した現FRB議長が、「米国ドルは金のように、供給が制限されている際にその価値が認められる」と述べていたことを証明するように。
金とは異なり、米国ドルはその製造において錬金術を必要としません。紙幣印刷機、もしくは「電子上の同等のもの」を回せばよいのです。そして、誰かがそれを管理することができれば、デフレは起こるはずがないのです。しかし、物価が下落しているために、連邦準備制度理事会が、通貨の価値よりもこの究極の方法を使うのであれば、(通貨)の量によって質(価値)は失われる事となるのです。そして、そこには必ずインフレが待ち受けています。
しかし、今デフレが近づいています。そのために、更に印刷機を回す、つまりは量的緩和を継続することが連邦準備制度理事会にとって残された道であるのです。
事実、量的緩和が終了した際、貴金属を保有する貯蓄者は喜ぶべきです。それは、量的緩和縮小が行なわれ、印刷機が止まる2~3年後に、貯蓄からの意味のあるリターンを得ることができるようになるのです。しかし、量的緩和縮小する間、もしくは量的緩和縮小を開始する前に、既に金・銀投資家は痛みを感じているのです。この痛みは、株や債券の市場にも広がっています。
それでは、先週の決定は市場の米連邦準備理事会へ向ける信頼にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。また、何れ金利をゼロから引き上げるであろうと信じている貯蓄者にとっては。バーナンキFRB議長は来年1月に任期を終えます。2014年に彼の後任としてFRB議長に就任するのは、更なる低金利と量的緩和を唱えるハト派であるジャネット・イエレン氏です。しかし、再びエコノミスト、トレーダー、金投資家が予想を誤った場合はどうでしょうか。それは、もしバーナンキFRB議長がイエレン氏が行なうように、量的緩和縮小を先延ばしにし、よりハト派のイエレン氏の政策が、バーナンキ議長がタカ派であるかののように見せるものであるとしたら。
9.5%上昇した銀価格を押し下げた、セントルイス連銀のブラード総裁のコメントは、米連邦準備制度理事会関係者が、連邦準備制度理事会の決定について48時間以内に異なる意見を述べたということから異例のことです。スタンダードバンクのFXのストラテジストのSteven Barrow氏は「連銀関係者は、量的緩和縮小が9月に行なわれるとは一度も言ってはおらず、常に数値(経済指標)が鍵を握っているとしていました。」と述べています。
しかし、「最初に量的緩和縮小について触れたバーナンキFRB議長の5月のスピーチ以来の米国債利回りの上昇は、連邦準備制度理事会に市場の過敏さを認識させることとなったのです。そして、市場が債券購入規模が縮小することを予想している際に、量的緩和縮小を行なわないといった、市場をもてあそぶような政策は、連邦準備理事会の信用を傷つけるリスクもあるはずです。」とBarrow氏は続けています。
著名なエコノミストの人々は、米連邦準備理事会に信頼できる無謀さ(大胆な政策)を要望しています。そして、それを得たかもしれませんが、この無謀さは信頼できないものへとなりつつあります。金と銀の投資家は、これから訪れる、数日、数週間、そして数ヶ月に及ぶ不安定な日々に備えるべきでしょう。そして、貴金属を保有しない投資家は、バーナンキFRB議長が長く続いたデフレとの戦いに打ち勝った際に直面することとなるインフレに備えることも考えるべきかもしれません。
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