英国王立難破船から引き上げたSilver Ingotでシルバーコイン鋳造
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今月22日に英国王立造幣局で発売される銀貨の鋳造に至るまでの経緯を紹介しています。
今週は少しマーケットからは離れた夢のある話題にしましょう。
70年以上前になる1941年、英国王立造幣局(The Royal Mint)は戦争のため在庫がほぼ底をつきつつあったシルバーをインドから緊急輸入しました。その輸送船SS Gairsoppaには莫大な量の銀塊、銑鉄、お茶が積まれており、英国海軍の護衛を受けながら航海していましたが、激しい嵐に襲われ、ゲルソパ号は船団 を離脱し、西アイルランドのガルウエイ港に緊急避難のため向かっていました。しかし2月17日、ドイツのUボート潜水艦に標的にされ、その魚雷によりたっ た20分で沈没、船員たちはゴムボートで避難しましたが、最後に生き残ったのはたった1人でした。
2010年1月に英国政府はこの難破船の探索と引き揚げする会社を2年契約で入札し、これを得たのが米国フロリダを本部とする「Odyssey Marine Exploration」というサルベージ会社でした。そして2011年9月に、探索を開始してわずか2ヶ月でこの船がアイルランドの海岸から約 460kmの沖、水深4700mの海底に沈んでいるのを発見しました。
オデッセイは2012年と2013年に2年間かけて2792本のシルバーインゴットを回収(約61トン)、これはゲルソパ号が沈んだ時に保険がかけられ ていた量の99%以上という驚異的な回収となりました。1億5000万ポンドもの価値のシルバーの発見は、過去の難破船からの貴金属の回収としてはまさに 最大かつ最深のものでありました。ちなみにこの発見された貨物の80%はOdysseyの取り分、残りの20%が英国財務省のものとなりました。
このゲルソパ号から回収されたシルバーの一部は、シルバーコインを鋳造するための材料として使われています。2万枚限定の1/4オンス銀貨で4月21日 発売となる予定です。造幣局は4月4日からもはや鋳造を開始しています。造幣局の取締役は「この信じられないような物語は王立造幣局の1000年の及ぶ歴史のまた新たな1ページとなるでしょう。この銀貨を長い時間かけてようやく世に出すことができるのは大変幸せなことです。予定していたよりも70年遅れましたが。」
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