米大統領選前に金投資のセンチメントが3年半ぶりの高水準へ
米大統領選前に金価格が下げる中、金投資家は金購入を進める。
欧米投資家の金投資へのセンチメントは、米大統領選を前の10月に、米国投資家に牽引され3年半ぶりの高い水準となっていました。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュはここでその解説をしています。
個人投資家の金投資傾向を、それぞれの月にネットで金を購入した顧客数とネットで金を売却した顧客数のバランスから算出している金投資家インデックスは、10月に56.8へと急上昇していました。これは、9月の55.0、そして英国のEU離脱後に最も上昇した8月の56.0も超えるものとなります。
この数値が50の場合は、その月に金をネットで購入した顧客数と売却をした顧客数が完璧に一致したことを意味します。金投資家インデックスは、2011年7月に71.7と最高値を、そして2014年から2015年の冬には50.5という最低値を記録していました。
10月の金価格の日々の平均は、ドルが強含んだことから9月から4.4%下げていました。そして、4月以来の低値のトロイオンスあたり1266ドルを記録していました。
これは、月間の下げとしては一年ぶりのものです。そこで、ブリオンボールトにおける購入者数が前月比34%を超えて上昇し、売却者数は16%下げていました。
地域的に見ると、最も大きく上昇していたのは米国で、この地域の購入者数と売却者数の割合は4対1となっていました。また、米国からの新規顧客は、2013年1月以来2番目に高く、前月比81%増と、年間平均を36%上回っていました。
こうして、米国の投資家は、金価格が下げる中、来週に控える米国大統領選を前に金の購入を進めていました。英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票においてもそうであったように、金融市場は大統領選の結果におけるリスクを軽く見ているのとは対象的な動きをしています。
トランプ氏が大統領に選出されることで金価格が急騰するリスク規模は、クリントン氏が選出されることで下落するリスクよりもはるかに大きいと考えています。
ブリオンボールトの銀投資家インデックスもまた、銀価格が月間平均において8%下げ、2013年9月以来の急落を見せる中、10月に57.2と9月の52.9から上昇していました。しかし、8月の過去3年間の最高水準の57.3は下回ることとなりました。
銀の8月末までの6ヶ月に渡る価格の上昇は、2006年以来の長期の価格の上げとなります。
重量においては、ブリオンボールトの顧客は、10月に10.7トン銀を増量し、総量を632トンとしています。
これは、2016年に4度目の月間10トンの増量となり、年初からは85トンの増加となります。そのため、2012年以来の毎年の年間総増量を既に上回っており、昨年の年間総増量の46%増となっています。
また、ブリオンボールトの顧客が保有する金の保有量も過去3年間で最も増加した8月の0.5トンに次ぐ0.4トンとなりました。
これにより、ブリオンボールトの顧客の金保有総量は史上最高の36.3トンと、過去12ヶ月で1.9トン増加し、それ以前の12ヶ月間(2014年11月~2015年10月)の57%増で、2013年5月を最終月とする12ヶ月間の増量に次ぐ量となりました。
確かに金価格が10月に4.4%下げたことは、金の投資を進める要因となりました。しかし、この傾向は、金価格の上昇の中でも続いています。
価格に繊細な傾向は続く中で、個人投資家の金の需要は、2012年から2015年の価格の下げの中でのバーゲンハンター的購入を超えて、継続しています。