金市場ニュース

危機時に見られる金価格の動向

金価格は、昨年夏の債務危機による価格上昇分をすっかり失ってしまったようです。これと同じことが起きたのはいつだったのでしょうか。

ブリオンボールトリサーチ主任のエィドリアン・アッシュは、今回の金価格下落の状況を過去の例と共に解説しています。

英国政府は、第二次世界大戦以来の膨大な債務を抱えながらも、10年物国債を1.9%という破格の利回りで発行することが可能です。米国政府に至っては、30年物国債において2.9%の年率利回りを支払っているのです。

インフレ率を上回る3%の利回りを、現在から2042年までに支払うことが必要になると考えるのでしょうか。

それにもかかわらず、債務に強いはずの金価格は下落を続けています。ギリシャがユーロ圏離脱することによる、欧州銀行システムの破綻の可能性があるにも関わらずです。日々7億ユーロがギリシャの銀行から引き出されていることが、先週主要メディアがレポートされていました。世界の株式市場もまた、今月7%その価値を失いました。商品市場全般は、先週の段階で過去11日のうち10日、その価格をを下げることとなりました。原油は、2月の価格から15%下げ、過去6ヶ月で最も低い水準の価格で取引が行われています。

しかし、金は明らかにこれらとは異なっています。インフレすることのない、ほぼ工業用としての用途がなく、破壊することができず、信用リスクがゼロの、過去5000年にわたり通貨として利用されてきた事実を、無視することはできないはずです。しかし、ドルとポンド建てにおいては、金価格は昨年夏に急騰する前の水準まで戻ってきています。

同様なようなことが2008年にリーマンブラザーズが破綻し、それに続くように多くのレバレッジ取引を行っていた金融機関が破綻した金融危機時にも起りました。この際、株式市場、商品市場と共に金も大きく価格を下げたのでした。

2008年10月半ばまでには、金は、ヘッジファンド会社であるベアスターンズが2007年半ばに破綻した際に起きた価格急騰の水準、トロイオンスあたり1000ドルまで戻したのです。

2011年から2012年もまた、欧州諸国の債務危機は金価格を押し上げました。しかし、世界的信用収縮が、金先物とオプション市場から資金を引き上げさせ、他の市場においてもポジション整理が行われることで、これまでの価格の上昇は、再度急騰前の水準まで戻されたのでした。

金価格は回復する可能性がありますとUBSのアナリストはブルームバーグTVで述べています。私もまたそれは正しいと考えています。しかし、金価格の近い将来の動向に関しては注意深くならざるを得ません。

「昨年9月もしくは10月に話した際に、私はトロイオンスあたり1800ドルと非常に強気でした。そして、現在金価格は1660ドルですが、相変わらず金の強気市場を信じています。」と12年間Business Insiderでコメンタリーをしているアナリストは2週間前に答えています。

この水準から更に120ドル下げている現在、彼は未だに強気市場を信じているのでしょうか。「アナリストや専門家が全て同意見であるとき、この予想を覆されることがしばしば起ります。」と元メリルリンチのチーフ・エコノミストで、現在はGluskin Sheffのインベストメント・ストラテジストのDavid Rosenberg氏は述べています。

金価格は、過去11年間継続して上昇を続けました。この間、バブル、バブルの崩壊、2度目のバブルなどを経験しました。そして、銀を含む他の資産を収益率において上回ってきました。こうして、米国人の4人に1人は、この事実を認識しています。

現在に至るまでは、金は投資先として最善のものでした。しかし、今後もこの傾向が続くどうかに関しては、誰も保証することはできないのです。

長期においては、2008年10月の金価格下落時が買う機会であったことが証明されました。ここで異なることは、2008年に33%価格を下げた際に見られた、膨大な量の金現物への需要です。それは、金貨を販売する店頭の前にできた長い列、金ETF保有量が急増したこと、ブリオンボールトにおける顧客よりの需要、経済ジャーナリストによる金に関する記事が後を絶たなかったことなどから当時は垣間見られました。

これらが、現在は見られないのです。金への需要は高まっていますが、急増していません。経済紙はスペインにおいて「金はリスク資産」であり、「その輝きを失った。」と語っているのです。もしかしたら、危機が明確でないのかもしれません。もしかしたら、金を危機時に購入する人々は既に購入してしまったのかもしれません。欧州危機が米国の格付け引き下げのきっかけとなった昨年夏や金融危機の起きた4年前に。

もしくは、状況はまだ悪くなる過程なのかも知れません。それは、2007年から2009年がそうであったように。ここで学んだことは、銀行は破綻するということであり、国債などの債務はその償還が保証されるものではなく、中央銀行は信用収縮を止めることはできないということであるはずです。

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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。



弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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