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中国の金需要とその背景について

中国の金貨、金地金、金の宝飾品の総需要量は、2014年の中国供給総量の60%となりました。この差はなぜなのでしょうか。

通常、中国の旧正月(春節)は、中国の庶民が最も金を購入する時期です。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュがここで、中国の金需要と供給量の差について考察し、中国の金需要について解説しています。

2月19日の旧正月を前に、公式に人民銀行から発行された今年の干支である羊を型どった金貨は発売とともに売り切れ、金メッキの偽物が出回っていることがレポートされていました。

また、欧米のメディアは、2013年の価格暴落時に、中国でバーゲンハンティング的に金の購入に殺到した中年の女性をステレオタイプ化して、中国のおばさんとも読んでいますが、アナリストは世界第2の経済国の彼等の動向に注目しています。それは、過去10年間の中国消費者による金貨、金地金、金宝飾品の需要は、全世界の需要の5分の1を占め、世界一のインドに次ぐ規模と急激に増加していたためです。

この需要の規模は、金相場に影響を与えるのでしょうか?

2014年の中国の実際の金需要は2013年の膨大な規模であったという説もあります。それは、金の輸出は中国では実質禁止されている中、中国の金鉱で産出された金は2007年以来、常に世界一の量を誇っています。それにもかかわらず、中国は世界でも最大の金輸入国の一つでもあります。中国の2014年の金産出量は、新たな史上最高記録を更新しました。そして、中国への輸入は、昨年秋から香港を通さずに直接上海へ入り始めています。

これらの金鉱産出量と輸入量は、昨年の小売の需要としてレポートされているものを33%以上上回っています。この差は、中国の銀行や投資ファンドが金を保有したと説明できるかもしれません。また、中央銀行である人民銀行は、2009年に75%金準備を増量したことを発表し、世界の金準備ランキングで第6位に躍り出て以来その金準備の総量を更新していないことからも、中央銀行が金準備を積み増していたとも説明できるかもしれません。

このように中国の金需要と供給が必ずしも一致しなかったことは初めてではありません。2014年の中国の金供給分の60%のみが、明らかとなっている金需要総量と一致するとしても、将来の金相場を予想する上では、正しいデータが何であるかは、大きな問題ではありません。それは、中国の需要は、世界の金相場に反応するのであって、相場を決定付けるものではないことが確かであるためです。

過去15年間に中国の消費者による金貨、金地金、金の宝飾品の需要は、金相場と無相関であるか、負の相関関係に動いていることが先のチャートで見ることができます。

特に過去2年間を見ると、2013年通年では、中国の金貨、金地金、金の宝飾品の需要は、重量で60%増で、史上最高となりました。しかし、価格においては人民元建て、米国ドル建て、ポンド建て、ユーロ建てにおいて30%減少しています。そして、入手できるデータによると、2014年の中国の金需要は前年比さらに大幅に減少し、それ以前の利益分を失わさせていたのでした。しかし、金相場はドル建てでは横這い状態で、人民元や他の通貨建てにおいては上昇していたのでした。

中国のバーゲンハンティング的需要は、その規模は大きかったとしても、価格によって動き、価格を決定するものではありません。その事実は、もし中国の実際の需要が、レポートされている以上に大きかったとしても変わらないのです。そして、中国の消費者や投資家や中央銀行は、金融危機後にピークを迎えた2011年~2012年以降、金相場を決定付ける欧米のファンドが売却し手放した金を、下落した金価格で購入し続けていました。

再び金融危機が引き起きたとしたら、もしくは新たな問題が起きた場合は、欧米の金へのセンチメントが変わり、欧米の在庫が尽きつつあることに気がつくことでしょう。地金専門市場は、世界最大の現物地金ロンドン市場がある英国からの金の輸出が急増するなど、このような現象が起きたことに気が付き、それ以降も時折ロンドンにおいて金地金が品薄になっていることに気がついていたのでした。

中国政府は、金地金の輸出禁止を続けています。それは、金は政治的にも、経済的にも重要な金属であるために、購入し長期保有すべきだという認識があるからです。これは、中国の消費者も同様です。特にもし下落時に購入できるのであれば、なおさらのことであるはずです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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