金市場ニュース

中国の金輸入の現状

中国は国内の金市場を10年前に自由化しました。そしてそれ以来、急激に増え続ける貯蓄の手段を多様化するために、金は有効な投資商品であることが証明されています。ここで、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、この現状を解説しています。

世界の急激に成長する経済においてそうであったように、予想以上の金需要の伸びは、政策立案者にとっては頭の痛いものでもあります。

中国の金輸入量は、世界一を誇る国内金産出量を超えることとなりました。そのため、中国の経済モデルの中心である貿易収支に、金は影響を与えるものとなりつつあるのです。

ワールドゴールドカウンシルの最新金需要傾向レポート上では、評価額ベースでは、中国の一般投資家の需要は、同国2011年の巨大なGDPの0.6%以上となっています。これは、インドの2.7%には劣りますが、中国のGDPが過去5年間に140%増加していることなどからも顕著な伸びということが分ります。

中国の金産出量が、2011年に361トンとなったこと、また、香港から中国への金輸入が428トンと、2010年の3倍以上となったことなどからも、その需要の急増ぶりは明らかです。

中国政府の反応はどのようなものでしょうか。ファイナンシャルタイムズは、先週金曜日に、中国人民銀行もまた、2011年の急増する需要の一因であるかもしれないとレポートしています。それは、同国第4四半期の需要とこの間の金輸入量及び金産出量の合計との差が、約130トンほどになるためです。

しかし、この差は金を輸入する銀行や企業の在庫であると考えるべきです。ベースメタルにおいては、中国国内へ供給する企業によって在庫が蓄えられることは一般的なものです。スタンダードバンクのコモディティチームは、15ヶ月間の製造需要と同等レベルの銀在庫を保有していると推定しています。そして、もし中国政府が輸入された金を備蓄しているとした場合、なぜ、中国の春節(旧正月)直前という、最も需要が高い時期に行うのでしょうか。

中国への金の輸入はその量の上限も、高い利率の関税も設定されていません。現在に至るまでは、貿易収支の一部でしかありませんでした。しかし、スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏は、中国の金を輸入する企業は、中国の春節(旧正月)以来、中国人民銀行のみならず国家外為管理局(State Administration of Foreign Exchange -SAFE)の許可が必要になったことを、日々発行するブルースレポートで先週紹介しています。そのために、関係企業が、「金の輸入に時間がかかる」と述べていることも伝えています。

この新たな規制は、金を輸入している企業にとっては不便なものであり、輸入手続きを遅らせるものであっても、輸入を禁止するものではありません。しかし、この新しい規制は、外貨準備高を減少させる要因への憂慮からと考えられるでしょう。世界一の金消費国であり、金を産出しないために、2011年には中国の2倍の金輸入を行ったインドにおいては、金の高い需要量は、外貨準備高を減少させる要因となっているのです。

国家外為管理局の規制のタイミングは、中国の春節(旧正月)の直後でした。これは、インドが金と銀の輸入関税を倍とした2週間後に行われました。そのため、中国政府の政策施行者は、中国一般投資家の急増する金需要が、その経常収支のバランスに与える影響を受忍したと考えることもできるでしょう。

インドの金への強い需要が、経常収支に与えた影響を先のチャートで見ることができます。モーガン・スタンレーが注目したように、インドは、この地域で経常収支が赤字となっている唯一の国です。金は、2011年にルピーの為替レートが対ドル15%下げたことからも影響を受けました。ルピー建ての金価格が史上最高値を記録したにもかかわらず、2011年にインドの金需要のドル建て評価額は、史上最高の460億ドルとなったことが、ワールドゴールドカウンシルのデータで明らかになっています。そして、これは同国の経常収支の赤字額の4分の3となっています。

「金の輸入が減少し、対ドルでルピーが安定することを希望します。」と、関税額を引き上げ、国内リサイクリングのロビー団体に、税務上の優遇措置を与えた後に、匿名でインド当局の一人がコメントしたことをIndia Todayが伝えています。中国の政策施行者は、より巧みに、金の輸入を微妙に鈍らせることを試みているのです。

中国政府のこの行動は、金の強気市場を信じる人々に、アジアの急激な需要の伸びは、滞るリスクを持ち合わせていることを再認識させることとなりました。それは、まず2005年以来西欧で見られるように、価格の高騰が新規購入を思いとどまらせるリスクとなること。そして、経常収支の黒字幅減少による国民総所得の伸びの停滞が、購入力を低めるというリスク。そして、アジアの貪欲なまでの金の需要、特に金市場の自由化以来、需要が毎年平均評価額で複数年にわたり36%の伸びを見せている国においては、政府の介入が恐らく脅威となると考えることができるでしょう。

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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。



弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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