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世界の警察、そして世界の資金供給先である米国の行方

米国の量的緩和による資金が、大学へ、そして新興国市場へ溢れ出ています。

先週金曜日の米国雇用統計をどのように解釈したでしょうか。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュは、ここで問いかけています。

金と銀価格は先週木曜日の下げを雇用統計発表後に取り戻すこととなりました。金と銀のチャートを一週間に設定すると、その様子をはっきり見ることができます。

しかし、8月の雇用統計は意味のあるものだったのでしょうか。失業率を下げて最大雇用の確保することは、物価安定と同様に、米連邦準備制度理事会(FRB)のマンデート(責務)です。そのため、市場が注目の来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で金融の量的緩和を縮小するかが決定されるかも知れませんが、バーナンキFRB議長は、7%の失業率を政策金利引き上げを決定する重要な条件の一つとしています。

先週の雇用統計で、8月の失業率が7.3%へと下がったことが明らかとなりました。しかし、米国の雇用環境の変化にも注目する必要があります。それは、多くの人々は就業することを諦めていることです。この際注目すべきことは、この就業を諦めた人々の多くは35歳以下であり、24歳未満が特に際立っています。

         年齢別の就業状況(人口比)

勤労年代の若者が社会保障で生活をせざるを得ない状況は良いものではありません。しかし、これらの若者が大学へと進学したのであれば問題は無いと一般的には考えられます。これらの若者がどちらの道へ進むかは、確実に予測することは難しいですが、大学進学が必ずしも良いものとは言い切れないでしょう。少なくとも、昨今の大学進学費用などの状況を考慮した場合は。しかし、政府は大学進学により社会の平等化が進むとして奨励しています。

大学進学による大学生の費用の膨大さは、雑誌ローリングストーンでも取り上げられており、米国の個人債務の規模の大きさに警笛を鳴らしています。こうして、高学歴者が増加し、就業開始年代が遅れることで、就業者と非就業者の比率は悪化することとなります。

経済学部の学生ですら、市場に大量の資金を流し込むことで、物価が上昇することは十分に予測できるでしょう。しかし、これに加えて個人債務が増加すれば、その状況は更に悪化することは、サブプライム住宅ローン危機でも十分に立証されています。データによると、大学の学費は、インフレを考慮に入れても、過去30年間に2倍から3倍となっています。それでは、大学に進学したことによって得られる収入などは、その率で増加しているのでしょうか。

将来に投資をしているということであれば、どのような人々もローンを組むことに躊躇しません。しかし、学費ローン、住宅ローン、年金受領のための費用の増加率は、大学を卒業したこと、住宅を所有すること、そして年金から得る利益増加率を上回っているのです。

雑誌ローリンクストーンの先月号で、Matt Taibbi氏は、次のように述べています。

「金融セクターのアナリストは、十分に検討や議論せずに社会的操作で、できる限り多くの子供達を大学へ進学させようとするという政策は、前共和党政権が全ての人々が不動産を保有すべきという目標を作り、サブプライム住宅ローン危機が引き起こった状況に似通っていると見ています。」

「他の人々の見解は、国が補助する学費ローンは、過去6年間で毎年8800万ドルから1億1000万ドル規模の政府へのロビー活動をしている教育業界への多大な国からの補助金のように、過去の例を見ると、それが誰によって支払われているかに限らず、安易に使われているようです。

  大学費用の推移

(1980年から2010年の平均的大学の年間費用)

これは、必ずしも米国のみに限られた現象ではありません。最新のデータによると、ロンドンで不動産を購入する場合、既に不動産を所有していなければ、少なくとも平均64,000ポンド(約10万ドルもしくは約1千万円)の頭金を必要とするとのことです。イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、政策金利を時期尚早に引き上げることで、景気回復を妨げることは避けなければならないと述べています。

それでは、再び市場に溢れ出ている資金に話を戻すことにしましょう。来週、米連邦準備制度理事会が議論する量的緩和縮小は、実施された場合、その影響は必ずしも米国内のみに限られるものではありません。量的緩和縮小は、新興国市場を苦しめることとなります。それは、現在までに溢れた資金が新興国市場へ流れ出しているためです。そのため、先週サンクトペテルブルクで開催された20カ国・地域(G20)首脳会合において、この議題を話し合うことは避けられたのでした。それは、第3次世界大戦勃発を防ぐために、ここで米国とロシア間の対シリアへの軍事行動に関する議論を避けたように。しかし、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、アジアとラテンアメリカの首脳と共に、米国政府に世界一の資金供給国の役割を再認識させました。

この状況は、下記のトルコのアンカラで取引されているイスタンブール証券取引所(ISE)の株価指数の取引量からも一目瞭然です。

米国は「世界の警察」の役割を真剣に捉えています。また、新興国は、米連邦準備制度理事会(FRB)からの資金を必要としています。もしくは、少なくともラガルド国際通貨基金専務理事はそう考えています。そのようなことからも、先行き不透明な現状において、これらの国々の多くの人々が、実質可処分所得で金を購入する理由が理解できます。

米国の大学生は、この市場に溢れ出ている資金が何時止まってしまうのかを、懸念しているかもしれません。これが現実となった場合、学費の支払いに行き詰まることになるかもしれません。しかし、ここで支払いに行き詰ることが、将来膨大な債務難を抱えることになるのとどちらが良いのでしょうか。

リーマンショックとAIG緊急支援後5年が過ぎ、スタンダードバンク・ロンドンのストラテジストのSteven Barrow氏は「米国ドルを中心とした、世界の通貨システムは正されていない。実際には米連邦準備制度理事会(FRB)の過去5年間の金融政策のために、その状況は恐らく悪化している。」と述べています。

溢れるほどの資金を市場に送り出し安易な債務を可能とする、世界の警察である米国。世界はこの現状から逃れることはできるのでしょうか。

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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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