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ロシアの金準備が急増

米国によるロシアへの経済制裁が相次ぐ中、ロシアの金準備が今年急増していることが伝えられています。

本日ブルームバーグが、ロシアの金準備が7月に26.1トン増の2,170トンとなっていたことを伝えています。一月の増加量としては、昨年11月に次ぐ規模とのこと。

そして、本日は英国で3月に起きたロシア元情報機関の暗殺事件はロシア政府が化学兵器を使用したと断定し、米国が新たな経済制裁を発動していました。それは、米国の安全保障に関わるモノや技術の輸出を禁じるというものです。既に米国は3月の事件を受けてロシア外交官60人を国外追放し、それ以降はロシアの個人や企業を対象に制裁を発動していましたが、今月8日に貿易全般が対象となる新たな経済制裁を発表していました。

この発表後ロシア通貨ルーブルは、対ドルで2年ぶりの低い水準まで下げていました。

今月金業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルが発表した最新のレポートによると、今年第2四半期にロシアの中央銀行は53.2トン金準備を積み上げ、今年前半期の金準備増加量は105.3トンとなっていました。そして、既に今年2月にはロシアの金準備は中国を上回り世界第5位となっています。

このレポートでは、「ロシアの金準備の急増は戦略的である」と地政学的リスクの高まりからもドル資産からの資産分散を狙っていると解説しています。

それを裏付けるように、今年3月から5月までにロシアが保有する米国債が961億ドルから149億ドルへと84%減少していることは、米国財務省が先月発表したレポートでも明らかとなっています。

ロシアは2014年のウクライナ危機を受けた制裁開始から米国債の保有を徐々に減らしていました。しかし、今年4月にロシアの2016年の米大統領選への介入を理由に、米国が財閥経営者と参加企業などを対象に米国内の資産凍結や取引を禁ずる厳しい追加制裁を新たに打ち出し、ルーブルが対ドル10%超下げたこと等がこの大量の米国債売却の背景であるようです。

ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は、6月に米国債売却の狙いとして「外貨準備を多角化する政策の一環で、金融、経済、地政学等すべてのリスクを考慮した。」と説明しています。

ちなみにロシアは金産出国としては中国とオーストラリアに次いで世界第3位であり、年間の産出量は2017年においては272トンと前年比7.6%増となっていました。これは、既存の金鉱の産出量が増加したことが主な要因ですが、それに加えて2017年に新たに年間15トンの金産出が予想され大規模な金鉱とみられているNatalkaが操業を始めたことも要因と、貴金属専門コンサルタント会社のMetals Focusの最新金需給レポートのGold Focus 2018で解説されています。

そして、ロシアは2017年にその金準備を224トン増加させ、中央銀行の金準備増加量としては世界一となっていました。この年間増加量は2014年に欧米との関係悪化して以来、200トンを常に超えています。つまりは、ロシアの金産出量の80%以上がロシアの中央銀行によって保有されてきていることとなります。そして、戦略的目的から外貨準備を多角化するために金を購入する際にロシアの中央銀行はその外貨準備を使う必要がない事もMetal Focusのレポートでは言及されています。

なお、昨日は米財務省が、北朝鮮への石油精製品供給に関与し、国連の対北朝鮮制裁に違反したとして、ロシアの海運会社2社と船舶6隻を米独自の制裁対象に加えると発表しています。

そして先とは別に、米財務省は同日ロシアが関与したとするサイバー攻撃に絡み、新たなロシア個人2人と企業一社、スロバキア企業1社も制裁対象としています。

また、昨日発動された英国におけるスパイ暗殺未遂事件による制裁を発表した今月9日に米国は、ロシアが90日以内に化学・生物兵器を使用しないと確約し、国際機関の査察を受けなければ追加の制裁を発動するとしています。

そのために、プーチン大統領が望む地政学リスクに備えるためにもロシア中銀による金準備の積み増しは今後も続くことになると予想されています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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